第18回建築ふれあいフェア開催
「みんなでつくる みんなの街」をテーマに
大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌HP専門委員会・台東支部監事、株式会社ダイリン一級建築士事務所)
奥山 安雪(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会・北部支部、建築設計アトリエ80)
谿口 阿佐美(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会・賛助会員会、JFE鋼板株式会社)
野瀬 有紀子(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会・練馬支部、女性のための住まい相談室/のせ一級建築士事務所)
飛田 早苗(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会、株式会社日建設計)
田口 吉則(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員長・江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計)
栗田 幸一(東京都建築士事務所協会理事・台東支部、株式会社栗田建築事務所)
針谷 賢(東京都建築士事務所協会新宿支部、栽花建築設計事務所)
 一般社団法人東京都建築士事務所協会の主催、新宿区の共催、東京都ほかの後援による「第18回建築ふれあいフェア」は、平成29(2017)年9月22日(金)、23日(土、秋分の日)、24日(日)の3日間、新宿駅西口広場イベントコーナーを会場に開催されました。
主催*
一般社団法人 東京都建築士事務所協会
共催*
新宿区
後援*
東京都
一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
一般社団法人 東京建築士会
公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部
一般社団法人 東京建設業協会
一般社団法人 日本建築構造技術者協会
みんなでつくるみんなのまち。
会場配置図。
第18回建築ふれあいフェアプログラム(9月22日〜24日)
●ステージエリアでのイベント
9月22日
13:15〜 オープニング
13:30〜 セミナー:地域の魅力と活性化(東京都建築士事務所協会各支部)
14:30〜 セミナー:東京都防災ブック東京防災について(東京都)
15:00〜 セミナー:新宿区まちづくり長期計画について/
     擁壁及びがけ改修等支援事業の概要について(新宿区)
15:30〜 セミナー:建物を強くする調査・工法のすすめ
     (東京都建築士事務所協会賛助会)
17:30〜 ミニコンサート:ヴォーカルアンサンブル/歌譜喜
18:30〜コンテスト:第42回東京建築賞作品の話(受賞者)
9月23日
10:30〜 セミナー:地震に強い木造建築(工学院大学河合直人教授)
13:00〜 ミニコンサート:和太鼓演奏(東京都立美原高等学校の生徒さん)
13:15〜 フェアセレモニー
13:30〜 コンテスト:児童画「夢のケンチク」コンテスト表彰式(小学生の皆さん)
14:00〜 セミナー:地震動シミュレーター「地震サブトン」実演(新宿消防署)
15:30〜 会議:わが街の未来・中学生会議(江東区立深川第二中学校の皆さん)
17:30〜 ミニコンサート:バンド演奏/Serendipity
18:30〜 セミナー:避難シェルターの作り方(工学院大学鈴木敏彦教授)
9月24日
10:30〜 セミナー:東京の景観を語る(東京都建築士事務所協会各支部)
13:00〜 セミナー:塗り壁実演(東京都左官職組合連合会平成会)
14:00〜 パフォーマンス:バルーンアートパフォーマンス
14:30〜 コンテスト:ストローハウス・コンテスト
16:00〜 エンディング(お花の無料頒布会)
●体験・ワークショップ
KAPLAブロックコーナー、みんなでつくるみんなのまち、どろ団子をつくろう、折り紙建築を一緒につくろう!、建材に触ってみよう・楽しもう、避難シェルター体験(9月22、23、24日)
地震動シミュレーター「地震ザブトン」体験(新宿消防署)(9月22、23日)
泥団子づくり、塗り壁体験(東京都左官職組合連合会 平成会)(9月24日)
●展示・建築相談(9月22、23、24日)
「東京の景観・絵葉書」展(絵葉書無料配布)、児童画「夢のケンチク」展(小学生の皆さん)、「第42回東京建築賞」受賞作品展、「地域づくり」展、「建築工法」展、建築無料相談会


くす玉を割る登壇者。
オープニング|9月22日、13:15〜
 第18回建築ふれあいフェアのオープニングでは、児玉耕二副会長、戸張毅理事(ともに建築ふれあいフェア担当)、佐藤登賛助会員会代表が登場、代表して植竹和重常任理事の開会宣言の後、くす玉が割られ、3日間の最初のセレモニーが和やかにまた華々しく開催された。


セミナー:地域の魅力と活性化。
地域の魅力と活性化(東京都建築士事務所協会各支部)|9月22日、13:30〜
●新宿支部、大成建設の川崎泰之さん:大成建設の取り組みや街づくりコンペへの参加、アートストリートの活用などによる西新宿の街を賑わせる構想など、興味深い話しがあった。
●中野支部、ヒグチ設計の樋口修さん:吉備国際大学の話、明治維新の山田方谷の財政立て直しの話しからその弟子である三島中洲が設立した二松学舎大学の開校150年記念講演の紹介等。
●加藤義道中央支部長:中央支部によるパネル展示の紹介。
●末延史行中野支部長:中野区の建物の紹介、哲学堂ほか中野サンプラザ、中野駅周辺の再開発等。
●東西建築設計の和田公一さん:子供の城(認可保育園)の紹介。
 セミナー後、児玉副会長から来場者に「話を聞いていただいてもう一度パネルを見てほしい。またポストカードも見てほしい」との呼びかけがあった。


東京都総務局綜合防災部の宮崎玄事業調整担当課長。
セミナー:東京都防災ブック「東京防災」について(東京都)|9月22日、14:30〜
 東京都総務局総合防災部の宮崎玄事業調整担当課長より、防災ブック『東京防災』をもとにした「今やろう防災アクション」と題したセミナーが行われた。宮崎課長は身近で優しい語り口で、日常備蓄が大切ということをクイズ形式で説明し、好評だった。普段から使っている食料や日常品を少しだけ多めに取っておくことで災害時にたいへん役立つことがわかった。


監物拓主任主事(左)と千葉辰徳主任主事(右)。
セミナー:新宿区まちづくり長期計画について ほか(新宿区)|9月22日、15:00〜
●新宿区都市計画部都市計画課 千葉辰徳 主任主事
 新宿区まちづくり長期計画についての説明があり、都市計画マスタープランとまちづくり戦略プランなど、将来の都市像についてそれぞれ話しがあった。
●新宿区都市計画部都市計画課 監物拓 主任主事
 東日本大震災では区内で3件の倒壊があった。区の中には土砂災害特別警戒区域というものがあり、擁壁等改修等支援助成についての紹介があった。
セミナー:建物を強くする調査・工法のすすめ(東京都建築士事務所協会賛助会員会)|9月22日、15:30〜
 「建物を強くする調査・工法のすすめ」をテーマとして、賛助会員会から建築ふれあいフェアにブース出展している4社にPRの時間が設けられた。各社はテーマに沿った内容を協会関係者だけでなく、一般の方にもわかりやすく説明した。
●できることから始めよう!「地域防災塾 ザ・ふだん」|(株)i-tec24代表取締役 岩本由起子
 エレベーターのメンテナンスを行っている同社が専門知識を活用し、地域防災に役立つよう始められたのが「地域防災塾 ザ・ふだん」。ザ・ふだんのテーマは「日常の中の防災」。その活動内容や長きにわたるエレベーターメンテナンスの実績がある同社だからこそ伝えられる防災についての説明があり、今から始められる地域防災の話に関心が集まった。
●建物調査のあれ・これ 非破壊調査を中心にご紹介|三協(株)代表取締役 佐藤登
 同社は建造物の総合的な信頼性・安全性向上のため、年月を経るにつれ変化する構造強度を多項目に及ぶ検査・計測・試験により調査を行っている。
 普段の調査方法から、機材についての説明や国内外の調査について実例を示しながら説明し、未然に防ぐための調査の重要性について説明があった。
●トグル制震構法、各種製品のご紹介|(株)E&CS トグル制震事業部 営業部長 遠藤等
 トグル制震装置の製造・販売を行っており、トグル制震構法等による耐震補強の提案も行う。「制震」の仕組みを分かりやすく、身近な例で紹介。「トグルとは?」という根本的な説明からその仕組みまで分かりやすくご説明いただいた。実際の施工例もご紹介いただき、豊富なデザインと多くの施工実績が印象に残る。
●木造・RC造・SRC造の建物を外側から強くする工法のご紹介|矢作建設グループ (株)ピタコラム ウッドピタ事業本部営業部 仲野武志
 ウッドピタとは建物外側からの簡単な工事で建物の耐震性を大幅に向上させる耐震補強工法であり、優れた耐震性と施工性を兼ね備えている。消費者のニーズに柔軟に対応でき、工事期間の負担も少ない。これまでの多くの実績が紹介され、イメージしやすく、通りかかった一般の方も興味深く聞いていた。


ヴォーカルアンサンブル/歌譜喜。
ミニコンサート:歌譜喜|9月22日、17:30〜
 音大卒のメンバーを中心に6人編成で、東京都建築士事務所協会事務局の佐藤拓さんも一員として活躍しているユニットである。帰宅ラッシュの人びとが行き交う夕暮れ時、会場には立ち見も含め100人以上の観衆が詰めかけ、バラエティに富んだ40分のステージはあっという間だった。


戸建部門最優秀賞の石井秀樹さんのプレゼン。
第42回東京建築賞受賞作品の話(受賞者)|9月22日、18:30〜
 会場中央部には、第43回を迎えた東京建築賞2017の入賞19作品のパネルが展示された。また、ステージエリアでは昨年の東京建築賞の受賞作品17点の中から主要4部門を代表して、下記の受賞者による作品発表が行われた。
戸建住宅:「たまプラーザの家」石井秀樹さん(石井秀樹建築設計事務所)
共同住宅:「KDXレジデンス赤坂」木下昌大さん(KINO architects)
一般一類:「はくすい保育園」山﨑健太郎さん(山﨑健太郎デザインワークショップ)
一般二類:「桐朋学園大学音楽学部調布キャンパス1号館」笹山泰代さん(日建設計)
 それぞれ15分程度のプレゼンテーションではあったが、いずれの作品も敷地条件や周辺環境の特長を丁寧に読み解き、その可能性を最大限に引き出すとともに、クライアントやユーザーからの要望の先にある、新しい価値の提言にチャレンジしていることが理解できた。
東京建築賞の詳細は、『コア東京』2016年7月号、2017年6月特別増刊号参照。


工学院大学河合直人教授。
セミナー:地震に強い木造建築(工学院大学河合直人教授)|9月23日、10:30〜
 明治時代からの先人たちの悲願であった木造の耐震化。耐震安全性が確保されると考えられる現行の基準が策定されるまでの過程や今後の課題である既存木造住宅をどう診断・補強するかについて、以下、わかりやすくお話いただいた。
 木造建築について「ちゃんとつくれば強い」ということがこれまでの研究で分かってきた。現行基準では耐震は壁量によって効果が出るとされている。今日までの幾度もの地震による被害から、筋交いを入れる等の基準が定められてきており、福井地震(1948)のレポートでは、壁の量が多いと被害が少ないという結果も残されており、1950年の壁量規定につながっている。耐震的につくるためには、壁の量、壁の配置・バランス・接合部が重要となることが分かってきた。
 1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では当時、柱が細いから倒壊したとの報道がよく見られたが、柱だけで建物の強度をもたせるのは不可能であり、壁の量および配置・バランスが倒壊と関係する。壁の量が少ないと耐震性がないのはもちろん、量が十分でもバランスが悪いと、倒壊などにつながる可能性がある。
 2016年の熊本地震後に2,000棟の木造住宅を調査したところ、そのうち30%が倒壊しており、そのほとんどが壁量が定められる前の建物であった。2000年以降の建物では2.2%が倒壊し、その中には基準を満たしていないものもあった(無被害は60%以上)。
 では、基準前の建物をどうすればいいのか。古い建物でも現行基準に則した耐震補強を行うと実験では倒れないことが確認された。現行基準を守れば耐震安全性は確保されると考えられるが、既存木造住宅をどう診断・補強するかが課題となる。
 大規模木造建築の耐震性はどうすればいいのか。木造の耐震設計は簡単ではないが、大規模木造は国内外で実例があり、国内では積雪2m地域でも実例がある。構造的には可能となった4階建て以上には耐火性能も必要となる。これまでの材料の改良や工夫により現在では2,000棟以上の耐火性能を持つ木造建築の実績がある。最近ではCLTという木の繊維方向が直行するように接着された、軽くて強度があり断熱性にも優れた材料も開発された。CLTでは大きなパネルに加工することができ、日本でも2016年からCLTが建築基準法に位置づけられた。同材料を用いた建物で兵庫県南部地震同等を想定した試験では7階建てでも耐えることが確認された。このように耐震性能、耐火性能を兼ね備え、大規模な建物も建てられる木造の可能性は今後も広がっていくと考えられる。
 当日は土曜の午前中にも関わらず、通りがかった一般の通行の方も「木造」、「耐震」というキーワードで足を止める方も多かった。


東京都立美原高等学校和太鼓部のみなさんによる和太鼓演奏。
挨拶する大内達史会長。
フェアセレモニー|9月23日、13:15〜
 今年の建築ふれあいフェアは2日目にあたる23日午後よりメインのオープニングセレモニーが開催された。
 東京都立美原高等学校和太鼓部のみなさんによる力強い、心が躍るような素晴らしい和太鼓演奏でオープニングセレモニーが始まった。演奏の後は大内達史東京都建築士事務所協会会長の挨拶に続き、新宿区役所都市計画課都市計画部建築指導課 小俣旬課長より吉住健一新宿区区長のご挨拶を代読いただき、東京都都市整備局市街地建築部の相羽芳隆課長よりご挨拶をいただいた。開会宣言は児玉耕二建築ふれあいフェア特別委員会委員長よりあり、その後はもう1曲、和太鼓の演奏があり、セレモニー参加者だけでなく、多くの人が立ち止まってその素晴らしい演奏を楽しんでいた。


「小学生が描く夢のケンチクコンテスト」受賞者記念撮影。
児童画「夢のケンチク」コンテスト表彰式(小学生の皆さん)|9月23日、13:30〜
フェアセレモニーに続き、「小学生が描く夢のケンチクコンテスト」に入賞した10名の小学生の表彰式が行われた。
 賞状を満面の笑みで受け取る子や恥ずかしがる子など、参加者が思わず笑顔になるような表彰式であった。
 受賞した作品を見ると大人では想像もつかないような発想がたくさんあり、想像力の豊かさに驚く作品が多かった。表彰式後、各人の絵を前にして大内会長と写真を撮る姿が印象に残った。


地震動シミュレーター「地震ザブトン」。
地震動シミュレーター「地震サブトン」実演(新宿消防署)|9月23日、14:00〜
 2回にわたって新宿消防署による地震動シミュレーター「地震ザブトン」の実演が行われた。地震ザブトンとは3m四方ほどのマットの上に車の座席のようなシートが設置されてあり、地震の映像にあわせてシートが動くというものである。体験できる地震は6種類あり、昨年の熊本地震や、2011年の東日本大震災時に取れた新宿超高層ビルのデータを再現した地上30階の揺れなども体験できる。5歳以上であれば誰でも体験することができ、多くの通行人が足を止めて体験していた。大きな動きのため、怖がる子どももいた。体験された方の話を伺うと、「揺れると分かっていても怖かった。身近に起こると思うと怖い」などがあった。東海地震を想定したビル30階の揺れを体験してみたが、座っていても掴まっていないと体が落ちそうになるくらいの大きな揺れ(実際にはシートベルトをつけ、係の方からしっかり掴むように言われているので子どもでも安心して体験できる)で、これが現実に起こると考えると怖かった。


江東区立深川第二中学校の生徒の皆さん。
わが街の未来・中学生会議|9月23日、15:30〜
 江東区立深川第二中学校から参加してくれた6人、櫻井さん、久我さん、藤村さん、入江さん、浅岡さん、と黒一点の梅原さんによるカンファレンス。活気ある街という富岡八幡宮や東京三大祭りがある江東区深川についての紹介、ディスカッション。タイ人と日本人の両親を持ち小さいころバンコクに住んでいた経験をもつ浅岡さんは、「江東区は、近隣など人とのつながりが強い街でタイと似ている」と。「近代的な建物と昔ながらの駄菓子屋などの建物が共存しているところがいい」と久我さん。「運河の街として、古くから木材の流通で栄えた街で、昔、木材の倉庫だったところを、カフェに使っているようなところもある」と藤村さん。「運河の街なので、水辺を利用した公園、水上アスレチックもあり、楽しめる」と梅原さん。江東支部の内田晴康支部長の後輩たちによる活気あふれる会議だった。


Serendipityによる演奏風景。
ミニコンサート:Serendipity(9月23日、17:30〜)
 建築士がバンドのメンバーというSerendipity(セレンディピティー、「偶然に」という意味)。男性5人(トロンボーン、サックス、ドラム、ベース、キーボード)と女性2人のボーカルのユニット。日ごろはライブハウスで活動をしている7人。この日は、70'sと80's前半の懐かしい曲ばかりで、最後は、アンコールもあり、会場は手拍子で盛りあがった。


鈴木敏彦工学院大学建築学部教授の講演。
寝場所としてのシェルター。
シェルター3。
クロスウォールシステム。
避難シェルターの作り方(工学院大学鈴木敏彦教授)|9月23日、18:30〜
 夕方になり会場内には、人も少なくなってきたが、それでも、工学院大学建築学部教授の鈴木敏彦先生の話がはじまると、ステージ前に人が集まってきた。以下、災害時に体育館などに一時避難した際に利用する目的でつくられた段ボールシェルターの説明。
 鈴木先生は、東日本大震災の折には、学生とともに実際に被災地に足を運び、このシェルターを設置したという。
 段ボールシェルターには、3つの種類がある。東北は寒く、寒くなく眠れる寝場所がほしいなぁと思いついたのがシェルターのひとつ目。中で立つこともでき、更衣室や診察室などの個室として使えるのが、シェルターふたつ目(シェルター3)。そして、3つ目がクロスウォールシステム。段ボールでまず十字型の柱型をつくり、それに壁になるボードを差し込む構造で、いくらでも大きくできる間仕切りのシステム。段ボールは、予めカットされてスリットも入っており、組み立てにも時間を要しない。スリットに差し込むだけで剛性も高くなる。段ボールには断熱性があり、床に敷いても温かい。食糧などと一緒に日ごろから体育館などの避難場所に適正量を備蓄しておくのが望ましいという。実際に自治体から引き合いもあるようだ。
 これらは一時避難のためにつくったシェルターで、耐久性は1週間程度と考えたが、実際には仮設住宅ができるまで3〜6カ月もこのシェルターで生活していたのが現状だ。長期の避難生活も考えて、床は畳、プレカット木軸で骨組みをつくり、すだれや障子を使ってできないか、今後の課題としているということであった。
 会場の避難シェルター体験エリアでは子どもたちが遊び、絵を描いて楽しんだ。


地図とポストカード。
登壇者。
登壇者。
東京の景観を語る(東京都建築士事務所協会各支部)|9月24日、10:30〜
 ふれあいフェアでは、各支部が魅力ある景観をポストカードとして作成し、会場に設置した大きな地図に展示して、皆さんの好評を得ていた。4回目となった今年は41枚のカードが集まった。
 そしてメインステージでは、6枚のポストカードの作成者に各支部の紹介と魅力を語ってもらった。
 最初に小澤雅也さん(杉並支部)から荻窪駅南口から徒歩15分にある、「幻戯山房(すぎなみ詩歌館)」の紹介があった。俳人で角川書店を創設した故角川源義の旧邸宅で平成21(2009)年に国の登録有形文化財に登録されている。庭園を眺めながらお茶を楽しめる茶室があり、実際に角川氏が愛用した茶道具を無料で貸し出してくれるそうだ。
 中村靖男さん(葛飾支部)からは、「柴又帝釈天(提経寺)」の紹介があった。あまり知られていない寺の内部の庭(邃渓園)は、緑豊かな庭園を屋根付きの木製の回廊がぐるっと回るようになっていて、休憩所もあり、ゆっくり庭を眺められるとのことだ。
 本堂の外側に一面の施されている木彫りは法華経に説かれる代表的な説話10話を選び視覚化したもので、なかなか見ごたえがありそう。
 大島健二さん(台東支部)は、今回は世界遺産に登録されこともありル・コルビュジエの「国立西洋美術館」のスケッチをポストカードに掲載した。しかし個人的にはこのような有名建築ではなく、「合羽橋道具街」や「おかず横丁」など、他には見られない活気ある商店街のまちなみを散策してスケッチするのが好きだとのこと。
 磯永聖次さん(港支部)。港区の名前の由来は、昭和22(1947)年に3つの区が合併した時、東京港の発展を願って港区の名をつけたそうだ。その港から「レインボーブリッジ」、「フジテレビ本社ビル」などのビル群を自身で撮った写真で紹介してくださった。青い空と海に白いレインボーブリッジとビル群のシルエットが美しい。
 山本誠さん(渋谷支部)からは、槇文彦さんが設計し1990年に完成した千駄ヶ谷にある「東京体育館」の紹介があった。ポストカードの体育館の後ろには、現在建設中の新国立競技場のクレーンが見える。東京体育館は、2020年東京オリンピック・パラリンピックで卓球の競技会場と使用される予定。
 川崎和彦さん(立川支部)からは、自身が住む日野市の旧甲州街道沿いに建つ2階建て洋館造りの店蔵(有山家の洋館)の紹介があった。古いものと新しいものが同居している面白さが日本にはあるが、これから古いものがなくなっていく中、保存して後世に残すのも建築家の仕事だと思うとコメントした。
 最後に戸張毅建築ふれあいフェア担当理事からこのセミナーの総評があった。ポストカードで紹介された建物を年代別に区分すると江戸時代以前が9点、明治・大正が8点、昭和が11点、平成が13点だった。戦前の作品が21点、戦後の作品が20点と半分半分の出品で、東京にある歴史的建造物の多くがなくなり、近代的なデザインを持った新しい景観に変わりつつあることが解かる。この企画で歴史的建造物から先端をいく近代建築までの歴史的変遷を俯瞰することができたのではと締めくくった。


塗り壁実演。
塗り壁体験。
セミナー:塗り壁実演(東京都左官職組合連合会平成会)|9月24日、13:00〜
 メインステージにふたつの壁が用意され、東京都都左官職組合連合会青年部「平成会」の3人メンバーの方々が塗壁の実演をしてくださった。まず細井智亨さんが片方の壁で漆喰の磨き壁の実演が行い、下地を平らにして水の引き具合を見ながらコテを何度も運ぶと壁が徐々に光輝きだし鮮やかな青い壁となった。また一方の壁では、吉村誠さんによる珪藻土を使ったパターン塗りでは、櫛引きなど4種類の模様をいとも簡単に塗り上げ、短い時間ではあったが匠の技を見せていただいた。
 実演中には山口明さんが作業の解説をしてくださり、加えて左官の歴史、材料、珪藻土、コテの種類などの説明があった。戦国時代は左官が盛ん(さかん)でしたとユーモアを交えてお話をしてくださり、勉強にもなったが楽しい時間を過ごさせていただいた。
 この後メインステージ裏手では、珪藻土の塗壁の体験や泥団子づくり教室が行われ、多くの方々が参加して賑わった。


バルーンアートをプレゼントする鷹取奨さん(右)。
バルーンアートパフォーマンス|9月24日、14:00〜
 「こんな格好しているけれど普段は建物の設計をしているんだよ」と自己紹介した南部支部の鷹取奨さんが、プロも顔負けのバルーンアートを繰り広げた。
 ウサギ、キリン、ダックスフンドなど動物をはじめセーラームーンや魔女の宅急便など手の込んだものも手際よくつくり、子どもたちにプレゼントした。もらった子どもたちは大喜び。来年も来てくれるかな?


大学生チーム(Five Xチーム)。
ふれあいチーム。
振動台を前に石塚武志さん。
ストローハウス・コンテスト|9月24日、14:30〜
 昨年、好評であったストローハウス・コンテストが今年もメインステージで行われた。
 3人1組の大学生同士の対決の予定であったが1組が参加できなくなり、急遽「ふれあいチーム」が直前に結成されて参加することとなった。
 ルールは簡単、ストローをゼムクリップで接合して3階建て(高さ約30cm)の骨組みをつくり、厚紙の床を張る。その床に6個の人形を載せ、振動(地震を想定)を加えてハウスが壊れたり、人形が多く落ちたほうが負けである。
 お互い相手の進行状況を気にしながら無事完成し、石塚武志委員の手づくりの振動台を使ってふたつのハウスに振動が加えられた。1勝1敗でむかえた最後の対決は、隅に人形を配置するという姑息な手段を使ったふれあいチームが勝利した。それでも対戦した大学生チーム(Five Xチーム)は、来年はリベンジしたいと大人の発言。会場の拍手と笑いを誘った。
(文と写真:大平 孝至、奥山 安雪、谿口 阿佐美、野瀬 有紀子、飛田 早苗、田口 吉則|会誌・HP専門委員会)


「建材に触ってみよう・楽しもう」。
●体験・ワークショップ
「建材に触ってみよう・楽しもう」
台東支部では昨年に引き続きワークショップを行った。設計事務所には建材サンプルが工事の度に溜まるが、これを有効利用できないものかと考えたものだ。
今年は高齢の方から若年の方、親子連れまで幅広い層の方に参加していただけた。2台のテーブルが狭く感じられたので、来年は4台のテーブルが必要だろう。創作する喜びを分かち合えた時間だった。 (栗田 幸一|台東支部)


「折り紙建築を一緒につくろう!」。
「折り紙建築を一緒につくろう!」
 新宿支部では、2014年より茶谷正洋さんの教本を参考に「折り紙建築を一緒につくろう!」と題して体験型の出展をしてきた。例年、子どもから高齢者まで多くの方に挑戦していただき、昨年からのリピーターも多かった。工作は男の子の得意分野かと思いきや、女の子の方が粘り強く積極的に感じられたのが印象的だった。「ORIGAMI」は今や世界共通語。海外からのお客様にも"Origamic Architecture"はとても好評で、旅のよき思い出となったことだろう。今年の体験者は延べ200人を超えた。
 自らの手を動かしてモノをつくる喜び、立体造形の美しさにふれることで、少しでも多くの方々に建築をより身近に感じてもらい、ふれあうことによって私たちの仕事を理解してもらうきっかけとなることを願っている。 (針谷 賢|新宿支部)


「ぼく、ケンチくん!」
──建築ふれあいフェアキャラクターの名前決定!!
 9月22日〜24日、建築ふれあいフェアでのキャラクターの名前募集に40名の方から応募いただきました。厳選な審査の結果、「ケンチくん」に決定いたしました。
 東京都建築士事務所協会の入口で、皆様をお出迎えしております。
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌HP専門委員会・台東支部監事、株式会社ダイリン一級建築士事務所
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする。
奥山 安雪(おくやま・やすゆき)
建築家、建築設計アトリエ80主宰、東京都建築士事務所協会北部支部
1953年生まれ/野地建築設計事務所を経て1980年に独立/趣味は「書道」と「躰道」という武道
谿口 阿佐美(たにぐち・あさみ)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会・賛助会員会、JFE鋼板株式会社流通営業部第一室
野瀬 有紀子(のせ・ゆきこ)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会・練馬支部、女性のための住まい相談室/のせ一級建築士事務所
女子美術大学卒業/木造戸建住宅の設計に長く携わる
飛田 早苗(とびた・さなえ)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会、株式会社日建設計
神奈川県横浜市生まれ/慶應義塾大学総合政策学部卒業/現在、株式会社日建設計広報室課長
田口 吉則(たぐち・よしのり)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員長・江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役/東京都建築士事務所協会編集専門委員
栗田 幸一(くりた・こういち)
東京都建築士事務所協会理事・台東支部、株式会社栗田建築事務所
1949年 東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在、代表取締役/台東支部
針谷 賢(はりがい・まさる)
東京都建築士事務所協会新宿支部、栽花建築設計事務所
1989年 東京電機大学工学部建築学科卒業/1990年 VICENTE DIEZ FAIXAT ARQITECTO / Gijon Sain/1990年 株式会社團・青島建築設計事務所/2004年 栽花建築設計事務所共同設立/2014年〜東京電機大学非常勤講師