建設業関係者や営業担当者など、日中ほとんど事務所にいない社員に対して、「事業場外みなし労働時間制」を適用している企業は少なくありません。「外にいて何時間働いたか正確に分からないから、定時の8時間働いたことにする」というこの制度。
令和7(2025)年現在、スマートフォンの普及や勤怠管理ツールの進化により、この制度の前提が崩れつつあります。今回は、意外と知られていない「事業場外みなし」の落とし穴について解説します。
労働基準法第38条の2に定められた制度で、以下の要件を満たす場合に、実際の労働時間にかかわらず「あらかじめ定めた時間(通常は所定労働時間)」を働いたとみなすことができます。
1. 業務の全部または一部を事業場外(オフィス外)で行っていること。
2. 使用者の指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難いこと。
つまり、単に「外にいる」だけでは足りず、「会社が時間を把握することが困難」でなければなりません。
かつては、外に出た社員が何をしているか把握するのは困難でした。しかし現代では、スマートフォン、チャットツールなどが普及しています。 以下のような状況であれば、「労働時間の算定は可能(=みなし制度は適用できない)」と判断される可能性が高くなります。
・随時指示を受けている場合:業務用携帯で常に上司と連絡が取れる状態で、随時業務の指示を受けている場合。
・スケジュールが決まっている場合:訪問先や時間割があらかじめ会社によって具体的に指定されている場合。
・報告義務がある場合:現場到着時や終了時に、メールやアプリで「着きました」「終わりました」と報告させている場合。
もし、これらに該当する働き方をしているのに「みなし労働」として残業代を払っていない場合、後から「実労働時間に基づいた残業代」を請求されるリスクがあります。
建設業関係者や現場作業などは、一見すると個人の裁量に任されているように見えます。しかし、近年の裁判例や行政解釈では、以下のように判断される傾向にあります。
複数名での行動:チームや上司と一緒に行動している場合は、管理下にあるため適用外。
日報や報告:GPS記録や詳細な日報で時間を管理している場合は、適用外。
つまり、「タイムカードが押せないから」という理由だけでは、この制度を使うことはできません。技術的に時間管理が可能であれば、原則通り「実労働時間」で計算する必要があります。
コロナ禍以降定着したテレワークでも、この制度の適用が議論になります。厚生労働省のガイドラインでは、以下の2点を満たせば適用可能としています。
・情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていないこと。
・随時、使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと。
このようにテレワークにおいて事業場外みなし労働時間制を適用できるシーンは限定的です。
「うちは昔からこの制度だから」と放置していませんか? 令和6(2024)年4月からの建設業への時間外労働上限規制の適用、そして勤怠管理システムの進化により、「労働時間を把握できない」という理屈は通用しにくくなっています。
「みなし」として処理していた時間が、実は深夜残業や休日労働を含んでいた場合、多額の未払い賃金リスクになります。制度の適用が適切か、あるいは「実労働時間管理」へ切り替えるべきか、この機会に専門家を交えて就業規則と実態の乖離をチェックすることをお勧めします。









