働き方改革を考える 第15回
異業種の働き方改革──コロナ下で見えてくる課題
寺田 宏(東京都建築士事務所協会副会長、働き方改革推進ワーキング主査、清水建設株式会社一級建築士事務所)
お話をうかがった新川佐和子さん。株式会社西鉄ホテルズ「ソラリア西鉄ホテル銀座」、「西鉄イン日本橋」の総支配人。
「ソラリア西鉄ホテル銀座」(左)と「西鉄イン日本橋」(右)。

今回は株式会社西鉄ホテルズ「ソラリア西鉄ホテル銀座」、「西鉄イン日本橋」の総支配人、新川佐和子さんにヒヤリングをお願いしました。宿泊業界は24時間・365日稼働の業界です。女性の活躍もかなり進んでいる一方で、男女を問わず働く条件の厳しい業界と想像できました。今回はその業界で現場の総責任者として活躍されている新川さんにヒヤリングをお願いしました。

マネジメント層でも女性が活躍
 西鉄ホテルズでも新川総支配人の担当されているホテルは宿泊特化型で、2カ所合わせて37名の部下と業務を進めておられます。西鉄ホテルズは全職員約1,000名、うち約半分が女性です。18店舗を全国に展開されていますが、その東京の中心地のホテルを2カ所兼任でトップマネジメントされているということで、そのご苦労が察しできます。ちなみに18店舗中5店舗(新川さんが2店舗兼任されている)が女性支配人、若い方は30歳代ということで、すでに男女が協働して活躍される業界であることと、そのマネジメント層でも女性が大きく活躍されていることがわかりました。
マルチタスクが求められる業務
 勤務は日勤と夜勤の2シフト、それぞれ実働は8時間、実質週休2日制で計画的にシフトが組まれ休日取得、残業抑制がなされているとのことです。われわれが想像する残業の多いというイメージでは現状はないようです。産休も3カ月、育休は2歳まで、介護休などの制度も充実しており、今後産休の3歳までの延長、時短勤務のさらなる充実、などを検討中とのことです。働きかたは進んだ現状を伺えました。
 業務は各個人にマルチタスクが要求される中、同時にお客様に対してホスピタリティが求められる業種で、常に顧客と接点を持って進める業務とお聞きしました。現在では海外にも進出され、グローバルな展開も視野に入れてのビジネスであることがうかがえました。(マルチタスク:いくつかの異なる業務をひとりがこなす体制)
求人には明確なキャリアパスを示すことが必要
 昇進は試験のハードルが何段階かありますが、男女差なく評価され、現在は産休・育休明けの方も一線で復帰して業務につかれているとのことです。ちなみに新川さんは入社されて12年間で現在のポジションということですが、その努力と成果が実を結ぶ企業ということが推察できます。
 新規就職者募集はやはり苦労されているとのことでした。そのために、キャリアパスの明確化、ステップアップのための目標設定などを現在社内で検討中とのことでした。
 建築設計者と少し異なりますが、若い世代に明確なキャリアパスを示すことが求人の際に必要であることがわかります。また、マルチタスクの要求がありましたが、この点でもわれわれ建築設計者がひとつの職能の専門性といいつつもマルチな情報分析を必要とする職種と伺えることから共通点を感じました。
現場が仕事であること
 コロナ下で新川さんのホテルも平常時は80%を超える高稼働率が10%以下となり大変な期間を過ごされたようです。在宅勤務制度で職員対応はなされたようですが、現場が仕事のホテル業界としては、やはりマネジャーは別として現場の担当業務が在宅勤務で代行できることは少なかったようで、われわれの工事監理、調査などの業務が在宅でできないとこと共通の悩みがあるようです。
 インバウンド需要が戻る期待も不透明ですから、新たな製品の企画商品の開発も模索されているようです。宿泊業界は現場が唯一の仕事場であり、どのような多様な働き方をされたのか、あるいはこれからのアフターコロナの時代に需要がまだまだ不透明と想像できます。その中でやはり現場中心に男女共同参画の方針を順調に進めて、若い人に職場の魅力を発信する努力を続けておられること、またいち早く業績向上の企画に対応して業界をけん引しておられることに感心したしました。
 また、新川さんがお若く、活き活きと活躍されていることに私としては元気をもらった結果になりました。若い意気込みとともにこれからの業績に向けて活躍されていることが感じ取れた1時間でした。
寺田 宏(てらだ・ひろし)
東京都建築士事務所協会副会長、団体課題別人材力支援事業運営委員会委員長、清水建設株式会社一級建築士事務所
1956年 大阪府生まれ/京都大学大学院修士課程(建築学専攻)修了/1980年清水建設株式会社入社、清水建設株式会社一級建築士事務所/現在、同建築営業本部副本部長/中央支部