鵠沼の家
設計|矢野建築設計事務所
第51回東京建築賞|住宅部門 奨励賞
アプローチ。*
  • アプローチ。*
  • house Aリビング。*
  • house A ダイニング。*
  • house Bリビング。*
  • house Bベッドルーム。**
  • 奥庭からの外観。*
  • 1階平面図
  • 2階・3階平面図
建築主:
非公開
表彰建築士
事務所:
株式会社OFFICE YANO 矢野建築設計事務所一級建築士事務所
構造設計:
福島佳浩/合同会社Graph Studio
施工:
瀬戸建設株式会社
所在地:
神奈川県藤沢市
主要用途:
住宅
構造:
RC造+木造
階数:
地上2階、地下1階
敷地面積:
283.96㎡
建築面積:
97.54㎡
延床面積:
199.46㎡
竣工:
2023年5月
撮影:
*福田駿、**長谷川健太
設計趣旨:
 神奈川県藤沢市に建つ2世帯住宅。微地形と蛇行した道に沿って建物や緑が密集する住宅街には、湘南の地域性も相まって、空間と歴史に展開と奥行をもつ快楽的な環境が形成されている。施主である30代と70代の2夫婦は、必要な諸室に加えて仕事や趣味を楽しめるスペースを求めると共に、今後想定される生活形態の変化に対応できる多用途的な住宅を希望した。このため、街の歴史や今後発生する生活の予感に応答しながら、暮らし方を編集し続けられるつくりが相応しいと考えた。不整形な敷地形状や高低差のある地形、大邸宅の名残である大木群といった既存環境に応える形で水平荷重をすべて負担するRC壁柱をバラバラに適宜配置し、それらを拠り所として木材や鉄骨を自由に架けていく。更に、多方向に開口が設けられた部屋群や大きな軒下テラスを立体的に繋げ、さまざまな場所から出入りができるように計画していくことで、街に開かれた庭や風・光・視線が豊富に交錯する散策性のある空間体験が生まれた。新旧の環境群がつくり出す現象によって刻々と生活の予感が立ち現れ、それをきっかけとして建主は住まいに手を加えていく。その履歴や経過がこの街の歴史の一部になっていくことを期待している。(矢野 泰司、矢野雄司)
矢野 泰司(やの・たいじ)
矢野建築設計事務所
1983年 高知県生まれ/2007年 東京理科大学卒業/2009年 東京理科大学大学院修士課程修了小嶋一浩研究室/2010〜13年 長谷川逸子・建築計画工房/2013年 矢野建築設計事務所設立
矢野 雄司(やの・ゆうじ)
矢野建築設計事務所
1987年 高知県生まれ/2009年 横浜国立大学卒業/2011年 横浜国立大学大学院Y-GSA修了/2011〜14年 末光弘和+末光陽子/SUEP./2014年 矢野建築設計事務所
選考評:
 高低差のある敷地にふたつのボリュームがハの字に配置され、適度に街へと開いた構えの30代と70代の二世帯住宅だ。多世代の住まい方の変化、コロナ禍での先行き不確定さ、子世帯夫婦の将来の働き方の多様さなど、その時々に応じて編集し続けられる柔軟性を追求した住宅だ。地域のコモンズへの可変も想定されている。
 敷地に建てられた9本の壁柱は、梁・柱・壁の配筋要領として臥梁のない自立壁とし、水平剛性を負担するRCスラブも最小限に抑え、壁柱に木材や鉄骨を掛け渡した改変が容易な構造としている。RC壁が棚柱となり床高さを調整でき、地形の起伏に対しても柔軟に対応できる自由度が高い構成だ。
 木梁はRC壁にアンカーボルトで接続し、サッシ納まりは躯体に絡めず外断熱の厚みの中で納めるなど、構造から仕上げに至る部材同士の関係をパラレルに捉え改変の柔軟性を担保する。複数のアクセスと回遊性のある空間構成はさまざまな用途へ対応できるよう考えられたものだ。
 建物配置、構造、空間構成、部材選定からディテールに至るまで一貫して将来の柔軟性、さらには地域のコモンズへの可能性を追求し、多くのスタディが繰り返されたことが容易にうかがえる。設計者の誠実な姿勢がとても清々しく、奨励賞に相応しい作品だと思う。(石井 秀樹)
石井 秀樹(いしい・ひでき)
建築家、石井秀樹建築設計事務所株式会社代表取締役
1971年 千葉県生まれ/1995年 東京理科大学理工学部建築学科 卒業/1997年 東京理科大学大学院理工学研究科建築学科修了/1997年 architect team archum 設立/2001年 石井秀樹建築設計事務所へ改組/2012年~一般社団法人 建築家住宅の会 理事