残像の家
設計|ウルトラスタジオ
第51回東京建築賞|新人賞

北側外観。






- 北側外観。
- 1階リビングよりダイニング方向を見る。螺旋階段の黒い筒。
- 西側外観。
- 断面図
- 2階平面図・展開図
- 1階平面図・展開図
建築主:
非公開
表彰建築士
事務所:
事務所:
株式会社ウルトラスタジオ一級建築士事務所
外構設計:
Oryza
施工:
水沢住宅建築株式会社
所在地:
東京都杉並区
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
W造
階数:
地上2階
敷地面積:
88.43㎡
建築面積:
40.99㎡
延床面積:
81.98㎡
竣工:
2023年10月
撮影:
新建築社写真部
設計趣旨:
武蔵野台地に広がる典型的な東京の住宅地に建つ、若い夫婦と子どもひとりのための住宅。敷地は比較的人通りのある前面道路と幅2mに満たない私道に面している。接道側は特徴がない一方で、私道側では周辺の住宅が庭をつくり植物を育てることで、親密な雰囲気が生まれている。そこでこの家の「ファサード」を前面道路ではなく私道側にずらし、庭をつくって窓を設けることで路地の雰囲気に貢献することにした。南側の隣地は空き地だったため、開口を高窓に限定して将来の不確定要素の影響を軽減している。
内部では2階を扁平にして1階に4mの天井高さを与え、限られた面積に立体的な広がりを与えている。外観の無表情と対象的に、上下階を象徴的な黒い筒(螺旋階段)が結び、その周囲を装飾的な要素が取り囲む。それぞれ別の由来を持った装飾群は黒い筒の周りで見え隠れし、空間は断片的なイメージ群として認識される。
「狭小さ」、「近隣関係」、「プライバシー」、「不確定要素」という都市住宅の問題系と「私的空間」を調停した結果、内部を表出しない隠されたファサードと、趣味的断片で満たされた内部空間という分裂が明確になった。その上で、路地のような半プライベートな空間に向けて顔をつくることで、私的な営みが生み出す東京の都市景観に貢献している。(向山 裕二、笹田 侑志、上野 有里紗)

向山 裕二(むかいやま・ゆうじ)
ウルトラスタジオ
1985年 広島県生まれ/2008年 東京大学工学部建築学科卒業/2008年 渡邉健介建築設計事務所(kwas)/2011年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校/2012年 Christian Kerez/2013年 渡邉健介建築設計事務所(kwas)/2013年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了/2015年 DORELL. GHOTMEH. TANE ARCHITECTS/2018年~ ウルトラスタジオ設立/2021年 東京大学大学院工学系研究科非常勤講師
ウルトラスタジオ
1985年 広島県生まれ/2008年 東京大学工学部建築学科卒業/2008年 渡邉健介建築設計事務所(kwas)/2011年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校/2012年 Christian Kerez/2013年 渡邉健介建築設計事務所(kwas)/2013年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了/2015年 DORELL. GHOTMEH. TANE ARCHITECTS/2018年~ ウルトラスタジオ設立/2021年 東京大学大学院工学系研究科非常勤講師

上野 有里紗(うえの・ありさ)
ウルトラスタジオ
1986年 東京都生まれ/2010年 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ視覚文化論学部卒業/2013年 AAスクール インターメディエートスクール卒業/2013年 Foster + Partners/2018年 英国王立芸術大学院大学(RCA) 建築学専攻修了/2019年 ウルトラスタジオ参画
ウルトラスタジオ
1986年 東京都生まれ/2010年 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ視覚文化論学部卒業/2013年 AAスクール インターメディエートスクール卒業/2013年 Foster + Partners/2018年 英国王立芸術大学院大学(RCA) 建築学専攻修了/2019年 ウルトラスタジオ参画

笹田 侑志(ささだ・ゆうし)
ウルトラスタジオ
1987年 福岡県生まれ/2011年 九州大学芸術工学部環境設計学科卒業/2012年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校/2013年 Pascal Flammer Architect/2014年 東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修了/2014年 青木淳建築計画事務所/2020年 ウルトラスタジオ参画/2021〜24年 東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻教育研究助手
ウルトラスタジオ
1987年 福岡県生まれ/2011年 九州大学芸術工学部環境設計学科卒業/2012年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校/2013年 Pascal Flammer Architect/2014年 東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修了/2014年 青木淳建築計画事務所/2020年 ウルトラスタジオ参画/2021〜24年 東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻教育研究助手
選考評:
この住宅の本質は地域との関係性などという他律的な要因よりも、南小路側で外部と接しつつも、むしろ独自の論理体系に従って全体が構築されているその自律性にあると言っていいだろう。空間中心には螺旋階段を内包した黒く太いシリンダーが据えられ、室内のどこにいても直接視線の通ることのない「あちら/こちら」が生み出されている。その同時に見ることのできないあちらとこちらの(主に)壁面には「対」となるような関係性を有した形状や造形が配されている。シリンダーを中心に移動する中で、同時には見ることのなかったそれらの要素が、「残像」のようにイメージの連関を次々と示し、実空間に重なるように知覚上の空間次元が生み出されるという論理だろう。
一見して、誰もがポストモダン期のデザインを思い出すだろうが、この若い作家たちは、通常ネガティブに捉えられがちであったポモ作品の良き面を引き継ぐことを積極的に意識している。それは色彩や記号であり、そして一般には理解し難いかもしれない自律的論理への傾倒でもある。自身がクリエイターでもある施主は、「分からないから」この建築家たちに依頼したと述べていたことが印象に残る。
「説明可能であること」を、どこか絶対条件のように捉える建築デザインの現状を相対化するような、ある種爽やかな開き直りの姿勢と、そこに確かに内在するデザインの本質に、新人賞に相応しい新しい可能性を感じ評価した。(原田 真宏)

原田 真宏(はらだ・まさひろ)
建築家、芝浦工業大学建築学部建築学科教授、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO主宰
1973年 静岡県生まれ/1997年 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了/1997〜2000年 隈研吾建築都市設計事務所/2001〜02年 文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受け、ホセ・アントニオ&エリアス・トレースアーキテクツ( バルセロナに所属)/2003年 磯崎新アトリエ/2004年 原田麻魚と共に MOUNT FUJ I ARCHITECTS STUDIO 設立/2008年 芝浦工業大学准教授/2016年 芝浦工業大学 教授
建築家、芝浦工業大学建築学部建築学科教授、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO主宰
1973年 静岡県生まれ/1997年 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了/1997〜2000年 隈研吾建築都市設計事務所/2001〜02年 文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受け、ホセ・アントニオ&エリアス・トレースアーキテクツ( バルセロナに所属)/2003年 磯崎新アトリエ/2004年 原田麻魚と共に MOUNT FUJ I ARCHITECTS STUDIO 設立/2008年 芝浦工業大学准教授/2016年 芝浦工業大学 教授








