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YKK AP株式会社──メーカーとしてのBIM対応
メーカーとしてのBIM対応
 建築プロジェクトにBIMの導入が増加したことで、メーカー側に3次元モデルデータの提供を求める流れが強まってきた。「いまはまだ元請けの要請を受けて対応しているBIMだが、受注から製造までの一貫生産が構築できれば、業務の大幅な効率化が実現できる」。実プロジェクトへの適用を経験する中で、当社は「I(インフォメーション)」の部分をより注視するようになった。
 BIMの初適用案件となったのは、東京都心部で2017年春竣工した9階建て延べ面積約1万4,000㎡の複合施設だった。設計・施工を担当したゼネコンは社内にBIMを推進中で、建物全面のカーテンウォールとともにサッシ部分も含め、BIMデータの提供を求められた。
 モデリング作業は精度にこだわり「建築系CADを使いながらも、機械系CADレベルの細かさで描いた。どこまで精度を上げるべきかを知る絶好の機会となった」と振り返る。デジタルモックアップの効果は絶大だった。関係者の合意形成はスムーズに進み、実物とほぼ同等の見栄えに対する関係者の評価も予想以上に高かった。「現場設置が求められるモックアップ費用が一切かからなかったコストメリットは特に大きかった」。
 この1年間で当社は提案レベルを含めプロジェクト3、4件のBIM要求に対応しているが、自主的に取り組んだケースはなく、あくまでも元請けの要望を受けて取り組んでいる状況だ。
 「部品を提供するメーカーの立場だけに、主体的に動くことは難しいが、さらにBIMの普及が進めば、既製品(RM)パーツを3次元データとして提供する可能性も出てくる」と考えている。
 初適用案件では、作成した3次元モデルデータを社内で活用できていないことが今後の課題として浮き彫りになった。製造部門にまで一貫してデータを活用できれば、業務効率の大きなメリットを生む。社内には2次元の施工図システムが確立しており、これに3次元データを組み込むことができれば、部品パーツの属性情報を使った自動積算の実現など、業務の合理化につながる可能性を秘めている。
YKK AP株式会社
http://www.ykkap.co.jp/
tel.03-5610-8430