森の小屋
設計|K+Sアーキテクツ
第48回東京建築賞|戸建住宅部門優秀賞
広間よりテラス方向を見る。
  • 広間よりテラス方向を見る。
  • テラス部分南側外観。
  • テラス越しに広間を見る。
  • 広間より北方向を見る。
  • バルコニーのある浴室。
  • 南東側アプローチより見る。
  • 1階平面図
  • 断面図
建築主:
佐藤 文+鹿嶌 信哉
設計:
一級建築士事務所株式会社ケイ・エスアーキテクツ
施工:
株式会社ハピアデザイン
所在地:
長野県北佐久郡軽井沢町
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造(在来軸組構法)
階数:
地上1階
敷地面積:
992.31㎡
建築面積:
53.93㎡
延床面積:
51.54㎡
工事期間:
2019年5月〜2020年2月
撮影:
上田 宏
設計趣旨:
 敷地は雄大な浅間山の懐に広がる森に包まれている。自然の生命力を享受する居場所を求め、この豊かな森の中に小さな建物を計画した。
 敷地は扁平な菱形でその1辺が砂利道に接道し、敷地を包み込むようなすり鉢状の斜面地となっている。敷地中央に樹木のない光が差す場があり、そこを起点に地形をトレースしながらレベルの異なる床を設けることにした。各レベルで周辺の自然と呼応した居場所をつくろうと考え、庭とつながる低いレベルはテーブルとベンチのある屋外テラスとし、傾斜に沿わせた屋根勾配によって森の木々の先端まで視線が抜けるようにした。森からの涼しい吹き下ろしの風で居心地のいい夏の居場所となる。
 中間のレベルはフリーユースの広間とし、テラスとつなげることで、小さいながらも広がりのある居住の場とした。高いレベルは広間とつながる最小限のベッドスペースとプライバシーが必要な水廻りを設け、北側に広がる雄大な斜面の森を楽しめるようにした。(佐藤 文、鹿嶌 信哉)
佐藤 文(さとう・あや)
K+Sアーキテクツ
1961年 群馬県生まれ/1984年 日本大学理工学部建築学科卒業後、早川邦彦建築研究室、芦原建築設計研究所を経て、1990年 K+Sアーキテクツ設立/関東学院大学建築・環境学部 建築・環境学科非常勤講師
鹿嶌 信哉(かしま・のぶや)
K+Sアーキテクツ
1959年 愛知県生まれ/1983年 京都工芸繊維大学工芸学部建築学科卒業後、芦原建築設計研究所/1990年 K+Sアーキテクツ設立
選考評:
 軽井沢駅から⻄に向かって20分あまりタクシーを⾛らせると、浅間⼭麓の静かな森に辿り着く。針葉樹の⽊⽴のなか少しだけ梢が開けてポッカリと光が差すところがあり、建築家夫妻が⾃分たちの居場所として建てた別荘がひっそりと佇んでいる。
 「森の⼩屋」と呼ぶのがふさわしい10坪あまりのこぢんまりとした住宅であるが、⼟地の⾼低差に呼応してテラス⇒広間⇒ベッドルームと連続的に床レベルが変わるにつれて、屋根付きテラスのフレームや⼤きな窓によって切り取られた⽊⽴の⾵景も変化していく。床レベルの設定、テラスを含めた空間のスケール感、開かれ⽅と閉じ⽅、スギとレッドパインのシンプルな内外装材、各所のディテール。どれもよく考え抜かれ設計者の熟練した⼒量を感じさせつつも、作為的なところが⾒受けられない。周辺の⽊⽴と同じように⼟地と環境にしっくりと馴染んでいる。
 四季とともに変化する浅間の⾃然が楽しめる秘密基地的な魅⼒を持っており、「季節を問わず毎⽉2回くらいは訪れています」と仰るのもよく理解できる。軽井沢の別荘地を巡り歩いて探し出したこの⼟地の魅⼒に惚れ込み、存分に楽しんでいるおふたりの笑顔が印象的だった。(宮原 浩輔)
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事、一般社団法人東京都建築士事務所協会常任理事、株式会社山田守建築事務所代表取締役社長
1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社/現在、同代表取締役社長