カンダホールディングス本社
竹中工務店
第48回東京建築賞|一般一類部門優秀賞
西側外観。建物全体を包み込むポーラスな外装シェード。
  • 西側外観。建物全体を包み込むポーラスな外装シェード。
  • 中間領域が平面的・立体的に一筆書きで繋がる。
  • 外装シェード内観。
  • 各階平面図
  • コンセプトダイアグラムと断面図
建築主:
カンダホールディングス株式会社
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
千代田区
主要用途:
事務所
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上8階
敷地面積:
499.38㎡
建築面積:
334.64㎡
延床面積:
2,157.61㎡
工事期間:
2018年1月〜2019年2月
撮影:
井上 登
設計趣旨:
都市に潜む自然を纏う
 三方を隣地に囲われ唯一の接道が西面という厳しい条件の中で、光や風などの都市に潜む自然環境を取り込むため、大きな部屋を下に、小さな部屋を上に重ねることで、一筆書きのように連続する立体的な半外部空間を設けた。これにより、水平・垂直両方から自然光を取り込み、そよ風が巡る中間領域を創出した。さらに、建物全体をポーラスなシェードで包み、日射負荷と直達光の低減、反射光とそよ風の導入を図った。シェードの開口の大きさと角度は、直達光の低減率、シェード室内側の輝度分布、インテリアの開放感を定量化し、3種の形状を導き出して使い分けている。スムーズなコミュニケーションのための開放的な階段や、スキップフロアが建物全体をつなぎ、光や風も建物を抜け、内外が連続する奥行きある空間を形成している。
 これらの試みにより、高密度な都心部においても、人と自然をつなぎ、自然環境のリズムを感じるワークプレイスの創出を目指した。(花岡 郁哉)
花岡 郁哉(はなおか・いくや)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第2部門 設計4(アドバンストデザイン)グループ長
1975年 東京都生まれ/1999年 東京大学工学部建築学科卒業/2001年 同大学院修了後、竹中工務店入社
選考評:
 神田の中層ビルが立ち並ぶ都市密周部に潜む自然をまとった本社ビルである。四角い孔が無数に開いたポーラスな白い外装シェードが特徴的である。
 その建築構成は、周辺街区を考慮した解析モデルによる風環境と光環境のシミュレーションにより、立体的に展開する半外部空間とワークスペースの相互関係を、見事に周辺環境を内包し構築している。内部と外部という二分法が消し去られ、あるいは反転されているかのような光と微風が巡る快適な中間領域を実現している。照明計画においては、省エネと明るさ感を両立する工夫とともに、夜間のオフィスからの明かりを適度に絞り周辺部の集合住宅への配慮がなされている。また大スパン跳ね出し架構により1階全面をピロティ化、また隣接地との適度な距離感を設けるなど、密集する街並みにおいて見事に本社ビルとしての建築の自律性を際立たせている。
 比較的多くの中規模のオフィスを手掛けてきた設計者の一連の建築の「白」には、装飾批判のモダニズムに対して新鮮に映るファッション性が描出されているかのように思える。その挑戦を高く評価したい。(北 典夫)
北 典夫(きた・のりお)
鹿島建設株式会社建築設計本部長、専務執行役員
1958年横浜市生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、鹿島建設株式会社