「丸太」と「高床」
設計|若松均建築設計事務所
第51回東京建築賞|一般部門一類 奨励賞
南側外観全景。右側に宿泊室3室。
  • 南側外観全景。右側に宿泊室3室。
  • 吹き放ちの広間(そと)。柱はスギ丸太。梁はヒノキ集成材。ホームコネクターを使った木質ラーメン構造。
  • 柱は末口400〜420mmのスギ丸太を使用している。
  • 広間(うち)。
  • 平面図
  • 断面図
建築主:
非公開
表彰建築士
事務所:
株式会社 若松均建築設計事務所 一級建築士事務所
施工:
株式会社東京組
所在地:
非公表
主要用途:
寄宿舎
構造:
木造(軸組工法)
階数:
地上1階
敷地面積:
50,303.00㎡
建築面積:
170.11㎡
延床面積:
112.61㎡
竣工:
2022年8月
撮影:
中山保寛
設計趣旨:
 既存の小学校の林間学校の施設内に新たに宿泊棟を新築する計画である。高度1,200m、敷地面積約5haの山の自然の中でさまざまなイベントが催される。森の木々の生命力やその息吹が感じられるように、豊かな環境と一体的な場と位置付けた建物を提案した。丸太の「柱」を立て「広い床」を浮かばせ軒の深い「覆い」を載せたプリミティブでシンプルな構成は木特有のスケールを伴って重厚な存在感と透明さを備え、木素材の肌触りや香りは温もりと懐かしさを抱かせる。
 丸太の独立性を高め、建物に透明感を持たせるため、丸太と集成材の梁の接合にGIRI工法のホームコネクターを使用した木質ラーメン構造としている。丸太に部材が取り付く部分のみ、表面を削り、水平面を出して木建具をぶつける。必要な箇所にだけ必要な加工のみを施す単純で原初的な納まりは、丸太を起点に建物全体へと波及し、この建物を構築する全ての部材を空間の要素として表出させている。
 生の木材は生徒たちの関心を惹き、触り抱きつき、みんなの拠り所となった。自然と一体となった環境の一部として、今後たくさんの子どもたちを迎え入れ、山と直に触れ合った体験が記憶に残れば、と思う。(若松 均)
若松 均(わかまつ・ひとし
若松均建築設計事務所
1960年 東京都生まれ/1985年 東京工業大学建築学科卒業/1989年 奥山信一とDESK5を共同設立/1999年 若松均建築設計事務所に改称/1999年〜 武蔵野美術大学、東京理科大学、日本大学、宇都宮大学、昭和女子大学、茨城大学にて非常勤講師を歴任/2016年〜 前橋工科大学教授
選考評:
 この建築は自然あふれる高度1,200m、敷地面積約5haの山中にある。既存小学校の林間学校施設内に建ち、豊かな環境と一体的に結び付けた宿泊棟である。
 周囲の木立のように林立する「丸太」の柱を立て、前面の広場から裏の森へ繋がる広い「高床」を浮かし、深い軒を載せただけのプリミティブでシンプルな構成は、木造特有の建築スケール、重厚な存在感、透明さを備えている。丸太、木材という自然素材のもつ肌触りや香りは、都心から訪れる生徒たちに温もりと懐かしさというより新鮮さを抱かせ、森の木々の生命力、その息吹を感じさせる。丸太に抱きつき、相撲の鉄砲のように突き押し、木のいい香りのする高床を駆けめぐる。覆いかぶさる深い軒のもと、霧のなかで車座になって集う。日常から離れた原始的な風景で過ごす山と直に触れ合った空間体験は、生徒たちを成長させ、記憶に強く残っていく。
 自立させた丸太架構は目通し390mm丸太をそのまま使用して必要な加工のみ施し、金物を一切現わさず、単純な納まりとすることで、針葉樹本来の肌感や匂い、力強さを残している。
 この原始的な自然と建築を一体化させ、生徒たちの活動を伸びやかに促し、成長させる空間を生み出した建築作品を評価したい。(奥野 親正)
奥野 親正(おくの・ちかまさ)
構造家、株式会社久米設計環境技術本部構造設計室室長
1968年 三重県生まれ/1991年 明治大学工学建築学科卒業/1993年 明治大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1993年 久米設計