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設計|渡邉健介建築設計事務所
第50回東京建築賞|一般部門二類 優秀賞
3階より立体的に対面する広場を吹き抜け越しに見る。
  • 3階より立体的に対面する広場を吹き抜け越しに見る。
  • 東側外観。段状に構成された内部の形式が建物ファサードにも現れる。
  • 東側外観夕景。
  • 3階平面図
  • 断面詳細図
建築主:
AGC株式会社千葉工場
表彰建築士
事務所:
株式会社渡邉健介建築設計事務所一級建築士事務所
施工:
大成建設株式会社
所在地:
千葉県市原市五井海岸10
主要用途:
事務所
構造:
S造
階数:
地上4階
敷地面積:
666,023.33㎡
建築面積:
1,870.34㎡
延床面積:
4,748.14㎡
竣工:
2022年5月
撮影:
鳥村 鋼一
設計趣旨:
 複数の部門を集約する工場内の本事務所の新築計画である。工場内の建築群は、合理性・効率性を重視してこれまで整備されてきたが、本計画では、偶発的な交流により、新たな発想やプロジェクトが生まれるような執務空間を目指した。計画中のコロナ禍に見舞われた中でも、工場という特性上オンサイトで仕事をする必要があった。対面で仕事をする価値を再考し、建物全体でのコミュニケーションを今まで以上に促進することにより、新たな価値を生むことができると考えた。
 地面から屋上まで450mmずつの床段差で連続し、南北ふたつのコアの周りを3周する空間により、体験上は階のない一体的な空間を実現した。トップライトによる自然光に満たされた中央の吹き抜けでは、スラブを張り出したり、ブリッジや階段により対面を繋いだりして、偶発的な交流を誘発する複雑、かつ自由な動線を生み出した。オープンな空間でありながら、なお快適で、セキュリティも保たれた空間を実現するため、設計者の元に構造・設備・防火・照明・音響・家具・外構の専門家を結集し、建築主、施工者との密な対話の中でひとつの建築をつくり上げた。
(渡邉 健介)
渡邉 健介(わたなべ・けんすけ)
渡邉健介建築設計事務所
1973年 東京生まれ/1996年 東京大学工学部建築学科卒業/1998年 東京大学大学院修士課程修了/1998年 フルブライト奨学金を受けて渡米/1999年 コロンビア大学建築学部大学院修士課程修了/1999〜2000年 SHoP/Sharples Holden Pasquarelli勤務/2000〜05年 C+A/シーラカンスアンドアソシエイツ勤務/2005〜20年 渡邉健介建築設計事務所開設/2006〜20年 桑沢デザイン研究所非常勤講師/2009年〜法政大学非常勤講師/2011年〜東洋大学非常勤講師/2020年〜株式会社渡邉健介建築設計事務所へ改組
渡邊 大祐(わたなべ・だいすけ)
渡邉健介建築設計事務所
1993年 静岡生まれ/2016年 新潟大学工学部建設学科卒業/2017年 藤本壮介建築設計事務所勤務/2019年〜渡邉健介建築設計事務所勤務
選考評:
 この建築は、複数の部門を集約する工場内の本事務所の新築計画である。
 最大の魅力は、中央の吹き抜けに対して、張り出すように床を構成し、地面から屋上まで床を450mmずつ上って段状にして連続させ、南北ふたつのコアの周りを3周してシームレスに執務空間を繋げたことである。吹き抜け越しに対面を見ると、ちょうど半層分上下するふたつの床の気配を感じることができる。スラブがぐるぐる廻る外周部では、スロープ動線により内部の人の動きを外部に見せている。
 これらの仕掛けにより、合理性・効率性を重視されてきた工場建築群の執務空間を場所によるつながりの違いから、偶発的なコミュニケーションを生み出す魅力的な空間へと仕上げた。ひとつの場所に行くためのルートは、多様に設定された動線によって無限にその選択肢が広がっている。その時々の気分で、滞在場所や目的までのルートを変え、時にはお気に入りのルートを見つける。単調な業務の中で、楽しみや出会いを見つける自然地形のような自由を伴う建築としている。
 工場内に建つ建築の秘匿性や閉じた印象があるなかで、執務空間をこれまでにない働き方と新たな価値を生み出した建築作品を高く評価したい。
(奥野 親正)
奥野 親正(おくの・ちかまさ)
構造家、株式会社久米設計環境技術本部構造設計室室長
1968年 三重県生まれ/1991年 明治大学工学建築学科卒業/1993年 明治大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1993年 久米設計