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泉 晃子(東京都建築士事務所協会理事、株式会社タムラ設計)
梅雨が明けると、いよいよ盛夏の訪れです。この頃を表す「万緑」という季語がありますが、初夏の新緑よりもさらに木々の緑が深まり強い夏の生命力溢れる緑を想像させます。新型コロナウィルスに見舞われた今年の前半の切迫感はやや収まったものの、秋から冬には、再び第2波がやってくるのではないかといわれています。暑さの中ですが、日陰を探して「万緑」の中に夏を感じてみるのもいいでしょう。
外出自粛の期間中、われわれの働き方は急速に否応なく変えられてきました。『コア東京』の編集委員会もWeb会議が続き、はじめはたいへん不安に感じましたが、ここ何か月間が過ぎて、毎月の雑誌が予定通り皆様のお手元に届けられホッとしています。
 まだ支部の活動がほとんどない中ですが、連載は続きますので引き続きお楽しみください。働き方改革の緊急企画として、はじめてWebでセミナーを開催し、その内容が7月号に掲載されました。ご参考になりましたでしょうか。支部活動が今まで通りになり、報告が掲載できるようになることを願っています。
私は外出自粛の期間に書類の整理と少しばかり断捨離もできました。時代は違うのですが、アルベールカミユの「ペスト」を思い出しました。天災や疫病など不条理ともいうべき事態に耐えて乗り越えていくというテーマは現代にも通じ、共感を得ることができる作品であることに思いを馳せました。「一日一生」は天台宗の大阿闍梨酒井雄哉住職の著書です。一日一日身の丈に合ったことを毎日くるくる繰り返す。それが歩行であり千日回峰行=巡礼であったことの体験が書かれていました。前者は海と太陽に救いを見出し、後者は歩き続けるうちに野の草花が微笑みかけるようで自然というものに心が沁み渡ってくると書かれています。自然の中に救いを見出して自分を奮い立たせていく心を学ばせてもらいました。
そしてウイズ・コロナの時期がきて大人の働き方が変わりましたが、子どもたちにも環境の変化があり、学校・幼稚園などに分散登校し、集まって遊んではいけない、大声を出さないで遊ぶことなどが条件つけられました。子どもたちはどのように受け止めて過ごしているのだろうか、その心身に及ぶ影響があるかもしれないと気がかりです。
 わが家の前の水の流れる公園は、例年なら裸足で水を掛け合って楽しむ子どもたちで賑やかなのですが、今年は放水をしないようです。子どもたちのためにも、大人も何か工夫して夏の楽しみを見つけねばなりませんね。
泉 晃子(いずみ・あきこ)
東京都建築士事務所協会理事、株式会社タムラ設計
1944年 富山県生まれ/1967年 日本女子大学住居学科卒業/1995年(株)タムラ設計入社/現在、同顧問/新宿支部
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