House_IM──箱と自在な内の家
宮原建築設計室
第40回建築作品コンクール 戸建住宅部門優秀賞
施工:
(有)安松託建
建築主:
持田 涼子
所在地:
群馬県高崎市
主要用途:
戸建て住宅
構造:
木造
竣工:
2012年12月
撮影:
藤塚 光政
宮原 輝夫(みやはら・てるお)
1966年東京都生まれ/群馬大学大学院工学研究科博士課程後期単位取得退学/1999年宮原建築設計室設立 (代表)
谷口 尚子(たにぐち・なおこ)
東京家政学院大学家政学部住居学科卒業/2006年 宮原建築設計室入社
設計趣旨:
House_IM──箱と自在な内の家
「先の事は判らないが、今は収集してきた美しいものに囲まれて生活したい」。
依頼を受けた際はまだカップル(未婚)だったふたり。そして共にプロダクト・コレクターの施主は要望として、収集物を眺められるスペースと、結婚後も想定した生活様式の変化に対応できる柔軟な空間、さらにローコストを求めた。
私たちは、上面がすべてフラット(ステージ状)なRC造基礎と、外周部と中庭柱のみで成立する木構造を考えた。内部はすべて非構造部材で構築されているため、自由に再構築可能な空間を実現している。また、一般的な木造とする事はローコスト化に大きく寄与した。
House_IMでは移り変わる施主の生活のステージ毎に、今はカップルの住まいとして、後に夫婦の個室、子育てに必要なスペース、人にも開放できるギャラリースペース、さらには介護のためのスペースを想定しているが、一般の住宅においても適用可能な、汎用性が高い手法と考えている。 (宮原 輝夫/宮原建築設計室)
審査評:
高崎市の近郊住宅地の中で周辺の軒並に敢えて逆らって斜めに振った形でこの住宅は建てられている。一辺10M角で高さが4Mの箱が地上から50CM浮いたかたちで配置されていて、外壁は全面に左官鏝で雲のようなまだら模様を纏った壁で囲われ、上部にスリット状の高窓を配している以外に開口部はない。一見普通の住宅には見えずオフィスかスタジオの様にみえる。エキスパンドメタルで作られたスロープで導かれる玄関は壁に縦に切り込まれたスリットで木製の格子戸がしつらえられている。ロの字型の平面型は中央に中庭が設けられ充分な光が住居全体にいきわたっている。
外周部の全面が壁であるにもかかわらず、この中庭からの光と外周の高窓からの採光によって一日中安定した光に満ち溢れ落ち着いた居室が成立している。93㎡程の平屋建て全体がワンルームとなり全ての居室は高さ1.9Mのパーティションで仕切られ上部は解放されている。将来の様々な住まい方に対応するために水回りだけが固定されていてその他は自由にプランを展開できるように構成されている。地盤から50CM立ち上がったコンクリートスラブの上に10M角の木造外壁から、中庭の4隅の4本の柱に架構を渡して無柱空間を実現した。中庭に向かって傾斜する天井には照明その他の付属物は一切設けていないシンプルな構成が全ての居室から中庭に向うような意識を感じさせる。一見オフィス空間を思わせる様な室内が端整に納められたディテールと様々な工夫によって落ち着いた日常生活を実現できる新しい発見となっている。
(岡本 賢/(一社)日本建築美術工芸協会・会長)