ヤマト港南ビル
日建設計
第48回東京建築賞|一般二類部門優秀賞
西側旧海岸通り側ファサード。
  • 西側旧海岸通り側ファサード。
  • エントランス回り夕景。
  • 外周車路。
  • 8階南北面のスパイラル段床。
  • 展示室。
  • 東西断面図
  • 4階平面図
建築主:
ヤマト運輸株式会社
設計:
株式会社日建設計一級建築士事務所
施工:
前田建設工業株式会社
所在地:
東京都港区
主要用途:
事務所
構造:
鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
階数:
地上10階
敷地面積:
2,482.66㎡
建築面積:
2,242.93㎡
延床面積:
19,542.80㎡
工事期間:
2018年2月〜2019年9月
撮影:
雁光舎(野田東徳)
設計趣旨:
 創業100周年を機に計画された、集配センター、企業ミュージアム、研修所、研究所、カフェからなる建物である。
 過去十数年の間に、物流の重要性はますます高まり、AI、IoTの進化とともに人と機械の境界は曖昧さを増している。そうした時代の急速な変化を投影して「都市型高層ビルとインフラ施設」、「人と車」が等価に共存するところが本プロジェクトに際立つ特徴であり、それらをいかに建築として統合するかがデザインの鍵であった。
 建物は各フロア中央の整形フラット床の周りに、車路とミュージアム、屋外テラスとワークプレイスという二重スパイラル空間が巻き上がる構成となっている。
 道路が上層階まで駆け上がるこのスパイラルの構成は、モビリティ変革下にある都市東京の現在の姿をそのまま投影したものであり、そこには従来普遍とされてきた建築の水平積層性とインフラの流動性、連続性を同時獲得しつつある新たな建築の兆しが生まれている。(河野 信、渡辺 由紀)
河野 信(かわの・しん)
山下貴成建築設計事務所日建設計設計部門ダイレクター
1971年 埼玉県生まれ/1994年 東京理科大学建築学科卒業後、日建設計入社
渡辺 由紀(わたなべ・ゆき)
日建設計設計部門ダイレクター
1971年 神奈川県生まれ/1994年 東京大学工学部建築学科卒業後、日建設計入社
金子 裕介(かねこ・ゆうすけ)
日建設計設計部門アソシエイトアーキテクト
1981年 新潟県生まれ/2006年 京都工芸繊維大学工芸学部卒業/2008年 同大学大学院修了後、日建設計入社
山中 浩太郎(やまなか・こうたろう)
日建設計設計部門
1986年 埼玉県生まれ/2009年 東京理科大学理工学部建築学科卒業/デンマーク王立芸術アカデミー留学/2012年 神奈川大学大学院工学研究科修了後、日建設計入社
選考評:
 ヤマトグループ創業100周年を機とした建て替えプロジェクトである。近年、ビジネス街へ変貌する品川駅東側の港南地区に建つ、集配拠点「宅急便センター」と企業ミュージアム、研修施設からなる複合建築である。
 車路が立体的に巻き付くガラス建築という画期的な発想により、各フロア中央部のフラット床の周りに、車路と展示空間、ワークプレイスの二重のスパイラル空間が連なる。スロープ状に見学ルートが計画されたミュージアムは、100年の歴史を遡る移動感覚と相まってユニークである。
 ガラスユニットを斜めに鋭利に切り取りとり、車路が駆け上がるこのファサードの様相は、流動的であり、同時に周辺環境を映しこむクリスタルなガラスが静的な印象をつくり出している。
 都市部における、物流インフラとワークプレイスを融合した合理的なあり方を、現代の都市景観のダイナミズムに見事に変換し、さらに社会的課題でもある次世代モビリティ変革が注目されるなか、人と車の領域が交互に表出するその姿は、移動、輸送、流動性という未来的テーマを内包しながらも、どこか人中心のノスタルジーに通ずる意想外のデザインへと導いているようだ。
 現代的なテーマが詰まったシンボル性を見事に獲得している。(北 典夫)
北 典夫(きた・のりお)
鹿島建設株式会社建築設計本部長、専務執行役員
1958年横浜市生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、鹿島建設株式会社