GATE SQUARE 小杉陣屋町
(THE KAHALA 小杉陣屋町・ THE RESIDENCE 小杉陣屋町)
竹中工務店
第43回東京建築賞共同住宅部門優秀賞
建築主:
原マネージメント(THE KAHALA小杉陣屋町)、三井不動産レジデンシャル株式会社(THE RESIDENCE小杉陣屋町)
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
神奈川県川崎市
主要用途:
共同住宅
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上5階
敷地面積:
2,987.20m2(THE KAHALA小杉陣屋町)
2,973.25m2(THE RESIDENCE小杉陣屋町)
建築面積:
1,379.46m2(THE KAHALA小杉陣屋町)
1,722.71m2(THE RESIDENCE小杉陣屋町)
延床面積:
5,404.47m2(THE KAHALA小杉陣屋町)
6,493.97m2(THE RESIDENCE小杉陣屋町)
工事期間:
2013年11月〜2015年3月
2014年3月〜2015年7月
撮影:
*ナカサアンドパートナーズ、**勝田尚哉
設計趣旨:
 中世から続く中原街道がこの地域の繁栄の中心地でした。計画地は、建築主で地の名家の旧母屋跡地です。「GATE SQUARE小杉陣屋町」は、敷地に残された門、お社、蔵、庭石、樹木等を活かし、文化、歴史を次の世代に継承することを目指した共同住宅の計画です。
 街道に面する陣屋門を潜ると公開された広場があり、周囲に、お社・既存樹木・蔵の扉・展示ギャラリーを配し、歴史に根差した街の景観を生み出しました。
敷地にあった総欅造り黒漆喰の旧母屋は、川崎市立日本民家園に移築保存されています。新築建物は、旧母屋の大屋根が生み出す軒裏をモチーフにデザインしました。旧母屋の大きな屋根をイメージしたエントランスの奥に中庭を配し、賃貸・分譲棟が囲みます。
 中庭は、風緑光の豊かな空間で、ここだけの住環境を生み出しました。街道沿いの陣屋門から住戸玄関までの道中には既存樹木や庭石を配し、緑豊かな落ち着きある往年の風情をつくり出しています。
(篠崎 淳)
篠崎 淳(しのざき・じゅん)
1968年 神奈川県生まれ/1991年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1993年 早稲田大学大学院修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第5部門 設計1グループ長
選考評:
 開発が進む武蔵小杉駅周辺から一歩離れた中原街道沿いに立地する賃貸棟と分譲棟からなる低層集合住宅である。周辺は所有者が相続を繰り返す度に敷地が細分化され、街道沿いに繁栄した文化の歴史的面影はほとんど残っていない。幸いにも本計画地には旧家の母屋に附属する陣屋門、お社、蔵等が残されており、ここでは歴史的資産を活かしつつ、性格の異なる2棟の建物を中庭を囲むように配置している。全体を同一のデザインボキャブラリーでまとめ上げ、中原街道に面する陣屋門周辺は地域の広場として公開し、小さな歴史ギャラリー等を併設して街の貴重な歴史的資産としている点を高く評価したい。
 建築は彫りの深い水平ラインが特徴的で、歴史的な建造物の背景として落ち着いた雰囲気を醸し出している。また、さりげない外構からはあまり想像できないが、内部の共用部の空間は非常に豊かで空間の拡がりも魅力的であった。また、エントランスから各住戸に至る共用廊下も、緑豊かな露路のような風情を持ったアプローチとして設えられている。地域の開発の手本となるような質の高い作品であり、今後も続くであろう周辺の計画に良い影響を与えることを期待したい。
選考委員|宮崎 浩
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授