建築事務所業務報酬算定基準の改正について
業務技術委員会
島田 政之(東京都建築士事務所協会業務技術委員会、台東支部、株式会社JFE設計)
「国土交通省告示98号」の公布・施行について
 平成31(2019)年1月21日、国土交通省より、建築事務所の開設者が請求できる業務報酬基準の改定版「国土交通省告示98号」が公布・施行された。
 今回の改定は、従前の「告示15号」が公布されてから10年振りの改定になる。建築事務所の開設者が請求できる業務報酬の基準は、昭和54(1979)年「建設省告示1206号」として制定され、その後初めて改正されたのはその30年後、「姉歯事件」の再発防止策の一環として、平成21(2009)年1月に新たに「国土交通省告示15号」が公布・施行された。
 その後、設計業務の質・量の変化、発注者の要求水準の高度化・多様化等により、告示で前提としている業務と実際の業務に乖離が生じてきていると同時に、建築士の役割や仕事の幅が広がっている状況になっていった。国土交通省は、こうした現状を踏まえ、平成17(2005)年3月より改正に向けた検討に着手し、今般実施したアンケート調査の結果に基づき、建築士が業務に応じた訂正な報酬を得られることができるよう、同基準の見直しを10年振りに行ったものである。
 同基準により、官民問わず建築プロジェクトへの活用を促進し、適切な報酬の定着を図り、働き方改革、人材確保・育成につなげてもらえればと思うところである。
主な改正点
  • 業務実態を踏まえ略算表を刷新。
  • 略算法に反映する設計・工事監理等における難易度の観点を充実。
  • 略算法による算定対象外となる標準業務に付随する追加的な業務を明確化。
  • 一部の業務のみを行う場合の具体的な扱いを提示。
 なお、同時に国土交通省官庁営繕部より「官庁施設の設計業務等積算要領」も改正された。同積算基準は、平成31(2019)年2月1日以降の、入札手続き、または選定手続きに係る設計業務に適用されている。また、耐震診断・耐震改修設計に関する「国土交通省告示670号」は従前のまま運用される。
 新基準に関しては、下記国土交通省ホームページで公表されているので参照されたい。
■業務報酬基準(告示98号)について ■官庁施設の設計業務等積算基準(平成31/2019年1月改定版)
新基準の改正内容についての説明会
 平成31(2019)年2月中に、建築士会連合会、都道府県建築士会主催で全国9都市ですでに行われたが、3月以降、他38府県でも説明会が行われる。またその後も建築設計4団体による説明会も行われる予定になっており、詳細は後日、会員宛に報告する。
東京都建築士事務所協会発行「建築士事務所の業務報酬算定指針」、及び日事連「JAAF-MST2016」の改正
 東京都建築士事務所協会業務委員会では、業務報酬算定時に会員の皆様に長年活用していただいている「建築士事務所の業務報酬算定指針」の改正を進めており、6月ごろに改正版をお届けできる予定である。
 また、日事連が監修している「建築士事務所のマネージメント支援ツール『JAAF-MST2016』」も、同様に改正作業に入っており、改正版は6月ごろにホームページで公開される予定である。
 会員の皆様には、今後同基準及び支援ツールを活用いただき、業務に見合った報酬を確保していただくとともに、ひいては働き方改革の推進、人材の確保等をますます進めていただければ幸いである。
建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することができる報酬の基準について
(業務報酬基準検討委員会編、第3解説-2.改正の経緯とポイントより抜粋)
島田 政之(しまだ・まさゆき)
株式会社JFE設計 土木建築事業部 建築部 東京設計室、東京都建築士事務所協会業務技術委員会副委員長、日事連「建築士事務所のマネージメント支援ツール『JAAF-MST』維持管理WG」委員
1956年 鶴岡市生まれ/1982年 京都工芸繊維大学工芸学部建築学科卒業、川鉄エンジニアリング株式会社入社(現 株式会社JFE設計)
カテゴリー:建築法規 / 行政