MUFG PARK / LIBRARY
設計|三菱地所設計
第51回東京建築賞|東京都知事賞
西側外観。2枚の⽔平⾯(⼤屋根、縁側テラス)と垂直⾯(森の本棚)で構成される建築形態。*
  • 西側外観。2枚の⽔平⾯(⼤屋根、縁側テラス)と垂直⾯(森の本棚)で構成される建築形態。*
  • PARK南側。千川上水の緑と一体化するPARKの緑。***
  • 東側外観。園路は建物内に貫入し散策者を誘う。*
  • 南側外観。「森の本棚」を発光させ明るさ感を演出する。**
  • 室内北側。本の寄贈者と来館者の「想い」の拠り所となる「森の本棚」。**
  • 室内。四周ガラス開口と浮遊感ある大屋根により生み出される室内外の一体感。**
  • 南側縁側テラス。ライブラリの利用者以外も気軽に立ち寄れる中間領域。*
  • 配置・1階平面図
  • 断面図
建築主:
株式会社三菱UFJ銀行
表彰建築士
事務所:
株式会社三菱地所設計一級建築士事務所
ライティングデザイン:
Lumimedia Lab
施工:
東急建設株式会社
所在地:
東京都西東京市柳沢4-4-40
主要用途:
図書館
構造:
RC造一部S造、SRC造
階数:
地上1階
敷地面積:
11,040.55㎡
建築面積:
645.70㎡
延床面積:
436.10㎡
竣工:
2023年6月
撮影:
*吉田写真事務所、**新建築社、***ナカサアンドパートナーズ
設計趣旨:
 企業所有の広大な運動場を改修し、ライブラリ新設と併せ公園に転換し一般に開放する計画。
 戦後70年間、西東京市内に保有されてきた運動場には武蔵野の森を想起させる貴重な自然が残されていた。この既存樹木すべての調査を行い、その間を縫うように建築・園路・インフラを計画した。園路沿いに浸透管を巡らせ敷地内の全ての雨水を地中に涵養し未来に向けた植物育成に努めた。
 敷地北側に展開する運動場の利用者を呼び込むよう、ライブラリは運動場へ向かう園路に沿ったカーブ形状とした。また、敷地南側の「森の広場(森に囲まれた芝生広場)」の北端にライブラリを配置し、公園のメインゲート→森の広場→運動場へと、エリアごとにまとまりのある景観構成とした。
 ライブラリは森の広場に面し深い軒と縁側を廻し憩いの場を提供するとともに、園路が建物内を通り抜け読書以外の方も立ち寄りやすい構成とした。
 本ライブラリは、「本」を通じて「人」と出会う場を目指し、蔵書は地域からの寄贈本で構成される。「寄贈本=本に込めた想い」を可視化すべく、「森の本棚(高さ4mにおよぶ壁一面の本棚)」をつくり、みんなで本を持ち寄り育てるライブラリを表現した。(大森 晃、髙橋 祐太)
大森 晃(おおもり・あきら)
三菱地所設計
1967年 東京都生まれ/1989年 東北大学建築学科卒業/1991年 早稲田大学大学院修士課程修了/1991年三菱地所・2001年三菱地所設計入社/現在、同社建築設計四部シニアアーキテクト
髙橋 祐太(たかはし・ゆうた)
三菱地所設計
1994年 北海道生まれ/2016年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/2018年 日本大学大学院生産工学研究科修士課程修了後、2018年三菱地所設計入社/現在、同社東北支店 アーキテクト
選考評:
 大手銀行が長年所有してきた緑豊かな広大な土地が市民に無償開放されることになった。それに伴って、植栽や歩道の再整備などを含んだ敷地全体のランドスケープデザインと、これも誰もが使うことのできる図書館の建築デザインが設計者へと委託された。多種多様な樹木や園路、広場からなる適切なランドスケープデザインと共に、それと一体的に考えられた図書館建築の巧みな配置計画がこの作品の肝である。
 南側にひろがる芝生広場と北側の球技場の間に図書館は配され、それぞれの落ち着き/活動の空間性の違いを程よく区分しながら、園路に沿って三日月状にカーブしたボリュームがエッジとなることで、芝生広場をまとまりのある都市空間として成立させている。
 また、この三日月形状は端部をテーパー処理された軽やかな片流れ屋根であり、その勾配によって豊かな樹々の緑と芝生の空間をパノラミックに望みつつ、内部空間に懐のように落ち着いた一体感のある空間性を生み出し、同時に深い軒は芝生広場に直接面した、なんとなく皆が居付きたくなる縁側のようなテラス空間も生み出している。
 そのモデストな佇まいは、市民にもたらされた得難い都市空間こそがこのプロジェクトの果実であることを静かに主張しているようでもある。そんな公共性への深い洞察をもつ作品として高く評価した。(原田 真宏)
原田 真宏(はらだ・まさひろ)
建築家、芝浦工業大学建築学部建築学科教授、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO主宰
1973年 静岡県生まれ/1997年 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了/1997〜2000年 隈研吾建築都市設計事務所/2001〜02年 文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受け、ホセ・アントニオ&エリアス・トレースアーキテクツ( バルセロナに所属)/2003年 磯崎新アトリエ/2004年 原田麻魚と共に MOUNT FUJ I ARCHITECTS STUDIO 設立/2008年 芝浦工業大学准教授/2016年 芝浦工業大学 教授