ミナミダイノナガヤ──時間を繋ぐ可変的空間
ビーフンデザイン
第44回東京建築賞共同住宅部門優秀賞
建築主:
進藤 守夫
設計:
株式会社ビーフンデザイン一級建築士事務所
進藤強+森達也
構造:
すわ製作所
施工:
株式会社ジーエスビルド
所在地:
東京都中野区
主要用途:
長屋
構造:
RC造 階数 地上3階
敷地面積:
116.55m2
建築面積:
58.93m2
延床面積:
169.03m2
工事期間:
2015年6月〜2016年3月
撮影:
平井 広行
設計趣旨:
■弱⇒強
 最寄駅から徒歩15分の住宅に囲まれた中野区南台の旗竿地。あまり恵まれた立地ではない(弱)ため、ライフスタイルの多様性、生活水準の変化に対して、規模・間取りを変更できる計画とした。(強)
■外⇔半外⇔内
 将来的な改修に対応するため、界壁は乾式とし、床は主に土間仕上げとした。居室の一部を小上りとし、家具のように仕上げることで、スラブ上で配線し、平面計画の自由度を確保した。また、室内まで路地空間を取り込むことで、土間と居室が隣接した昔ながらの趣を残しつつ、外部、半屋外(屋内路地)と室内(家具)を共存させた縁側のような空間を計画した。
■6⇒5⇒6?
 着工当初、6住戸で計画。上棟時、斜線側の居室の狭小感を改善するため、3住戸を2住戸とし、 計5住戸に変更した。将来のためのしくみを、工事段階で実行することになり、可変であることが証明できた。
■過去⇒現在⇒将来
 ネガティブな敷地(過去)にポジティブな建物(現在)を建て、+α(将来)を含ませることで、時間をつなぐフレキシブルな建物を計画した。(進藤 強)
進藤 強(しんどう・つよし)
1973年 兵庫県生まれ/1996年 京都精華大学美術学部デザイン学科建築専攻卒業/1998年 株式会社アーキテクトン 米田明に師事/2001年 ビーフンデザイン共同設立/2012年 株式会社ビーフンデザイン
選考評:
 少々難ありの敷地に対して賃貸集合住宅を提案し、低評価の土地から収益を生み出すことで出資を募るのが設計者のビジネススキームとうかがった。ここでは具体的には床も含めて「最低限」の躯体と設備を構築した時点、つまり通常よりは一歩手前で仕上げを止めて後は居住者の発想に委ねるという仕組みとなっている。通常、ここに模範解答的な家具レイアウトを参考提案するまでが建築家の役割だが、上手く住んでもらえそうな人に、住むためのヒントを提供しながら入居斡旋していくことまで行っている。ある入居者の住まいを拝見したが、たとえば設計者が螺旋階段と壁との間に微妙な距離をとり、ここに入居者が見事に収納小物のレイアウトで反応するなど、建築の持つインスピレーションと応答しながら、むしろ思いがけないほどセンスよく住まわれていることに脱帽した。この結果を導くために普段から入居者との会話を大切にしながら次の設計に生かしているとのことであり、建築家の仕事を「よりよい住環境を生み出すこと」とすれば、自分たちのデザインだけでなく、入居者というマーケット側とのコラボという、通常賃貸住宅では起こらない仕組みと、それにふさわしいデザインを提案していることが評価された。(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 常務執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年 同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社常務執行役員