万平ホテル
設計|梓設計
第52回東京建築賞|リノベーション賞
登録有形文化財の「アルプス館」東側正面外観。耐震改修とバリューアップが行われた。
  • 登録有形文化財の「アルプス館」東側正面外観。耐震改修とバリューアップが行われた。
  • 「アルプス館」メインダイニング。
  • 「アルプス館」ロビー。
  • 「アルプス館」バー。
  • 「愛宕館」北側外観。
  • 「愛宕館」ゲストルーム。
  • バンケット「桜」。
  • 「碓氷館」ゲストルーム。
  • 配置図
建築主:
森トラスト株式会社
表彰建築士
事務所:
株式会社梓設計一級建築士事務所
施工:
清水建設株式会社、株式会社きんでん
所在地:
長野県北佐久郡軽井沢町⼤字軽井沢字桜ノ沢925
主要用途:
ホテルまたは旅館
構造:
木造(アルプス館)、RC造(愛宕館・碓水館)、S造(バンケット棟)
階数:
地上2階
敷地面積:
98,986.82㎡
建築面積:
6,484.9㎡
延床面積:
1,929.17㎡(アルプス館)、2,972.95㎡(愛宕館)、337.41㎡(バンケット棟)、2,583.29㎡(碓水館)
竣工:
2024年7月
撮影:
エスエス
設計趣旨:

 日本を代表するクラシックホテルのひとつである軽井沢の万平ホテルの大規模改修、改築、建て替えプロジェクトである。登録有形文化財のアルプス館の耐震改修工事+ヴァリューアップ工事、温泉客室棟の「愛宕館」、バンケット機能をもつ「桜」の新築、客室棟「碓水館」のヴァリューアップ工事といった敷地全体での計画となる。
 耐震改修促進法17条の採用することによって登録有形文化財のアルプス館の意匠を損なうことなく耐震改修工事を行うことを可能にし、検査済証の取得により適法化もあわせて行った。計画において「万平ホテル昔とかわらないね」と言われることを目指し、それを関係者の共通認識としてプロジェクトの遂行を行ってきた。
 そのまま復元するのではなく、機能性の向上や新しい素材・デザインなども盛り込んでいる中で、どうすれば「変わらない」という歴史を継承することができるのか。アイデンティティの要素を洗い出し、そのアイデンティティを活かし取り、再現を丁寧に行ったことで、訪れたゲストからは実際に「かわらないね」という言葉を多くいただけた。(遠藤 大輔、古賀 大亮、坂井 大輔)

遠藤 大輔(えんどう・だいすけ)
梓設計 アーキテクト部門 BASE04
1986年 徳島県生まれ/2010年 早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学修了/2010年 株式会社プランテック総合計画事務所/2014年~ 株式会社梓設計
古賀 大亮(こが・だいすけ)
梓設計 アーキテクト部門 九州支社設計部
1994年 神奈川県生まれ/2020年 東京大学大学院工学系研究科建築学修了/2020年~ 株式会社梓設計
坂井 大輔(さかい・だいすけ)
梓設計 常務執行役員 アーキテクト部門 BASE04 ゼネラルマネージャー、マスターアーキテクト
1975年 福岡県生まれ/2001年 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修士課程修了/2001年 株式会社建築研究所アーキヴィジョン/2006年 株式会社プランテック総合計画事務所/2021年~ 株式会社梓設計
選考評:

 軽井沢を象徴する創業130年の歴史的な雰囲気を損なうことなく、現代的な快適性を備えたホテルへと見事に改修している。外観や空間の印象を極力変えないという、一見単純でありながら極めて難易度の高い命題に対し、基礎の更新や大規模な構造補強によって応えた点は高く評価できる。改修されたアルプス館や碓氷館は、従来の意匠を継承しながらも、美しく整えられた空間として再生されていた。「見た目は変わっていないのに快適になった」という宿泊者の評価は、この改修の本質を的確に表しているように思う。130年の歴史を受け継ぎながら、さらに次の100年へと建築の時間をつないでいくことのできる、意義深い改修であった。
 仕上げを可能な限り残すための苦労も並大抵のものではなかっただろう。材料の活かし取りから始まり、細部に至るまで丁寧な検討が重ねられていたことがうかがえる。工事記録写真も非常に素晴らしく、ひとつひとつの工程に向き合った職人たちの姿が生き生きと伝わってきた。この建築に関わった人びとが、それぞれ強い誇りを持って工事に携わっていたことが感じられ、深い感銘を受けた。
 一方で、新築部分については既存部分との違和感をなくすことに非常に慎重であったがゆえに、あえて現代的な価値を加える方法もあり得たのではないかとも感じた。しかし、その抑制的な姿勢そのものが、この建築に対する敬意の表れであったとも言えるだろう。(手塚 由比)

手塚 由比(てづか・ゆい)
建築家、株式会社手塚建築研究所代表取締役
1969年 神奈川県出身/1992年 武蔵工業大学卒業/1992-1993年 ロンドン大学バートレット校(ロン・ヘロンに師事)/1994年 手塚建築企画を手塚貴晴と共同設立(手塚建築研究所に改称,1997年)/1999年〜 東洋大学非常勤講師/2001年– 東海大学非常勤講師/2006年 カリフォルニア大学バークレー校客員教授/2023年〜 東京大学非常勤講師