足立支部活動報告
足立支部|足立区まちづくりカウンセラーと、第29回あだちまちづくりフォーラム
斎藤 智司(東京都建築士事務所協会足立支部支部、株式会社斎藤建築事務所)
村田 雅利(東京都建築士事務所協会足立支部、青年部会部会長、株式会社村田建築事務所)
田中 光義(東京都建築士事務所協会足立支部、田中一級建築士事務所)
横村 隆子(東京都建築士事務所協会会長補佐、足立支部、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計)
牛込 哲也(東京都建築士事務所協会足立支部支部長、有限会社牛込建築設計事務所)
1. 足立区まちづくり推進委員会「第29回あだちまちくりフォーラム」事業報告書表紙。
 東京都建築士事務所協会足立支部のまちづくりカウンセラー活動を紹介する。足立区ユニバーサルデザインのまちづくり条例に基づき、住民主体で協働・協創によるまちづくりを推進していくために「足立区まちづくり推進委員会」がある。構成は町会自治会連合、商店街振興組合連合会、女性団体連合会、中学校PTA連合会、他団体等から選出された地域のまちづくり相談役のまちづくり推進委員37名と、まちづくりカウンセラー24名。そこに、まちづくりに関する豊富な知識と経験を持つ専門家として、東京都建築士事務所協会足立支部、東京土地家屋調査士会、研究者、公募カウンセラー、他団体等が、まちづくり活動を補佐する。
 以上のメンバーで3年ごとに「あだちまちづくりフォーラム」(図1)を開催して、地域特性を活かした各地区部会の研究結果を発表し、招いた有名講師の講評やディスカッションを行った。また、年に1回まちづくりの先進事例視察会の研修を行うなど、足立区に住んで良かったと思えるまちづくりへ向けた活動を続けている。当支部が参加した5地区の部会活動を以下に紹介する。
 当支部は、昭和60(1985)年に発足した前身の「まちづくり推進連絡会」の設立に協力している。当時足立支部は75事務所が所属し、会員向けに各種情報発信を行い、足立区都市環境部まちづくり課(現:都市建設部市街地整備室まちづくり課)や、足立消防三署からの情報伝達、また、関連のニュースを会員に流してきた「支部だより」や、それを大きくした「足立の建築家」を発行してきた歴史がある。今も支部会員が足立区のさまざまなまちづくりに参加し活動している。(斎藤 智司)
2. 下町人情、ぶらり旅。
3. メンバー推進委員・カウンセラー千社札。
4.千住の桜並木。
千住地区部会
 平成29(2017)年度からの3年間、テーマに添ってまち歩きを行い、都市計画マスタープラン提言内容をもとに研究、地域の課題について情報を共有して、区へ研究結果の提案を行った。
 提案において、景観については無電柱化の促進、老木対策、違反広告の一掃を挙げ、景観対策は、防災の面でもとても重要であることに気付かされた。地区の特性として、千住は荒川と隅田川に挟まれた地区で、水と緑の自然が多くある中、大雨水害の際にどう災害に備えるのか、どう避難するのかなど、多くの課題が残されている。今後、水辺のあり方と共に考えて行きたい。
 また、5つの大学誘致で、まちの魅力や賑わいが創出され、地域経済の活性化や足立区のイメージアップとなってきている。
 千住はかつて江戸四宿のひとつで「千住品川むらさきのたもとなり」と川柳で読まれる町であった。旧日光街道に残された旧家、旧跡、神社仏閣等の名所を継承しながら、下町らしい情緒ある路地文化、そこに残る人情など、目に見えないものも次世代に伝えていける環境づくりの議論を地区全体で重ねたい(図2 – 4)。(村田 雅利)
5. まちづくりの一歩、4K!
6. 中川遠景。
7. 北綾瀬駅。
東部地区部会
 東部地区部会は、綾瀬地区、北綾瀬地区、中川地区の地域の課題として3年間、①綾瀬地区開発について、②北綾瀬駅周辺のまちづくりについて、③地下鉄8号線について、④中川の防災について、まち歩き・調査を行い、研究結果の提案を行った。
 ①綾瀬地区、②北綾瀬駅周辺については、現在進められている開発・まちづくりによる利便性の向上により今後ますます利用の需要が高まる地区として、利活用等の提案を行った。また、④中川の防災については、大雨水害の対策に取り組んでいる地元町会自治会の活動について調査を行ってきた。昨年(令和元/2019年)の台風19号上陸の際の災害タイムラインによる当日の活動は、自助・共助・公助の連携の大切さが強く心に残るものであった。
 まちづくりを一歩ずつ進めるには、区民への発信、防災意識向上による関心(Kanshin)、東部地区の魅力再発見による感動(Kando)、勉強会等の調査・研究による観察(Kansatu)、区民参加による魅力的で安心安全なまちづくり行動(Kodo)の4Kが重要である。今後も推進していきたい(図5 – 6)。(田中 光義)
8. 長期的課題解決アイデア。
あだち中央地区部会
 3年間のテーマは、「次世代へ、又その先へ今の思いを繋ぐまちづくり」と題し、梅島駅周辺のまちづくり活動を行った。まち歩きと商店街のヒヤリングや調査を行い、駅周辺の特色と課題を抽出した。梅島駅前は、商店も建ち並び賑わいを見せているが、旧日光街道沿いに面しているため交通量も多く、歩道の狭さ、歩道と車道の段差、街灯、景観の不統一性、電柱等とさまざまなことがわかった。部会の中で、多数の課題の中からディスカッションの上、長期的目標として、一般車両との調整も視野に含め、歩道の拡幅と「バスレーン化」による解決策を立てた。短期的な課題解決策として、電柱や自転車、街灯の問題を商店街の方たちとまち歩きを行い、商店街の努力で解決可能な目標を掲げ、改善点を互いに認識することができた。中期的には自治体との協議での解決策の可能性を洗い出し、長期的には周辺の課題実現向けての取り組みと、道路整備の現実的なアイディアを図示し、研究結果を発表した(図8)。(小宮 和子)
9. 「花の散歩路」区と町会の協働活動。
あだち北西地区部会
 「花と緑と水辺のネットワーク&町会自治会サードプレイス構想」で健康推進、散歩したくなるまちづくり活動を行った。
 初年度、町会自治会員数減少、役員のなり手不足、PTA活動等の衰退に加助できることを検討し、「地域自慢・地域愛を育む」ことで活性化を考えようとなった。
 次年度、地域資源や大切にしているものを探すことから始まった。地区はまだ田畑があり、荒川の水辺、舎人公園など大小の公園や緑道、桜の歴史的資産等、生活の中で楽しみたい自然が多く点在している。また、「花の散歩路」という舎人ライナー開通時(平成20/2008年)から区と町会が協働で通勤路の花壇管理を行う「ひと財産」があることがわかり、それらの結びつけ、地域の人が誇れ、さらに他の地域からも人がたくさん来れる資産ができればと、散歩ネットワークのマップづくりを行った(図9)。
 3年目は散歩中に気軽に立寄れるサードプレイスの憩いの場、「あだカフェ」がほしいと、町会や区施設等をマップに反映した。地域活動と財産を守り、顔が見える災害に強い安全安心で住みやすいまちづくりの提案となった。(横村 隆子)
10. 西新井大師お砂踏み結願参り。
11. 大師道起点。
12. 盆踊りBBQパーティ。
扇・西新井地区部会
 「西新井大師を中心としたその界隈の賑わい」をテーマとし、勧誘・環境整備・歴史的古道跡を物語にして街を繋ぐ。この3点により西新井大師(図10)を観光資源として活かせると考えた。
 先ずは大師を理解するため、江戸時代から多くあった大師道のひとつを約10km、3時間半かけて歩き、普段気づかなかった道標や石碑、祠を見ることができた(図11)。また僧侶に境内案内をお願いし、歴史を含め興味深い話が聞けた。参拝者にアンケートを行ったところ、区内在住で女性、70歳代の方々が最も多いという結果が得られた。
 今後は海外観光客も含め幅広い方々に訪れてほしいとの思いから、近隣ホテルの海外交流手法を学ばせていただき、西新井の大師を含めた良さを知ってもらうよう、住民と海外来訪客のために盆踊りを兼ねたBBQパーティ(図12)を開催した。この模様はテレビ局の取材を受けニュース番組で放送された。掲げたテーマ実現に導くため、大師のお砂踏み結願や行事の広報、外国人観光客や子どもたちと神輿や餅つき等イベントによる体験交流を増やし、インフラ整備、分かりやすい案内を用意するとの案が得られた。(牛込 哲也)
斎藤 智司(さいとう・ともじ)
東京都建築士事務所協会足立支部、株式会社斎藤建築事務所
1935年 静岡県生まれ/1957年 日本大学卒業後、株式会社久保工務店入社/1966年 同社退社/1967年 斎藤建築事務所設立/1971年 株式会社斎藤建築事務所代表取締役就任/2018年 株式会社斎藤建築事務所取締役会長、現在に至る
村田 雅利(むらた・まさとし)
東京都建築士事務所協会青年部会部会長、足立支部、株式会社村田建築事務所
1972年生まれ/1994年日本工業大学工学部建築学科卒業
田中 光義(たなか・みつよし)
東京都建築士事務所協会会員委員会、足立支部、田中一級建築士事務所
1956年 東京都生まれ/1979年 日本大学理工学部卒業/1983年 田中一級建築士事務所入社/2020年 所長就任、現在に至る。
横村 隆子(よこむら・たかこ)
東京都建築士事務所協会会長補佐、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計
1955年 東京生まれ/1977年 日本大学理工学部建築学科卒業/一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計/足立支部
牛込 哲也(うしごめ・てつや)
東京都建築士事務所協会足立支部支部長、有限会社牛込建築設計事務所
1965年 東京都生まれ/2005年 有限会社牛込建築設計事務所 代表取締役就任/2019年 一般社団法人東京都建築士事務所協会足立支部支部長 就任、現在に至る