





- 南東より俯瞰する。
- 1階居間。南方向を見る。
- 久米式耐震木骨構造の補強。*
- 平面図
- 断面図
事務所:
旧本多邸は1939(昭和14)年に竣工した木造洋風住宅である。建主は本多庄作、設計は久米設計の創業者である久米権九郎、施工は本多自身の直営工事であった。久米が考案した「久米式耐震木骨構造」が採用されている建築物で現存する3例目であることが判明し、その文化財的価値の保存と将来的活用を目指し2021年に久米設計が本多家より継承した。
保存・改修にあたっては原形・現況の意匠や材料・工法を尊重すること、最大の特徴である久米式耐震木骨構造を活かしながら建物の安全性を確保すること、用途変更も視野に入れた機能を補うことを軸に、室や部位ごとに保存改修方針を整理した。増築部分は撤去し、間仕切りの改変は水回りの拡充に限定することで、外観・平面ともほぼ原形状態を保存している。浸水・漏水や倒木等による損傷や腐食が深刻な状態であったが、傷んだ部位は丁寧に取り換えや補修を施し、健全な部位は極力再利用しながら工事を進め、大工や左官をはじめとする職人たちの手により建築は活き還った。
設計事務所が文化財を運用していくにあたり、この建物と地域がこれまで築いてきた関係性を尊重しながら少しずつ社会へ開くことを模索している。これは設計事務所が地域と主体的に関わるプロジェクト(=試み)である。旧本多邸の懐の深さに呼応するように多様な使われ方を受け入れながら、「生きた文化財」としての活用が地域を耕し、建築やまちづくりに関わる私たちの組織文化を醸成させることを目指している。(渡邊 雅子、魚本 大地)

久米設計チーフアーキテクト
1977年 神奈川県生まれ/1999年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/2001年 東京工業大学大学院修士課程修了/2001年 久米設計入社

久米設計チーフアーキテクト
1984年 神奈川県生まれ/2009年 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了/2009年 久米設計入社
旧本多邸は、1930年代に、実業家・本多庄作が建てた本格的木造洋風邸宅である。しかし1986年以降約30年にわたり空き家となっており、漏水や倒木被害による腐食や損傷が進行し廃屋寸前の状態にあった。その後、本建築が久米権九郎(久米設計の創設者)の設計による、日本近代建築史・建築技術史上重要な「久米式耐震木骨構造」であることが判明し、2021年に久米設計が継承、単なる保存修復ではなく、地域に根差した保存活用の取り組みが始まった。2022年には国登録有形文化財にも登録されている。
本プロジェクトでは、構造の徹底的な調査研究を基に限界耐力計算による耐震補強を行い、オリジナルの軸組を部分的に可視化している。また、当時のタイルや左官仕上げ、建具、照明器具などに見られる高度な技術と素材を丁寧に再現し、歴史的技術の継承を図るとともに、太陽熱や地中冷熱の活用により環境性能の向上にも取り組んでいる。建築を地域に開かれたものとして未来へ継承しようとするプログラム構築まで含め、これら一連の活動は設計者への深い敬意と「生きた文化財」としての保存活用への強い意志の表れであり、本建築の価値を一層高めるものとして評価された。(赤松 佳珠子)

建築家、株式会社シーラカンスアンドアソシエイツ代表取締役・パートナー、法政大学デザイン工学部建築学科教授
1968年 東京都出身/1990年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/1990年 シーラカンス(のちC+A, CAt)に加わる/2002年 CAtパートナー/2016年 法政大学デザイン工学部建築学科教授/現在、CAtパートナー、法政大学教授
(撮影:ToLoLo studio)
















