新柏クリニック
竹中工務店
第46回東京建築賞|一般二類部門優秀賞
南側外観。2、3階が透析室。道路を挟んだ南側に「めぐりの庭」の緑が広がる。既存植生を踏まえた植栽。
  • 南側外観。2、3階が透析室。道路を挟んだ南側に「めぐりの庭」の緑が広がる。既存植生を踏まえた植栽。
  • 透析室南側窓回り。天井高3,030mm。軒の出約2m。
  • 透析室。燃エンウッドの柱・梁。スパンは8m。
  • フィットネスガーデン「めぐりの庭」。*
  • 配置・平面図
  • 外構計画
  • 燃エンウッドと架構モデル
  • 断面詳細図
建築主:
医療法人社団中郷会
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
千葉県柏市
主要用途:
診療所(Ⅰ期)、小規模多機能型居宅介護施設(Ⅱ期)
構造:
RC造+木造+S造(Ⅰ期)、木造(Ⅱ期)
階数:
地上3階/塔屋1階(Ⅰ期)、地上1階(Ⅱ期)
敷地面積:
3,097.92㎡(Ⅰ期)、2,246.06㎡(Ⅱ期)
建築面積:
1,245.58㎡(Ⅰ期)、264.45㎡(Ⅱ期)
延床面積:
3,131.93㎡(Ⅰ期)、182.18㎡(Ⅱ期)
工事期間:
2015年1月〜2016年1月(Ⅰ期)
2017年3月〜2017年7月(Ⅱ期)
撮影:
島尾 望/エスエス、*宮下写真事務所
設計趣旨:
 人工透析120床の診療所である。豊かな地下水を透析水として、南側の緑地を景観として取り込み「森林浴のできるクリニック」をテーマに開放性の高い新しい透析空間を目指した。木の質感やぬくもり、癒し効果に着目して木造・木質化を図り、透析患者が身体だけでなく心も浄化されるような設えとした。透析室はカラマツによる耐火集成材「燃エンウッド」の柱・梁を門型状に連続して並べ、樹木が美しく立ち並ぶ森を想起させる内観とした。天井と外部軒天井はヒノキ羽目板を連続させて内外の広がりを演出すると共に、柔らかな木の香りで透析室を包む。透析ベッドからは、前庭と南隣地のフィットネスガーデン「めぐりの庭」の植栽越しに、既存の山林が緑の帯となって広がって見える。既存植栽や生態系を踏まえたランドスケープ計画を街区全体に展開することで、街区の統一感が生まれ、近隣住民の憩いの場ともなる安らぎあるまちなみをつくり出している。(吉岡 有美)
吉岡 有美(よしおか・ゆみ)
1976年 大阪府生まれ/1999年 京都大学工学部建築学科卒業/2001年 同大学院修了後、竹中工務店入社
菅原 努(すがわら・つとむ)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第3部門 設計2グループ長
1965年 東京都生まれ/1990年 東京大学工学部建築学科卒業後、竹中工務店入社
選考評:
 透析患者にとって治療の時間(週3回、1回5時間)をゆったりと気持ちよく過ごす場とすること。それが叶えられる病院に私は出会えた。病を得ても心は癒される。病院オーナーの理想と設計チームの力量によるものであり、こうした病院建築が経営的に成り立ち、スタッフや患者の支持を得て、今後増えていくことに期待する。病院に続く植栽の施された広場、近くには糖尿病外来も計画が始まっており、集合体として、このエリアが良好なまちなみを形成する可能性も評価した。
 水平に伸びやかに広がる透析室の木質空間は、インテリアや構造のみならず、外観をも構成し、田園風景の中で際立った存在感を示している。
 ベッドと医療器具の配置や収め方、空調設備に自然換気を加えて空気の質を整える等々、建築を形成するさまざまな機能がこのコンセプトのもとにまとめられており、ひとつの空間コンセプトを共有する徹底した姿勢が、新しい提案につながった。
 確かな技術を背景にさりげなく生まれた心温まる診療空間を優秀賞とします。(平倉 直子)
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家、平倉直子建築設計事務所主宰
1950年 東京都生まれ/日本女子大学住居学科卒業/日本女子大学、関東学院大学、東京大学、早稲田大学等の非常勤講師を歴任