BONUS TRACK
設計|ツバメアーキテクツ
第48回東京建築賞|新人賞、一般一類部門最優秀賞
世田谷区通路より路地越しに広場を見る。
  • 世田谷区通路より路地越しに広場を見る。
  • 西側の世田谷代田駅側からの夕景。
  • 南側の区有通路。夏祭りの風景。*
  • 世田谷代田駅側より下北沢駅方向を見る。**
  • 配置・1階平面図
  • 断面パース
建築主:
小田急電鉄株式会社
設計:
株式会社ツバメアーキテクツ一級建築士事務所
施工:
株式会社山菱工務店
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
長屋、商業施設
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
2,163.35㎡(5棟合計)
建築面積:
503.65㎡
延床面積:
907.35㎡(5棟合計)
工事期間:
2019年4月〜2020年3月
撮影:
山岸 剛、森中 康彰*
写真提供:
ツバメアーキテクツ**
設計趣旨:
 地下化した小田急線の跡地に建つBONUS TRACKは、個人が小商いを始めやすい環境を生み出し、下北沢の街並みを引き継ぐ新築の商店街をつくる計画である。
 全体は1区画10坪からなる4棟の兼用住宅と、それらをサポートする1棟の商業施設によって構成される。竣工時が完成ではなく、入居者自身がこの場所に手を加え続け育てられる場所としたい。そのために改変を加えやすい設えを施すとともに、仕組みづくりを行い、仕上げを変えられる外壁や庇など、手を加えられるエレメントを全体に散りばめた。また、内装監理という立場で、積極的な改変を促すエリアマネジメントを行った。
 外構は雑木林の中の商店街をコンセプトに外部空間を大きく設けた。入居者にとっては小さな内部空間を補完する共用の庭であり、民間の鉄道会社の土地でありながら、自由度の高い公園のような役割を持つ建築となる。
(千葉 元生、山道 拓人、西川 日満里)
千葉 元生(ちば・もとお)
ツバメアーキテクツ
1986年 千葉県⽣まれ/2009年 東京⼯業⼤学⼯学部建築学科卒業/2009〜10年 スイス連邦⼯科⼤学 ETH/2012年 東京⼯業⼤学⼤学院 理⼯学研究科建築学専攻 修⼠課程修了/2013年 ツバメアーキテクツ設⽴/東京⼤学⾮常勤講師
山道 拓人(さんどう・たくと)
ツバメアーキテクツ、法政⼤学専任講師
1986年 東京都⽣まれ/2009年 東京⼯業⼤学⼯学部建築学科卒業/2011年 同⼤学⼤学院 理⼯学研究科建築学専攻 修⼠課程修了/2011〜18年 同⼤学 博⼠課程単位取得満期退学/2012年 ELEMENTAL/2012〜13年 Tsukuruba Inc. /2013年 ツバメアーキテクツ設⽴/2021年〜 江⼾東京研究センター プロジェクトリーダー
西川 日満里(さいかわ・ひまり)
ツバメアーキテクツ
1986年 新潟県生まれ/2009年 お茶の水女子大学生活科学部卒業/2010年 早稲田大学芸術学校建築都市設計科修了/2012年 横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA卒業/2012〜13年 CAt/2013年 ツバメアーキテクツ設立/横浜国立大学非常勤講師
選考評:
 下北沢の住宅地に、地下化した小田急線の線路跡地に生まれた地域に溶け込んだ職住混在の新しい商店街である。
 4棟の長屋型兼用住宅とそれをサポートする機能を持つ商業棟が、雑木林の広場を含む路地と一体となって形成されている。この外部空間にはリースラインが設けられておらず、各店舗が自由に家具やサインを設置できるように計画されている。入居者にとっては小さな内部空間を補完する共用の庭であり、近隣住民にとっては、民間企業の土地でありながら、公園のような役割を果たしている。また、入居者自身がこの商店街に手を加え続け、育てられる場所として、片流れ屋根の組み合せによる外形や分節された外壁、軸組み現しの内部空間など、建築が個々で完結しないように計画され、仕上げを変えられる外壁や庇、コンクリートのカウンターなど、手を加えられるエレメントが全体的に散りばめられている。さらに、どのような改変方法があり得るかが入居者に示され、積極的な改変を促すエリアマネジメントが行われている。
 以上のように、地域に溶け込んだ職住混在の新しい商店街を実現するための仕組みづくりにも取り組む「研究」と「設計」の2軸による若手建築家グループの建築設計事務所運営も高く評価した。(伊香賀 俊治)
伊香賀 俊治(いかが・としはる)
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授
1959年生まれ/早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了/(株)日建設計 環境計画室長、東京大学助教授を経て、2006年より現職/専門分野は建築・都市環境工学/博士(工学)/日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長