COURT HOUSE 自由が丘
設計|奥野公章建築設計室
第50回東京建築賞|共同住宅部門 優秀賞
「集まって住むこと」で得られる大きな中庭*。
  • 「集まって住むこと」で得られる大きな中庭*。
  • 南側外観*。
  • 地階住戸D**。
  • 1階住戸F**。
  • 2階住戸I**。
  • 地階平面図
  • 配置・1階平面図
  • 2階平面図
  • 3階平面図
  • 断面パース
建築主:
コートテラス都立大学建設組合
表彰建築士
事務所:
一級建築士事務所奥野公章建築設計室
施工:
株式会社河津建設
所在地:
東京都目黒区
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
階数:
地上3階、地下1階、塔屋1階
敷地面積:
667.96㎡
建築面積:
667.96㎡
延床面積:
1,177.42㎡
竣工:
2022年6月
撮影:
*中山 保寛、**吉田 誠/日経アーキテクチュア
設計趣旨:
 大きな中庭のある12戸のコーポラティブハウスである。建物はロの字配置の平面で東西に階段室を配置した2戸1の型式。ワンフロア4戸の構成とし各住戸は中庭を囲うL型のフラットプランを基本としている。中庭には東西をつなぐ通路を配置し屋根(ブリッジ)をかけ、そのブリッジを緑化し東西を貫く地下1階〜2階を小山のような立体的な緑化を行なった。
 約12m四方の中庭は十分な住棟間隔を獲得し、プライバシーの調整や十分な採光に役立っている。また駐輪場として利用するピロティから南北の季節風を、階段室からは大通りに沿って発生する東西のビル風を中庭に取り込み植物の健全な育成や気化熱を利用した気温上昇を抑える効果を狙っている。建物中心の緑化による快適性、隣戸の距離感の調整による快適な居心地の形成、パッシブな環境の形成、避難のための空地の形成など、中庭は「住む」ために必要なすべての環境をつくり、また共通の中庭が住民の交流の場となることを意図している。
 住居地域において「集まって住む」からこそ得られる立体的なコートを中心とした12戸の集合住宅の提案である。
(奥野 公章)
奥野 公章(おくの・まさあき)
奥野公章建築設計室
1973年 山梨県生まれ/1996年 東洋大学工学部建築学科卒業/1998年 東洋大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程修了後、スタジオ建築計画入所/2002年 建築家具設計ユニット ホワイトベース 共同設立/2003年 一級建築士事務所 奥野公章建築設計室 設立/現在、東洋大学、関東学院大学、武蔵野美術大学非常勤講師
選考評:
 第一種低層住居地域に建つ12戸のコーポラティブハウスである。低層集合住宅の事業性から地下を活かし、その上で全住民が納得する計画が必要だ。建物は中庭を囲うロの字型平面の4つ角にL型住戸を配置したフラットプランが基本構成だ。そのため全住戸が角部屋となり多方向への抜け、採光、通風が確保される。さらに中庭を掘り込み地下住戸の居住性を担保している。平均地盤は外周算定のため中庭の深さは地盤算定に影響せず低層地域での高さ制限に有効だ。ただ、中庭への開放は住戸間のプライバシー確保が難しい。12m角と隣棟間を離隔する中庭の中央に東西へ横断する通路、屋根、通路下の雨水ピットを立ち上げ、それを緑化して立体的な緑の丘をつくり出している。緑の丘は住戸ごとの個別の中庭の景色を生み出し、住戸間の見合いを抑制する。また開口は直行での対面を避けて計画されている。何より中庭の共有を可能にしているのは計画当初から住民が建設組合を立ち上げ計画に参加するコーポラティブハウスが生み出す連帯感だろう。その特性を活かし画一的な標準化ではなく、新しい可能性を見出してまとめ上げた設計者の手腕と住民の連携は見事であり優秀賞に相応しい秀作である。
(石井 秀樹)
石井 秀樹(いしい・ひでき)
建築家、石井秀樹建築設計事務所株式会社代表取締役
1971年 千葉県生まれ/1995年 東京理科大学理工学部建築学科 卒業/1997年 東京理科大学大学院理工学研究科建築学科修了/1997年 architect team archum 設立/2001年 石井秀樹建築設計事務所へ改組/2012年~一般社団法人 建築家住宅の会 理事