little valley house
一級建築士事務所フラットハウス
第40回建築作品コンクール 戸建住宅部門優秀賞
施工:
長橋工務店
建築主:
九法 崇雄 九法 のぞみ
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
戸建て住宅
構造:
木造軸組構造
撮影:
太田拓実
設計趣旨:
静寂な住宅地で計画された2世帯住宅である。
2 世帯が緩やかに繋がることを意識してゾーニングを考えていった。l 階は親世帯、2 階、3 階は子世帯というベーシックな構成を基本としながら、2世帯の共有スペースとして建物の中心に中庭と、その中庭に面した書庫を挿入した。ご両親は2 階にアプローチしながらも、子世帯のスペースを通らずに中庭と書庫に訪れることができる。書庫とリビングは中庭を介して配置し、ごく自然なかたちで2 世帯が触れ合えるようにと考えた。中庭は2 階以上のボリュームをえぐるように作られ、床は芝で覆われているため、あたかも小さな山間の谷間にいるような包まれた感覚になる。
ご夫婦とご両親、これから大きくなっていくお子さんが、この小さな谷間のような中庭と書庫を通じて自然なつながりを楽しんでくれたらと考えた。(坂野 由典/一級建築士事務所フラットハウス)
審査評:
世田谷の閑静な住宅地に計画された二世帯住宅である。土地探しから参画したというプロジェクトのコンセプトは『両親』、『書籍』、『みどり』の三つだそうだ。一つ目は親夫婦が気持ちよく暮らせること。二つ目は4000冊の蔵書が見えるようにしまうこと。三つ目はみどりを楽しむ場所があることである。
敷地は北側と西側が道路で高度斜線に有利な30坪の整形地である。地方に住む親を呼び寄せて一緒に住む典型的な二世帯住宅であり、1階が親世帯で2階が子世帯というこれもごく一般的な住まい方であるが、2階にある書庫を独立させてどちらにも属さない空間としているところにポイントがある。書庫は外部から直接アクセスできる芝生の中庭を通して子世代のリビングルームに接続し、両親や近所の子供たちと自然に触れ合えるようになっている。
そして、内外装の各所に見られる細部のディテールも確りしており、特に、在来軸組工法による3階建て住宅を立体解析モデルにより生み出した大胆な空間構成や中庭に面した大きな開口部を既成のスチール鋼材を組み合わせて3.0m×2.5mという嵌め殺しのサッシュとして安価に仕上げたディテールの組み立てなどは高く評価できる。
(西倉 努/(株)ユニバァサル設計・代表取締役)