支部研修旅行──香港でまちなみ・建物見学
台東支部|平成30(2018)年6月9〜11日@香港
木村 修(東京都建築士事務所協会台東支部支部長)
撮影:大平 孝至


 台東支部では2年に一度海外での研修旅行を行っている。前回はベトナムでの研修を行った。今回は6月9日から11日まで3日間、香港でまちなみ・建物見学の研修を行った。
ミッドレベルエレベーター。
林立する建物。
公園となった九龍城砦のジオラマ。
文武廟前で。
文武廟内部。
クリエイティブメディアセンター。
ジョッキークラブ・イノベーション・タワー。
シンフォニー・オブ・ライツ。
ビクトリアピークからの夜景。
まちなみ
 香港到着後、まずは、まちなみの研修を行う。香港島のミッドレベルエレベーターで急傾斜地に立つ建築物のまちなみや、工事中の建物を見学し、同時に庶民の生活感を感じ取った。狭い建物間、多くの広告、坂道にバザー、雑然とした建物の中に数十階の共同住宅。その隣には一流企業が入居する近代的な高層ビル。両方が立ち並ぶ光景は、まさに狭い土地を最大限に活用した香港の景観であると感じ、香港人の旺盛な経済力が見えた。
歴史史跡
 ふたつの寺院と「九龍城砦」へと足を運んだ。
 香港で最古の道教寺院である「文武廟」は、文学の神と武道の神が祭られたお寺で、院内は線香が立ち並んで煙で包まれていた。天井からは蚊取り線香の化け物のような巨大な渦巻き線香が吊られていた。九龍側の「黄大仙寺院」は、道教・儒教・仏教の3大宗教が習合している寺院である。多くの一般参拝客が訪れており香港人の宗教観を垣間見た。
 「九龍城砦」は、巨大なスラム街の様相は今はなく、公園となっている。かつての九龍城砦はイギリス香港政庁の管理が及ばない中国の飛び地であった。日本軍が統治した時代の後に無計画な増築による複雑な構造が形成された建築物となっていった。1994年取壊され、現在は公園として一般開放されている。当時の建物の使用状況や生活ぶりが写真・ジオラマ・映像で展示されていた。
現代建築
 香港城市大学の「クリエイティブメディアセンター」と香港理工大学の「ジョッキークラブ・イノベーション・タワー」の見学を行った。
クリエイティブメディアセンターは巨大なオーバーハングの壁が斜めにそそり立ち、窓が目立たない壁状のコンクリート建築物である。竣工は2011年10月で、設計者はポーランド系アメリカ人のダニエル・リベスキンドである。アメリカ同時多発テロ後の世界貿易センター跡地再建コンペで最優秀賞を受賞した建築家だ。ジョッキークラブ・イノベーション・タワーは、新国立競技場の当初デザイン案で名を馳せた、「アンビルドの女王」ザハ・ハディドの設計によるものである。2013年8月に竣工している。外観が印象的で、カーテンウォールの外側の庇がうねっており、建物が変形していると錯覚させる形状である。ザハの特徴である曲線が多く使われている。建物上部が改修中で養生ネットが張られ、残念であった。
景観
 香港の夜空を彩る世界最大の光と音のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を九龍側から鑑賞。ビルの照明と屋上からのレーザー光線が美しく、見事であった。ピークトラムでビクトリアピークに上って香港夜景を見ると、闇と照明のビル群のコントラストが美しかった。
研修参加者は20名で米朝会議の行われる前日に成田に無事帰国した。
木村 修(きむら・おさむ)
東京都建築士事務所協会台東支部支部長、株式会社パッソン一級建築士事務所
1952年 茨城県生まれ/1970年 東海大学工学部建築学科卒業後、八千代エンジニヤリング株式会社建築部入社/1989年株式会社パッソン入社/1994年同社代表取締役就任、現在に至る