『建築構造設計指針2019』の発行
東京都建築構造行政連絡会監修、東京都建築士事務所協会刊
藤村 勝(東京都建築士事務所協会構造技術専門委員会委員長、東京都建築安全支援協会構造技術統括)
本書の特徴
『建築構造設計指針』は昭和41(1966)年の初版より、構造設計と建築確認審査が円滑に行われるように、一般社団法人東京都建築士事務所協会と東京都建築構造行政連絡会が協力して執筆しているもので、都内だけでなく全国での実務書として活用されている。2015年に『建築物の構造関係技術基準解説書』が改訂され、2018年には『建築構造審査・検査要領 実務編 審査マニュアル 2018年版』(日本建築行政会議編、一般財団法人建築行政情報センター刊)が出版され、これらへの整合化を図るために、本書も9年ぶりに改定することとなった。本書の第1章から第10章は、建築物の各構造種別ごとに建築基準法関連規定と日本建築学会の計算基準などの最新の考え方や規定を図表も用いて詳しく解説している。
第11章と第12章では用途変更や増築など問い合わせが多い事案を中心に構造審査要領をまとめるとともに、密集市街地に建つ建築物の構造設計として望ましい性能などを明示している。
また、巻末の付録には実務に有用な資料として、鋼材の断面性能表、継手基準、標準図とその解説などを添付している。
発行概要
- 体裁:
- A4版、約850頁
- 価格:
- 11,000円(税別)
- 発行日:
- 平成31(2019)年4月予定
- 講習会:
- 平成31(2019)年5月27日(月)、6月4日(火)、6月27日(木)開催
- 販売:
- 全国有名書店、東京都建築士事務所協会(新宿)(会員割引き有り)
本書の構成
1章 構造設計
1章 構造設計
- 建築物に必要な構造性能と耐震クライテリア
- 構造種別と基礎形式の選定
- 構造計算方法の種類と特徴
- 構造関係規定の法改正の内容
2章 構造設計要領
- 材料の許容応力度と材料強度
- 荷重および外力、応力解析、保有水平耐力計算
- 高さ45m超建物、塔状建物、天井、車路、エスカレーター等の耐震設計
3章 木構造
- 木構造の種類、木材の性質、木造の構造計算、混構造
- 軸組の仕様、壁量規定、軸組量の計算、継手、仕口、金物
4章 補強コンクリートブロック造
- 補強コンクリートブロック造、併用構造、帳壁、補強コンクリートブロック塀
5章 鉄骨造
- 鋼板の板厚と適用基準
- 鋼材種の規格降伏点強度
- 部材の接合部、柱脚の設計、保有水平耐力の計算、設計の要点
6章 鉄筋コンクリート造
- 設計ルートごとの応力解析の方法、せん断破壊
- 付着割裂破壊の防止のための保証設計
- 新・旧RC規準の比較表と使い分け
7章 壁式鉄筋コンクリート造
- 階数と階高に応じた設計フロー、許容応力度設計、保有水平耐力計算
8章 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 構造計画における留意点、各部位の設計、保有水平耐力計算、納まり
9章 擁壁
- 設計に係わる法令、設計法、構造計算例、標準図
10章 基礎
- 設計方針、基礎構造の選定、杭基礎の分類と選定、液状化対策
11章 構造審査要領
- 法令、告示、参考通達一覧、用途変更、仮設建築物、土木複合施設、増築、全体計画認定、擁壁、耐震改修促進法認定の構造審査
12章 東京の地域特性等を考慮した建築構造における確認審査の要領
- 中高層建築物の審査要領
- 塔状建築物等審査要領
- 基礎構造審査要領
- 高強度コンクリート審査要領
資料
- 各種鋼材の許容応力度
- 形鋼の断面性能表
- 継手基準
- 仕口部耐力表
- 引張筋かい設計図表
- 構造標準図
建築構造設計指針2019の改定の概要
1章 構造設計
1章 構造設計
- 建築物の構成要素ごとの構造設計の係わりをまとめた。
- 現行法が求める耐震性能を詳しく解説し、この解説に係わるRC造、S造、木造の被害ランクの定義を図解し明確にした。
- 密集市街地の建物に必要な耐震性能として、保有水平耐力の割増値の根拠を示した。
- 機能継続に必要な地震被害の抑制に係わり、大地震時の変形の算出方法と変形制限値の目安をまとめた。
2章 構造設計要領
- 保有水平耐力計算における崩壊メカニズムや基礎浮上りの扱いに係わる原則について追記した。
- カットオフ筋などに対する付着割裂破壊等の防止について、耐震設計ルート(1~3)や構造特性係数(Ds)に応じた検討方法を追記した。
- 耐震設計における目標性能と目標性能に応じた保有水平耐力の割増し係数について追記した。
- 高さ45m超建物、塔状建物、天井、車路、エスカレーター等の耐震設計の要点をまとめた。
- 構造計算方法の変遷と法規定への影響についてまとめ、今後の耐震設計の課題を整理した。
3章 木構造
- 木構造の体系について見直し、CLTなどの新しい工法を追加した。
- 構造計画に液状化対策などを追記した。
- 木造建物、混構造建物の構造設計フローをより詳しい内容に見直した。
- 直下率、床倍率などの解説、エンジニアードウッドなど新材料、工法などについて追記した。
4章 補強コンクリートブロック造
- 建築基準法施行令に基づく規定と、日本建築学会の設計規準(メーソンリー編)に基づく規定の区分を明確にした。
- 補強コンクリートブロック塀について、施行令による仕様規定、告示による計算規定、日本建築学会のコンクリートブロック塀設計規準の仕様規定を、区分してまとめた。
5章 鉄骨造
- 鋼板の板厚に応じて適用すべき設計基準を明確化した。
- 特殊な鋼材種も含めて、規格降伏点強度と基準強度(F値)を整理した。
6章 鉄筋コンクリート造
- 応力解析で地盤ばねの考慮が必要な場合について追記した。
- 付着割裂破壊の防止について、強度型、靭性型建物別に考え方と検討方法を整理した。
7章 壁式鉄筋コンクリート造
- 壁の平均せん断応力度の標準値などを、建築学会の規準に基づき見直した。
8章 鉄骨鉄筋コンクリート造
- SRC造の建築基準法上の位置付けと、日本建築学会合成構造設計規準による合成構造の体系の中での位置付け、を整理した。
9章 擁壁
- 擁壁に係わる建築基準法、宅地造成等規制法施行令、東京都建築安全条例の規定を整理した。
- 擁壁の設計例について、背面土の内部摩擦角、支持地盤の許容応力度、擁壁高さをパラメーターに、反T型、L型、逆L型擁壁について15例の構造計算書、12例の標準図を新たにまとめた。
10章 基礎構造
- 杭工法の選定表について、最新の情報に基づき見直した。
- 液状化対策の原理と工法例をまとめた。
11章 構造審査要領 *1
- 旧第11章「法令・告示・参考通達等」を「構造審査要領」に改め、再構成した。
- 用途変更や増築など、建築主や設計者からの問い合わせが多い事案を中心に、建築確認審査を円滑に行うための構造審査要領としてまとめた。
12章 東京の地域特性等を考慮した建築構造における確認審査の要領 *1
- 旧第12章「審査要領」を「東京の地域特性等を考慮した建築構造における確認審査要領」に改め、再構成した。
- 「中高層建築物の審査要領」では、規定をできるだけ性能規定化するとともに、チェックシートを満たさない場合に必要となる検討などを明確化した。
資料
- 旧資料5:H形鋼梁の横補剛と最大スパンの表は削除した。
- 資料8:JISターンバックル筋交いの計算図表は、JISの改訂などに整合させて見直した。
- 資料9:構造設計特記仕様および標準図は最新版に差し替えた。
*1 東京都建築構造行政連絡会 執筆
藤村 勝(ふじむら・まさる)
1949年 長野県生まれ/1972年 日本大学理工学部建築学科卒業後、竹中工務店東京本店設計部入社/現在、東京都建築安全支援協会構造技術統括
カテゴリー:東京都建築士事務所協会関連、建築法規 / 行政