支部海外研修旅行──シンガポールの最新事情
中央支部|平成30(2018)年11月30日(金)~12月4日(火)
野澤 幸弘(東京都建築士事務所協会中央支部、支部監事、(株)泉創建エンジニアリング)
シンガポール・フライヤーの中で。
マリーナベイ・サンズの屋上にて。
セントーサ島にて。
ガーデン・バイ・ザ・ベイにて。
新国立がんセンターの現場にて。
 中央支部ではこのたび初めての海外研修を行った。他支部の参加も得て総勢10名により、シンガポールの統合型リゾート(IR)施設の現状と、清水建設(株)が現在施工中の「新国立がんセンター」を見学させていただきBIMを活用した建築設計手法の最新事情を視察してきた。今回の海外研修は幹事の坪井工業(株)金森宏三さんの企画である。
統合型リゾート施設の現状
 平成30(2018)年11月30日(金)の夜羽田空港に集合し、夜行便で12月1日(土)の早朝にチャンギ国際空港に到着した。眠い目をこすりながら先ず向かったのがアジア最大の観覧車である「シンガポール・フライヤー」(2008年、黒川紀章建築都市設計事務所)。発展する街の概要を上から掴んだ。次に橋を渡り対岸にある統合型リゾート施設である「マリーナベイ・サンズ」(2010年、モシェ・サフディ)に行き、再び展望台から市内を一望。地下のショッピングモール内で飲茶を食べながら、この不思議な建物の構造談議に花を咲かせた。
 その後隣接する埋立地につくられた未来型植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」(2012年)を散策した。園内には遊歩道が整備され、外より涼しい温室ではクリスマスのデコレーションも飾られていて、観光客を飽きさせない工夫がしてあった。夜は、名物のチリクラブを悪戦苦闘しながら堪能した。
 12月2日(日)は、朝からチャイナタウンに行き、華僑とヒンズーの寺院建築を見学した後、セントーサ島にあるもうひとつの統合型リゾート施設「リゾート・ワールド・セントーサ」(2010年開業)を見学した。島内には、今回訪れた「シー・アクアリウム」(2012年)やショッピングモールの他にも、カジノ、遊園地、ホテル、劇場、ビーチなどがあり、これらをモノレールやバスが結んでいる。統合型リゾート施設というと、日本ではカジノの賛否のみが注目されがちだが、シンガポールではカジノの存在感を感じさせないほど多くのアトラクションがあり、みどころ満載であった。
BIMを活用した建築設計手法の最新事情
 12月3日(月)は、シンガポールの建築現場を視察した。清水建設(株)が現在施工中の「新国立がんセンター」(地上24階地下4階、延べ約116,000㎡、工期36.5カ月)の工事現場において、牛頭豊所長、柳生泰宏副所長にご対応いただき、工事概要、体制、進捗状況、BIMを活用した工事の進め方について説明を聞いた。BIM室では、BIMマネージャーのリーダーシップの下、44名のエンジニアがPCと格闘していた。現場事務所の5階には客先承認のためのモックアップルームが置かれ、図面やBIMとの整合を確認しながら工事を進めているとのことであった。次に実際の工事現場を見学させてもらった。現場には、平面図面や作業手順と共にBIM図面が掲示され、作業員がいつでも作業内容を確認できるように配慮されていた。工事現場見学後は、弁当昼食をとりながら活発な質疑応答時間となった。
 シンガポールでは、ITを重視する国家戦略の一環として2000㎡以上のすべての建築物について確認申請の段階でBIMデータの提出を義務付けている。BIMの活用は、客先に説明しやすく、また質疑応答等をオンラインで記録に残しながら業務を進めることができるメリットがあるが、どうしても多額のコストがかかり変更等に対して弱い面もあるなどのデメリットもある。それを克服しながら、日々進化を続けているとのことだった。現在は基本計画の段階から実施設計を見通す方策としてBIMが活用され、さらに意匠・構造・電気・設備等の各部門との整合性に対する検討には最適な方法とされている。将来的には設計・工事・メンテナンスまでをBIMを活用して建物を一括管理していく方向とのことであった。
 この後は、翌日の出発まで自由時間。研修はあっという間で皆それぞれ未練を残しながらの帰国となった。
野澤 幸弘(のざわ・ゆきひろ)
東京都建築士事務所協会中央支部監事、(株)泉創建エンジニアリング