Uの家
設計|Archipelago Architects Studio
第50回東京建築賞|戸建住宅部門 優秀賞
東側外観夕景。
  • 東側外観夕景。
  • 1階。
  • ロフト階。
  • 2階。
  • 配置・1階平面図
  • ロフト階平面図
  • 2階平面図
  • 断面図
建築主:
個人
表彰建築士
事務所:
株式会社アーキペラゴアーキテクツスタジオ一級建築士事務所
施工:
深澤工務店
所在地:
東京都東大和市
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造在来工法、一部S造
階数:
地上2階
敷地面積:
121.2㎡
建築面積:
44.6㎡
延床面積:
89.2㎡
竣工:
2022年7月
撮影:
千葉 顕弥
設計趣旨:
 東京郊外の住宅地にある、夫婦と子どもふたりのための住宅。分譲された新築住宅が多く立ち並ぶ周辺環境の中で、周囲に合わせて一般的な2階建てヴォリュームとしながら、2階建てに必ず存在する1階の天井、天井裏、階段、2階の床というエレメントを再構築する。それは木造2階建て住宅というタイポロジーを再解釈することでもあると思ったからだ。
 敷地形状が鍵型だったため、南東側に長辺を持つL字プランとし、1階は外側に向かって広がっていく勾配天井の居間とした。それらのL字プランと勾配天井によって、稜線を持つ分厚い塊が住宅の中心核に現れる。
 その塊を媒体として2層分の気積を感じることのできる繋がりを生む。また居間の南東側に、水平方向の広がりを感じられる開口を、空と茶畑と庭だけが切り取られるよう高窓と地窓とした。
 木造在来工法で2階建てをつくるには、1階と2階の間に梁を架け、その上に床を仕上げ、下部に1階の天井を仕上げ、階を繋ぐ階段を設けていく。ここでは、それらを集約させてできた塊が、合目的には収まらないものとして家の中心に存在している。そこには住宅地のなかにあるとは思えないような、おおらかで清々しい居場所がある。
(畠山 鉄生、吉野 太基)
畠山 鉄生(はたけやま・てつお)
Archipelago Architects Studio
1986年 富山生まれ/2011年 武蔵野美術大学建築学科卒業/2013年 武蔵野美術大学大学院修士課程修了(菊地宏研究室)/2013年 増田信吾+大坪克亘勤務/2017年 Archipelago Architects Studio設立/2022年〜武蔵野美術大学非常勤講師
吉野 太基(よしの・たいき)
Archipelago Architects Studio
1988年 熊本生まれ/2011年 武蔵野美術大学建築学科卒業/2015年 東京藝術大学大学院修士課程修了(乾久美子研究室)/2015〜19年 長谷川豪建築設計事務所勤務/2020年 Archipelago Architects Studio参画
選考評:
 「Uの家」は、生産緑地とハウスメーカーの住宅が同じくらいの比率でぱらぱらと現れてくるような東京郊外の住宅地の奥に、濃いグレーの外装を纏い、隣の家の影に隠れるように建っていた。しかし敷地東側の茶畑側に回ると周囲に馴染みつつも、キューブ状のボリュームがすっくと建ち上がり、東南の壁にリズミカルに並ぶ四角い開口部を遮る要素が周囲にない立地であることがわかる。玄関に一歩入ると、暗い外観のトーンから一転して、臙脂色の逆勾配天井と白い壁、その上部に設けられた開口から鮮やかな青い空へと視線が自然に導かれる、おおらかな空間が広がっていた。そして、逆勾配天井の稜線の裏にひそかに挿入された階段を上がると1階とは逆転した臙脂色の床と白い壁、そしてファブリックによる比較的閉ざされた空間が現れる。臙脂色の大きな不思議な塊が、キューブ状空間の中間に挿入された3層構成になっているのだ。下部にはプライバシーが守られながらも解放感溢れる伸びやかで明るい空間が、上部には比較的落ち着いた静かな空間が広がり、そして塊の中にはロフト空間が埋め込まれている。臙脂色の塊がまったく違う3つの世界を生み出し、その空間体験は予想外の広がりを見せる。施主と建築家の細部にまでこだわった協働が、優秀賞に相応しい新しいタイプの木造2階建て住宅をつくり出した。図面だけでは伝わらない空間の強さと魅力を持つ力作である。
(赤松 佳珠子)
赤松 佳珠子(あかまつ・かずこ)
建築家、CAtパートナー、法政大学教授
1968年 東京都出身/1990年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/1990年 シーラカンス(のちC+A, CAt)に加わる/2002年 CAtパートナー/2016年 法政大学デザイン工学部建築学科教授/2023年 神戸芸術工科大学客員教授/現在、CAtパートナー、法政大学教授、神戸芸術工科大学客員教授