ときわ台のアパートメント
MMAAA
第45回東京建築賞|共同住宅部門優秀賞
建築主:
トゥループロパティマネジメント株式会社
設計:
株式会社MMAAA一級建築士事務所
施工:
株式会社エス・エー・エス
所在地:
東京都板橋区
主要用途:
共同住宅
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上5階/地下1階
敷地面積:
60.18㎡
建築面積:
50.05㎡
延床面積:
237.25㎡
工事期間:
2017年4月〜12月
撮影:
長谷川 健太
設計趣旨:
 尾根道沿いの敷地の周辺には緩やかに下る地形をなぞるように低層の建物が並んでいて、それらの上空には物理的に占有されることがないただ空いている場所「空所」が大きく広がっている。極端に狭い敷地に最大の床面積を求められる条件、ひいては経済性を背景とした賃貸住宅という制度を、都市のダイナミズムとは切り離されたこの空所と接続することで、比喩的に解放できるように思えた。
 この建物には地下を含む6層に7戸の単身者用集合住宅が積層している。L字型の平面のメゾネット住戸が、中央の階段室の周りをずれながら取り囲む。この構成は各住戸において全方位に窓を穿つことを可能にし、隣接する空所に住戸を余すとこなく対峙させている。住戸の短手寸法は極端に狭く、いわばすべてが窓際である。室内のどこにいても身体が窓から近いので、体感的には建物の外形を超えて空所に晒されている、あるいは空所を住戸内に抱え込んでいるかのようである。(本橋 良介、三木 達郎)
本橋 良介(もとはし・りょうすけ)
2003年 東京工業大学工学部建築学科卒業/2003年 パリ・ラヴィレット建築大学留学/2006年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了/2009年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程満期退学/2012〜13年 Morville Motohashi Architectes(パリ)共同主宰/2014〜17年 本橋良介アトリエ主宰/2017年〜 MMAAA 共同主宰
三木 達郎(みき・たつろう)
2003年 名古屋工業大学工学部社会開発工学科卒業/2004年 シュトゥットガルト応用科学大学留学/2007年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了/2009年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程退学/2009〜17年 株式会社日本設計勤務/2017年〜 MMAAA 共同主宰
選考評:
 尾根道沿いの角地に建つ7戸の単身者用賃貸集合住宅である。集合住宅の敷地としては極端に狭いこの土地に、7戸の住戸を実現したのはまるでマジックのようである。しかも各住戸には専用のテラスまで用意されているのである。
 それを解く鍵はらせん構造にあった。中央の階段を取り囲むようにL型の住戸が配置され、上へ上へと導かれて行く。地下を含む6層の中に7戸の住戸を積層しているが、各住戸がメゾネット形式となっているため、それぞれの住戸は狭いながらも吹き抜けなど変化があり、住み手の工夫を要求するとともに、その意欲を刺激する空間となっている。またメゾネットにすることで、地下の住戸も1階に顔を出して十分な採光を確保している。
 一方、らせん状の構成はその外観も大きく特徴づけている。壁面に穿たれた窓やテラスは、敷地形状を限界まで使った建物の外形にリズムと変化を与え、その上昇感が空へと視線を導いてくれる。よく見ると打継ぎ目地の処理や階による壁厚の違いの表現など、細かな設計者のこだわりも見て取れる。
 純粋に住環境を考えれば、もう少し単純な解答もあったのではないかと思うが、あえてこの難しい解にチャレンジし、見事に解いて見せたことに敬意を表したい。(永池 雅人)
永池 雅人(ながいけ・まさと)
東京都建築士事務所協会副会長
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計入社、現在常務執行役員/品川支部