九段会館テラス
設計|鹿島建設、梓設計
第50回東京建築賞|東京都知事賞
建築主:
合同会社ノーヴェグランデ
表彰建築士
事務所:
事務所:
鹿島建設株式会社一級建築士事務所
株式会社梓設計一級建築士事務所
株式会社梓設計一級建築士事務所
施工:
鹿島建設株式会社
所在地:
東京都千代田区九段南1-6-5
主要用途:
事務所(集会場、店舗、診療所)
構造:
S造、SRC造、RC造
階数:
地上17階、地下3階、塔屋3階
敷地面積:
8,765.85㎡
建築面積:
5,122.78㎡
延床面積:
68,089.88㎡
竣工:
2022年6月
撮影:
*川澄・小林研二写真事務所、**石黒写真研究所、***井上登写真事務所
設計趣旨:
歴史建造物である旧九段会館の再生(保存・復原)と新しいワーキングプレイスの創出をテーマに計画された再開発事業。3・11の大震災以降、閉鎖されていた旧九段会館の高度利用を国が策定し、事業者選定競争入札が行われた。歴史的価値の高い旧九段会館の外装の保存と、内部では貴賓室・宴会場・玄関ホールなどを再生、創建時の意匠に復原しつつ使い続ける新たな魅力付けを行っている。敷地内には内堀通りの賑わいと人の流れをお濠沿いへと引き込み、地域に開放される水と緑の歩行者ネットワークを構築した。都市景観としても、お壕に直接面する稀有な立地を最大限に活かし、北の丸公園・お濠を身近に感じられる印象的な景観を創出している。建物内は保存棟玄関から新築棟へは新旧の建物をシームレスな意匠で繋げつつ、魅力ある環境・高度な機能をそなえたワーキングプレイスを生み出した。
また、永続的に歴史建造物を使用し続けるため、保存棟は地下1階で免震レトロフィット化を行い、安全性を最大限確保している。首都の中心にあって、歴史と未来の両方に大切な思いを込めた計画となった。
(山本 幸彦、瀧口 淑夫)
山本 幸彦(やまもと・ゆきひこ)
鹿島建設建築設計本部建築設計統括
1960年 北海道生まれ/1985年 北海道大学工学部建築学科卒業/1987年 同大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了後、鹿島建設入社
鹿島建設建築設計本部建築設計統括
1960年 北海道生まれ/1985年 北海道大学工学部建築学科卒業/1987年 同大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了後、鹿島建設入社
瀧口 淑夫(たきぐち・よしお)
鹿島建設建築設計本部建築設計統括チーフアーキテクト
1978年 新潟県生まれ/2001年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/2004年 同大学大学院理工学研究科建設工学修士課程修了後、鹿島建設入社
鹿島建設建築設計本部建築設計統括チーフアーキテクト
1978年 新潟県生まれ/2001年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/2004年 同大学大学院理工学研究科建設工学修士課程修了後、鹿島建設入社
選考評:
東日本大地震で被災した昭和9年建設の歴史的建造物である「九段会館」の再生と、新たなワーキングプレイスを創出するプロジェクトである。旧九段会館の歴史的意匠については、免震レトロフィットにより外周1スパンを保存し、既存仕上げや資料等を丹念に精査した上で慎重に復原再生するとともに、その奥に高層オフィス棟を建設して収益性を確保することで事業性を成り立たせており、レガシーをさらに長く使い続ける長寿命化が図られている。歴史的意匠を再生した玄関ホールを入り、かつての大ホールの位置に設けられた高天井のプラザを通ってお濠の緑を取り込むオフィスエントランスに向かう空間的・意匠的な繋がりがスムーズで、新旧の建築的な魅力が融合し新たな価値が産み出されている。たいへん質の高いリノベーションといえるだろう。
外部空間については、皇居北の丸公園牛ヶ淵という場所性を踏まえ、親水空間の「お濠沿いテラス」や隣接する昭和館との間の24時間開放の「九段ひろば」を丁寧に整備することで、都心に新たな憩いのスペースが人間的なスケールで創り出されている。現地審査がちょうど桜が満開を迎える時期で、多くの都民が散策し集い語らっている姿が印象的であった。魅力ある都市空間を創出し都民生活の向上に大きく寄与するもので、東京都知事賞にふさわしい作品である。
(宮原 浩輔)
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会相談役、株式会社山田守建築事務所代表取締役社長
1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社
一般社団法人東京都建築士事務所協会相談役、株式会社山田守建築事務所代表取締役社長
1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社