働き方改革を考える 第2回
中堅事務所の先駆的事例を訪ねる──コミュニケーションとフラットな環境づくり
横村 隆子(東京都建築士事務所協会会長補佐、働き方改革推進ワーキンググループ委員)
フラットな雰囲気の中行われている業務報告会。
(写真提供:窪田建築都市研究所(有))
カフェカウンターとスタッフ。
(写真提供:窪田建築都市研究所(有))
 第2回は、建築とインテリア設計を中心領域としている有限会社窪田建築都市研究所(2003年設立/目黒支部)を訪ねた。
 「建築で街に誇りをつくり、商業で街を潤す」をビジョンに活動され、総勢15名(管理職2名、男性技術系スタッフ9名、女性技術系スタッフ3名、広報・秘書の女性スタッフ1名)で1/4が女性スタッフである。当日は取締役チーフアーキテクトの宮尾宣央さん、広報・秘書の佐藤未知子さんに対応いただいた。
男女差のないフラットな関係づくり
 宮尾さんより、「デザインが好き! 人とつながることが好き! でコミュニケーションを大切に考え、一緒にものをつくり上げるメンバーを性別に関係なく採用し、フラットな環境づくりを心がけています」と、広報の佐藤さんからは人が財産で「人があって・会社があり・仕事を生む」と説明があった。具体的には、2週に1度の業務報告の後に、全員が5分間のプレゼンを行い、スタッフの興味、こだわりを話すコミュニケーションの機会を設けて、プレゼン力UPにも役立てているようである。
 事務所内にはカフェカウンターがあり、スタッフ同士のコミュニケーションが取りやすい仕事環境が整えられており、スタッフの誕生日会の開催や、毎年、事務所内でお客様をご招待しての目黒川花見会が行われている。また、今年は会社のリクリエーションでやりたいことの希望を募り、家族も参加で陶芸に挑戦するなど、スタッフ同士のコミュニケーションが取りやすくなるよう多くの工夫があり、フラットな働き方の空気感が伝わってきた。

 HPは外部発信はもちろんのこと、内部の意識や向かうべき方向性を確認することにも意味がある
 宮尾さんは「今年になってHPを新しくしたのは、外部への発信はもちろんのこと、自分たちのVISIONを明確にすることで内部の意識も同じ方向へ向いているか再確認を行うことが重要だと感じたから」と語られ、佐藤さんがPCを片手にHPを使い、仕事のこと、働き方のことをとても解りやすく話してくれた。情報化社会だからこそ、丁寧に「見える化」されたHPからは、仕事の完成形を並べるだけではない、日々仕事を行なっているスタッフの思いが伝わるものとなっている。誰にでもわかるフラットな説明が行える建築畑でない文系出身の広報専門スタッフの役割の大きさを感じた。
 訪問前に拝見したスタッフ紹介HPで「早借くんの場合/2018年入社/4件担当」と「見て盗む、気軽に相談できる環境、相談しながら進める」とあり、実際に新入社員が働く様子が具体的に見え、若いスタッフがやりがいを感じ、意欲的にスキルアップできる体制が成り立っていると感じた。
知的創造業務における働き方改革とライフイベントの今後
 企画業務にも力を注いでいる仕事の性格から、働き方改革の時間管理型規制はなじまない点が多く、就業規則を検討中とのことだった。
 現在、建築チームとインテリアチームの男性チーフアーキテクト2名が子育て中で、保育園への送迎、学校行事にも参加し、男女差なく子育てが行われている。スタッフ年齢の若い事務所だけに、男性スタッフも子育てを実践し楽しみ、ライフイベントによる働き方改革の課題にいっそう取り組んでほしいと思った。
 「男女差は当事務所にはありません」との言葉通り、女性の働き方改革に関する質問が愚問と感じるほどの働き方が実践され、若いデザイナーが才能を磨き、楽しく働け、デザインを好きになる環境と関係性が構築されていた。
訪問委員:佐藤 孝子(杉並支部)、横村 隆子(足立支部)
横村 隆子(よこむら・たかこ)
東京都建築士事務所協会会長補佐、働き方改革推進ワーキンググループ委員、一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計
1955年 東京生まれ/1977年 日本大学理工学部建築学科卒業/一級建築士事務所横村隆子YHT環境設計/足立支部