日清食品グループ the WAVE
竹中工務店
第42回東京建築賞一般二類部門奨励賞
建築主:
日清食品ホールディングス株式会社
デザイン監修:
古谷誠章+NASCA
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都八王子市
主要用途:
研究所
構造:
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、
鉄筋コンクリート造
階数:
地上2階/塔屋1階
敷地面積:
86,768.52m2
建築面積:
11,405.89m2
延床面積:
17,235.09m2
工事期間:
2012年9月〜2013年11月
撮影:
小川 重雄
設計趣旨:
 全世界の日清食品グループの新たな研究・開発拠点の創出
 「the WAVE」は、グローバルイノベーション研究センターと、グローバル食品安全研究所のふたつからなる日清食品グループの技術・開発・研究の新たな拠点である。新しいフードテクノロジーの波を起こし、これからの地球の食を切り開いていくことを目的に創設された。
 環境と対話する建築
 計画地は里山の風景を残す丘陵地に位置しており、食の原点である豊かな大地や環境と建築が応答するデザインを目標にした。外観の建物を覆う大型の鏡面ルーバーは、周辺の里山や水系と一体となったランドスケープを映し出す。内部空間では、不整形な外形を持つ平面に対し、研究室を中央部に街区状に配置することで、外形との間に外部環境との対話の場を生み出した。外周に広がる水盤やルーバーによってこの空間にもたらされる光や風による環境の揺らぎは、研究者の思考を開放し、ルーティーンワークでは拾いきれない創造的なコミュニケーションを促す。里山の風景の中に、内外にわたり「環境と対話する建築」を実現した。
(大日方 淳夫)
大日方 淳夫(おびなた・あつお)
1964年 東京都生まれ/1987年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1987年 竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第4部門 設計2グループ長
第42回東京建築賞選考評:
イノベーションの創出を期待される世界的な食品メーカーが、部門ごとに分散していた研究開発機能を集約した新しい研究開発拠点として、里山の緑豊かな風景の中に計画した建築物である。
研究室、事務室、テストプラントを含む共同作業エリアなど、部門を超えた積極的な交流を期待するプログラムを内包しつつ、ブランドとしての強いアピール性の獲得が意図された結果、デザイン監修者によって提案されたダイナミックかつオリジナリティ溢れる形状の金属製ルーバーが、機能的に配列された諸室を取り囲む構成とされた。 
材質やパンチング造作に工夫をこらしたルーバーや、ルーバーを麺とすれば切刃にあたるとされる建築要素の構造体をはじめ、精緻に考察された空間が実現されており、設定されたコンセプトを着実に建築の造作あるいは形態として実現する技術力の高さが窺えた。 
全体を通して同じ構成となっているルーバー造作はたいへん興味深い一方、室内空間の性質により、外部空間に対するよりよい関係性を求めてその形態を変化させること、あるいは、研究室を主体とするコアエリアとルーバーの外形が取り囲む間の不整形な空間が残余空間とはならずに、研究員たちの積極的な利用の意欲をかきたてる空間となることへの工夫や配慮を行う可能性も感じられた。
選考委員|國分 昭子
國分 昭子(こくぶん・あきこ)
建築家、株式会社IKDS 共同代表
1988年東京大学工学部建築学科卒業後、槇総合計画事務所/1997年より株式会社IKDS/2013年東京大学工学系大学院都市工学専攻にて博士号取得