土地家屋調査士豆知識 第4回
建築中に気をつけること
國吉 正和(國吉土地家屋調査士事務所)

 建築計画が決まり、いざ着工となったあとにも、気をつけることがあります。
 既存の建物が、建築敷地にある場合には、その取り壊しを始めると思います。しかし取り壊した後、建物が登記されている建物であったのか、その所有者は施主さんなのか、誰だったのか不明であったり、取り壊してみたら隣地の工作物の越境が判明したり、取り壊しに際して土地の境界標が亡失してしまうことがあります。

① 登記してある建物を取り壊した場合、その所有者は、1カ月以内に建物の滅失登記を申請しなければならないと、不動産登記法で規定されていることはご存知だと思います。ただ、借地上の建物の場合、すぐに新しい建物が着工できればよいのですが、そうでないと建物登記がなくなったとき借地権の対抗要件はどうなるのか、考えておかなければなりません。
② 土地家屋調査士が建物滅失登記を申請する場合、現地調査を行います。ここで、気をつけなければいけないことは、取り壊した建物が登記されたのがいつごろかということです。前回の地積測量図と同様に、登記簿台帳一元化時に建物台帳から移記されたものには、建物図面が登記所に備え付けられていないのです。既にないものを調査することほど難しいことはありません。一筆地の中に母屋のほかに複数の離れがあり、その中の一戸を取り壊した場合など、それを特定することはけっこう困難です。東北大震災で多くの建物が滅失しましたが、それぞれの建物の特定にはたいへん苦労されたということです。そのような場合には、取り壊す以前の状態から調査させていただきたいと思います。
③ 隣地境界線との距離に余裕のない建物を取り壊した際、境界標が亡失または動いてしまったという経験は、建築士の皆さんも多いのではないでしょうか。境界紛争に発展してしまってはたいへんです。これに対応するには、建物の計画段階で土地の境界について隣地の方と確認をし、測量をして、境界が復元可能なデータなり図面をつくっておくことだと思います。
④ また、建物の取り壊し後、隣地の方の建物や工作物、設備機器などが越境していることが判明したときは、きちんと越境物の位置と境界線の関係を隣地の方と確認し、図面などに残して、後の処理の方法や紛争に発展しないよう心がけることが大事です。
⑤ 建物が完成したら、不動産登記法では、新築後1カ月以内に建物の表題登記を申請しなければならないと規定されています。建物の所在や種類、構造、床面積などを登記記録に表示します。完成後に、われわれ土地家屋調査士が現地を確認するわけですが、完成後では屋根に上って種類を確認することは困難ですし、壁の厚みを確認することもなかなか難しいと思います。

 ぜひ、ご依頼の場合は、工事中から相談いただければ助かりますので、よろしくお願いいたします。
國吉 正和(くによし・まさかず)
國吉土地家屋調査士事務所、東京土地家屋調査士会顧問
1954年東京生まれ/1977年 早稲田大学理工学部土木工学科卒業/1981年土地家屋調査士登録
カテゴリー:建築法規 / 行政