大規模水害についての勉強会
江戸川支部|平成30(2018)年11月13日@タワーホール船堀
田口 吉則(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員長、江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計)
会場風景。(撮影:筆者)
 昨年(2018年)7月の西日本豪雨災害では、大規模な水害対策の重要性が改めて認識された。そうした中、多くの地域がゼロメートル地帯の江東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)が共同で、住民に対して5区の外に広域避難する計画を発表した。江戸川支部では山口正幸江戸川区危機管理室長を講師としてお招きし勉強会を開催した。会員以外に他支部、他団体も参加し65名参加の大盛況の勉強会となった。
 山口氏から最初に江戸川区の地形がどんな特徴があるか説明があり「堤防決壊により浸水被害にあう住民は江東5区で250万人と言われるが、浸水継続時間は2週間以上、救助できるのはヘリコプターやボートで1日2万人程度である」という話があった。
 広域避難計画では、強い台風の直撃が予測され、大規模水害が起きる可能性がある場合には48時間前に自主的に江東5区外の安全な場所へ避難を呼びかける。そして24時間前には江東5区外への避難を勧告する。避難場所は公的に確保されていないため、親戚・友人宅やホテルなどとなる。「このような災害になることを認識している住民は少ない。今後、大規模水害の可能性がある場合には会社や学校などを休みにするような措置がとられることが社会通念になっていけば、この広域避難はより現実的となる。今後も検討を重ね、勉強会を続けて開催していきたい」と、住民の認識の向上に努めていく必要性を山口氏は最後に述べた。
 説明後、出席者から多くの質問があり、関心の高さがうかがえた。その後の懇親会では平成30(2018)年11月1日付けで就任された新村義彦副区長からご挨拶をいただき、各団体の方々からも今回の勉強会に出席してよかったとのお言葉をいただいた。冒頭の武内敏幸支部長の挨拶で、実家のある愛媛県宇和島市吉田町が西日本豪雨で11人の方が亡くなるほどの甚大な被害があったのにも関わらず、地元の方々は、市のハザードマップを知らなかったという話があった。
 大災害に耐え蘇生できる建築・まちをつくるのは建築士の役割である。勉強会を重ねこれらの内容を住民に周知していくことが大事だと思った。
田口 吉則(たぐち・よしのり)
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役/東京都建築士事務所協会編集専門委員