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『コア東京』2015年5月号編集後記
栗田 幸一(東京都建築士事務所協会 編集専門委員長)
『コア東京』2015年5月号
『コア東京』が新しくなって2号目を皆様にお届できること、感謝です。会員諸氏に原稿やインタビューをお願いする場面も多くなると思いますので、ご協力のほど宜しくお願いします。
『日事連』3月号21頁に高裁判決の嬉しいニュースが載っていました。6月25日から施行される「建築士法22条3-4」(国土交通大臣の定める業務報酬基準に準拠した契約締結の努力義務化=設計又は工事監理の受託契約を締結しようとする者は、建築士法第25条に規定する報酬の基準に準拠した委託代金で受託契約を締結するよう努めなければならない)に沿った高裁判決が出たからです。
多くの設計事務所は品質管理の徹底を目指し、努力を重ねていますが、姉歯事件(2005年の構造計算書偽装事件を発端にその他の構造設計事務所でも計算書の不備が露見した)の後遺症が今でも残っています。一方で契約関係は複雑になり、建築主と設計事務所の間に少なからぬ数の業者が介在し、建築主の顔が見えないままで設計していた事例も多く聞きます。一部のデベロッパーやゼネコンが発注者の場合、建築基準法をいかに最低限でクリアできるかが良い設計事務所の判断基準となっている現実があります。
このような状況の中で、先の判決を知って、ますます設計事務所こそが、「品質管理能力」と「現場力」を発揮していかねばならないと感じました。以前から建築科卒業生が設計事務所に入る割合が減少していることを見ても、今現在設計事務所にいる者たちの努力が必要と思います。
久しぶりの民法改正案(2018年施行予定)でも建築物の瑕疵訴訟の起点が引き渡し時でなく、瑕疵を知った時からと変更予定です。
本誌が建築士事務所の資質向上の一助となればと考えています。
栗田 幸一(くりた・こういち)
東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在に至る/(一社)東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長