sun`ny bitters 葉山の住宅
設計|プラスマイズミアーキテクト
第51回東京建築賞|住宅部門 優秀賞
1階居間1。南方向を見る。奥に大きな開口のある居間2。右は土間。**
  • 1階居間1。南方向を見る。奥に大きな開口のある居間2。右は土間。**
  • 居間1。東方向を見る。**
  • 2階居間3。**
  • 西側アプローチ。正面に居間2。*
  • 断面図
  • 2階平面図
  • 1階平面図
建築主:
非公開
表彰建築士
事務所:
株式会社プラスマイズミアーキテクト一級建築士事務所
施工:
株式会社ファルグホーム
所在地:
神奈川県 三浦郡
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
154.66㎡
建築面積:
52.84㎡
延床面積:
77.31㎡
竣工:
2023年6月
撮影:
*ヴィブラフォト/浅田美浩、**真泉洋介
設計趣旨:
大きな気積の小さな居間
 神奈川県葉山町の延床面積約70㎡の小さな家。葉山特有の緩やかな勾配の里山に囲まれている。海と山が近く、多湿な環境から、空気を回すことを考えた。空気だけではなく、光と人も廻ることで、大きな一つの気積を感じられる家になり、窮屈さがなくなった。手を伸ばせば届くような小さなスケールの居場所が間仕切りられることなく、立体的に回遊する。
立体回遊動線上に点在する居間
 階段を南北2箇所に設け、レベル差を介しながら居間や寝室が連続していく。壁や扉で完全に仕切られた個室はなく、南側の大きな開口から入る光や風が家全体を巡る。レベル差で物影になるような場所や、視線が貫く場所など、一体的な空間のつながりの中に多様な視点がある居場所をつくった。
旗竿敷地に浮いた居間
 アプローチはT字路の突き当りにあり、視線はそのまま東側の山の緑に抜ける。隣地との擁壁の高低差から、基礎をセットバックしながらも、崖側にガラスで囲った居間を片持ちで張り出した。閉鎖的になりがちな旗竿地で、高低差を生かし、180度の眺望が広がる浮いた空間を介して、内外が連続する。(真泉 洋介)
真泉 洋介(まいずみ・ようすけ)
プラスマイズミアーキテクト
1982年 東京都生まれ/2006年 東京理科大学工学部建築学科卒業/2008年 千葉大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了/2008〜13年 株式会社栗生総合計画事務所勤務/2016年〜 株式会社プラスマイズミアーキテクト一級建築士事務所代表取締役/2020年〜 駒沢女子大学非常勤講師
選考評:
 コージーで大らか、葉山の緑豊かな丘陵の裾野にある70㎡の小さな住宅だ。
 敷地はT字路の突き当りで、道が旗竿敷地のアプローチへ繋がり、背後の丘陵へと連続する。その線上に片持ち梁で持ち出したガラス張りのリビングが浮いている。スラブ下が抜け、旗竿敷地特有の行き止まり感はない。過剰な地業を避けて、基礎を後退し、隣地との段差を安息角でかわしたことによる。
 180°ガラス張りのリビングは、敷地段差もあり周囲の視線は気にならない。小さな空間を開放し過ぎると落ち着かないことがあるが、ここにはコージーな居心地の良さが同居する。立体的に円環する一繋がりの内部空間は、各部が家具的に積み重ねられる。ガラス箱の片持ち梁はキャビネットへ吸収されスキップフロアの段差のきっかけとなる。開口部の軸力を担う柱は60mm角で既成アルミサッシ枠を隠す方立となり、露出する構造柱には棚板が取りついて棚と同化する。素材選定も多様で、印字された野地板のベニヤがそのまま軒天として露出する。
 統一したルールは見当たらない。各部が無理なく身体に纏わりつく寸法と脱力感で積み重ねられている。それがこのコージーな心地よさと大らかさの共存を生んでいるのだろう。実際に体感しないと感じえない不思議な魅力のある作品であった。(石井 秀樹)
石井 秀樹(いしい・ひでき)
建築家、石井秀樹建築設計事務所株式会社代表取締役
1971年 千葉県生まれ/1995年 東京理科大学理工学部建築学科 卒業/1997年 東京理科大学大学院理工学研究科建築学科修了/1997年 architect team archum 設立/2001年 石井秀樹建築設計事務所へ改組/2012年~一般社団法人 建築家住宅の会 理事