松原児童青少年交流センターmiraton(ミラトン)・松原テニスコート
設計|御手洗龍建築設計事務所
第50回東京建築賞|一般部門一類 奨励賞
クラブルーム前より見る。
  • クラブルーム前より見る。
  • 南側外観。
  • エントランスホール。
  • おやこルーム。
  • ホール。
  • 断面図
  • 断面図
建築主:
草加市
表彰建築士
事務所:
一級建築士事務所株式会社御手洗龍建築設計事務所
施工:
髙元・ムサシ特定建設工事共同企業体
所在地:
埼玉県草加市松原4-4-3、4-4-1
主要用途:
児童福祉施設等(前3項に掲げるものを除く。)
構造:
RC造一部S造
階数:
地上2階
敷地面積:
7,766.62㎡
建築面積:
1,439.83㎡
延床面積:
1,522.30㎡
竣工:
2022年11月
撮影:
中村 絵
設計趣旨:
 子どもたちを見ていると、心を震わせながら身体が空間に反応している瞬間をよく目にする。身体感覚を刺激する発見に満ちた建築を立ち上げることで、子どもたちの能動性を喚起する生き生きとした場が生まれるのではないかと考えた。
 建物は紙コップを横にして半分に切ったような形をしている。その傾いたトンネル状の空間が大きさや傾きを変えながら9棟連なって全体が構成されている。ヴォールトと呼ばれるこの架構は、厚さ180mm(一部200~250mm)のコンクリートで地上から立ち上がり、前後の庭を繋いでいく。さらに側面の開口や浮かび上がる先端の下を抜けて、横方向にも空間が展開することで、内外一体となった明るく開かれた場がつくられていく。こうして環境を纏い、相互に連動しながら立ち上がる幾何学の連なり中には、包み込まれる安心感と、能動性を喚起する動きが同居し、それが居場所の発見と交流を促すきっかけに満ちたものになればと考えた。
 かつて東洋一と言われた巨大な松原団地の一斉建て替え事業に伴う計画であった。この建築が多世代の賑わいを生み出し、新たな町の新しい原風景となっていくことを期待している。
(御手洗 龍)
御手洗 龍(みたらい・りゅう)
御手洗龍建築設計事務所
1978年 東京生まれ/2002年 東京大学工学部建築学科卒業/2004年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了/2004〜13年 伊東豊雄建築設計事務所/2013年 御手洗龍建築設計事務所設立/2015〜17年 横浜国立大学大学院YGSA設計助手/現在、東京大学、法政大学、日本女子大学、武蔵野大学非常勤講師
御手洗 僚子(みたらい・りょうこ)
御手洗龍建築設計事務所
1978年 千葉生まれ/2001年 東京大学工学部建築学科卒業/2003年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了/2003〜11年 日本設計/2013年〜御手洗龍建築設計事務所
選考評:
 かつて東洋一のマンモス団地といわれた松原団地の建て替えエリアの中央部に計画された児童青少年交流センターである。地域全域が更地となった新たな街づくり中で、その新たな街の原風景を築く独持のシンプルなヴォールト形状の連なりが美しい。中庭の芝の広場を取り囲むように配置された9棟の大小のRCヴォールト架構が一体化され、さらに傾斜することで内外が見え隠れする多様に重層する空間が生み出されている。壁厚180mmという薄い構造体の円弧の連なりは、浮遊しているかのようで軽やかに子どもたちが空中を舞うようにも映る。
 シンプルな形状の建築でありながら多様な空間体験を想起させ、子どもたちの能動性を育む作品である。また複数の異なる曲率に合わせた曲げ加工のスチールパイプと曲面型枠を巧みに組み合わせた施工で3次元のヴォールト屋根の幾何学形状を見事に実現している。
 基本構想段階からワークショップを開催し、市民参加型の施設づくりを徹底したまちづくりへの取り組み、さらには周辺との連続性に配慮したオープンスペースの確保等、地域特性を踏まえた生活環境の創出が図られていることを高く評価したい。
(北 典夫)
北 典夫(きた・のりお)
鹿島建設株式会社建築設計本部長、専務執行役員
1958年横浜市生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、鹿島建設株式会社