たまプラーザの家
石井秀樹建築設計事務所
第42回東京建築賞戸建住宅部門最優秀賞
建築主:
非公開
設計:
石井秀樹建築設計事務所
施工:
株式会社匠陽
所在地:
神奈川県横浜市青葉区
主要用途:
専用住宅
構造:
木造+鉄筋コンクリート造
階数:
地上2階/地下1階
敷地面積:
298.11m2
建築面積:
118.89m2
延床面積:
219.15m22
工事期間:
2013年1月〜11月
撮影:
鳥村 鋼一
設計趣旨:
 祖母と両親の親世帯、子供ひとりの子世帯の2世帯4世代住宅。
 建蔽率40%の低密度な住宅街で、60%以上の空地を活かして、いかに2世帯の豊かな生活を生み出すかを考えた。
 敷地は平行した南北の道路に挟まれ、北側道路から3.5m立ち上がっている。2本の道路を繋ぐように、敷地中央に階段状の街路を縦断させ、外部の空気を敷地内へ引き込んだ。外と繋がった街路は適度な社会性を帯びて世帯間に自然な繋がりを生み、世帯が溶け出した家族の枠組みが生まれることに期待した。
 子どもの泣き声が街路に響くと誰かがあやしに向かい、天気の良い日は街路で食事会が始まる。世帯の枠組みが自然と融合した生き生きとしたアクティビティが生み出されている。
(石井 秀樹)
石井 秀樹(いしい・ひでき)
1971年 千葉県生まれ/1995年 東京理科大学(初見研究室)卒業/1997年 東京理科大学大学院(初見研究室)修了/1997年 architect team archum設立/2001年 石井秀樹建築設計事務所設立/2012年 一般社団法人建築家住宅の会 理事
第42回東京建築賞選考評:
 閑静な住宅地にあるこの住宅は、敷地面積約90坪、延床面積66坪と、標準よりやや広めではあるが、普通の2世帯住宅の規模である。
 敷地の中央に路地空間を設け、その路地に面して、2世帯の居間、ダイニング、書斎、浴室、寝室等の各所要室を分解し、独立棟として配置することによって、住宅の中に小規模な都市空間を連想させる独特なスペースを創出させている。
 この路地のような空間を通じて、家族がいつも気持ちのよい関係性を保っていられる。2世帯の家庭が入り組んだかたちで交錯し、お互いの生活を変化のある楽しいものにさせている。ふたつの居間がこの外部空間を挟んで連結して、時には路地と一体となったリビングにもなり、さまざまな情景を楽しむことができる。
 家の中の動線も、階段やブリッジを通って巡回させ、さまざまに展開し、小さな住宅とは思えないストーリー性を感じさせる。ブリッジが外部からの視線を遮るような仕組みや、仕上げ材の選択、細部まで配慮されたディテールへのこだわり等によって、質の高い空間を実現している。
 建築主の趣味の良さと共に、上質な居住空間を完成させ、戸建住宅の新たな魅力を創り上げた最優秀賞にふさわしい作品である。
選考委員|岡本 賢
岡本 賢(おかもと・まさる)
建築家、一般社団法人日本建築美術協会会長
1939年東京都生まれ/1964年 名古屋工業大学建築学科卒業後、株式会社久米建築事務所(現・株式会社久米設計)/1999年 同代表取締役社長/2006年 社団法人東京都建築士事務所協会副会長/2014年 一般社団法人日本建築美術協会会長