団体別採用力スパイラルアップ事業 働き方改革・女性の活躍推進セミナー 第4回 女性活躍推進セミナー
令和2(2020)年11月27日(金)14:00~16:00、Webセミナー
横村 隆子(東京都建築士事務所協会会長補佐、団体別採用力スパイラスアップ事業WG委員、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計)
セミナーで紹介された女性活躍推進への取り組みの図

 最終回は、働き方改革で喫緊の課題といわれる「女性活躍推進」がテーマ。毎回講師をしていただている田中豪先生より、中小規模の建築設計事務所にも適用される働き方改革関連法、女性活躍推進法などを踏まえ、業界にとって影響が大きいと思われる点の目的や考え方を解説いただいた。

働く女性の現状と女性管理職登用について
 第1回で解説された『労働市場の未来統計2030』(パーソル総合研究所・中央大学、2019年、https://rc.persol-group.co.jp/roudou2030/)を振り返り、国の目標である令和2(2020)年までに指導的地位の女性比率30%が達成されず、先送りになり、女性管理職の割合も横ばい状態の現状分析、女性管理職登用の意識では『女性管理職への育成・登用に関する調査』(三菱リサーチ&コンサルティング、2020年、https://www.murc.jp/report/rc/policy_rearch/politics/seiken_200525/)の男女比較のデータ紹介と合わせ、女性管理職の登用問題が解説された。女性の調査回答が多い順の事項は以下の内容である。
【管理職になりたくない、なれない理由】
① 家庭との両立が難しい
② 報酬が業務量や責任の重さに見合わない
③ 会社にいる同性の管理職を見てなりたいと思わない
④ ロールモデルとなるような同性の管理職がいない
【管理職になるのに役立った経験】
① 家族の理解・サポート
② 会社が提供する研修や制度
③ 同性のロールモデル
【女性非管理職の自己評価が男性より低い自身の能力評価分野】
・マネージメント力・部下育成力・指導力
これまでの日本・そして意識改革の必要性
 働き方への女性の社会的意識は、専業主婦主流の大正時代から、女性が社会進出している現在まで、「働きたいけど育児と仕事は両立できない、キャリアアップはできないだろう」から「育児における女性の役割は大きいが、仕事をやめてひとりでやるものではない、子育てしながらでもスキルアップはできる」に変化した。経営者側も「女性は子育てがあるから責任の重い仕事は大変だろう」から「子育てをしながらでも希望する範囲で働いてほしい」に変化し、経営者の社会的動向や知識習得の必要性が挙げられ、意識改革と女性活躍推進取り組みが図と共に説明された。図を記すので参考にしていただきたい。
スキルアップとマネジメント/環境整備
 一方、女性管理職登用の障壁でもあるスタッフの責任感と自信(意欲)の向上の鍵として、キャリアアップや資格取得、男女のライフステージ別支援制度などのマネジメントの見える化で、コロナ後も見据えた指針が解説された。併せて「役職にある属性の者」が就くことが当たり前となる少数派不利益是正のクオター制度や、清潔感のあるオフィス整備についても紹介された。
ハラスメント防止対策──令和4(2022)年4月から義務化・労働施策総合推進法
 男女雇用均等法(2018年改正)、育児介護休業法(2017年改正)、職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメント防止対策義務など、就業規則の規定が雇用管理上責任から必要であり、ハラスメント防止対策義務化(雇用者1人以上)が令和4(2022)年4月から始まることが紹介された。

 まとめとして、男女関係なく、人それぞれの感じ方や考え方が違うのは当たり前であることをしっかり認識した上で、大切なのは「経営者⇔スタッフ」、「同僚」双方の理解と、個々に合わせたアプローチの重要性が提唱された。

 WG主査の寺田宏副会長の挨拶では、建築系の大学卒業生女性比率は学会の調べで30%を超える現在、建築設計界でも早期に指導的地位の女性比率を上げ、補填といった意味ではなく男女フラットに協働を目指したいと話があった。
毎回の委員発表では、鈴鹿委員から、コロナ禍による在宅勤務で、妻の家事負担増の話を聞いた。本来、家事と家庭運営は別である。家事は作業であり、家庭を運営する段取りなど、気働きの見えない部分の意識が見落とされている。小さな社会でもある家庭の中にも、社会の隠された本質が見えているかもしれないと、田中先生のセミナーでも示されたように、男女の課題である意識改革と双方の理解の大切さを感じた話であった。
 本事業シリーズセミナーで経営者の働き方改革の基礎を理解する素晴らしい機会が得られ、女性はもとより若者が業界に夢を託せるいっそうの環境整備はWG全委員の願いでもあることなど、泉晃子委員のまとめで終了した。
横村 隆子(よこむら・たかこ)
東京都建築士事務所協会会長補佐、団体別採用力スパイラスアップ事業WG委員、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計
1955年 東京生まれ/1977年 日本大学理工学部建築学科卒業/一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計/足立支部