真鶴の家
設計|AIAR
第52回東京建築賞|住宅部門 奨励賞、新人賞
広縁の建具を引き分けた寝室より海を臨む。鉄骨造の庇による構造補強で、幅8.1mの木製建具の大開口を実現。*
  • 広縁の建具を引き分けた寝室より海を臨む。鉄骨造の庇による構造補強で、幅8.1mの木製建具の大開口を実現。*
  • 南側外観。左側は寝室とダイニング。右はラウンジ。
  • 開口部を支持する既存建物から独立した鉄骨造の庇。
  • 土間のラウンジ。奥はキッチン。
  • ダイニングよりラウンジを見る。
建築主:
非公開
表彰建築士
事務所:
株式会社AIAR一級建築士事務所
施工:
有限会社岩本工務店
所在地:
神奈川県
主要用途:
住宅
構造:
木造+S造
階数:
地上1階
敷地面積:
580㎡
建築面積:
110.97㎡
延床面積:
95.87㎡
竣工:
2023年2月
撮影:
楠瀬 友将、*永禮 賢
設計趣旨:
 真鶴半島の高台に建つ週末住宅。
 築60年の木造の平屋に対し、自立する鉄骨造の庇を設えた。二拠点居住の地として、相模湾を望むこの土地を気に入った施主が求めたのは、海との間に一切のノイズがない眺望を得ることであった。その希望に対し、海に面する南面の柱と壁を撤去し、幅8.1mの木製建具の大開口を構築した。この開口部を、既存建物から独立した鉄骨ラーメン構造の庇によって支持する構成とした。庇の構造を逆梁にすることで、6mm厚の鉄板の庇が眺望を切り取る、鋭利なフレームを実現した。深い庇は夏季の日射を遮蔽し、縁側空間の居住性を確保するとともに、室内から海へと抜ける視線の水平性を強調している。
 また、この構造は築年数の経った既存建物に対する補強の役割も兼ね備えており、構造的な安全性を付加しながら圧倒的な開放感を生み出すものとなっている。
 本作は、既存建物のポテンシャルを現代の視座と技術で再定義し、古い家屋のリノベーションにおける新たな架構の在り方を提示する試みである。(伊藤 巧、青木 由佳)
伊藤 巧(いとう・たくみ)
AIAR
1985年 東京都生まれ/2012年 早稲田大学芸術学校卒業/2013〜22年 手塚建築研究所/2021年 AIAR設立
青木 由佳(あおき・ゆか)
AIAR
1987年 東京都生まれ/2014年 早稲田大学芸術学校卒業/2017〜22年 手塚建築研究所/2021年 AIAR設立
藤田 竜平(ふじた・りゅうへい)
RIFFST(構造計画)
1994年 山口県生まれ/2016年 大阪工業技術専門学校卒業/2016〜23年 オーノJAPAN/2024年 RIFFST設立
竹内 俊雄(たけうち・としお)
Tokage(照明計画)
1983年 大阪府生まれ/2008年 金沢大学工学部土木建設工学科卒業/2010年 ロンドン芸術大学CSM Short Course/2012年 京都府立大学大学院生命環境科学専攻修了/2012-23年 ぼんぼり光環境計画/2023年 Tokage設立
選考評:
 なんといっても幅8.1mの大開口から飛び込んでくる相模湾の風景は、見る者を圧倒する。自然の中に生活する様を強く意識させ、開放的な心地よさを生み出すその空間は、施主の求める「海との間に一切のノイズがない眺望」という純粋な願いを建築的解法により見事に実現した作品である。
 この究極の開放感を実現するため、築60年の木造平屋住宅南面の柱と壁を大胆に撤去し、補強を兼ねて増築した逆梁鉄骨ラーメン構造の6mm厚の鉄板の庇は、単なる日除けの域を超え、風景を鋭利に切り取るフレームとして機能し、室内から海へと抜ける視線の水平性を鮮やかに強調している。
 また内部空間においても、既存住宅の穏やかな雰囲気を丁寧に読み取り、受け継ぐべき要素を大切にしながら、施主の個性や趣味性を反映した要素を重ね合わせ彩りを加えている。さらに、一部の木小屋組みを現しにすることで、温かみを感じさせると同時に垂直方向への視線の広がりと新たな表情を生み出している。控えめながらも確かな意思を感じさせる精度の高い再編集といえるだろう。(安藤 暢彦)
安藤 暢彦(あんどう・のぶひこ)
東京都建築士事務所協会副会長・千代田支部、マルタ設計
1958年 静岡県生まれ/日本大学大学院理工学研究科修了/1983年 マルタ建築事務所(現:マルタ設計)入社/現在、同社代表取締役社長