研修委員会主催「ゆいの森あらかわ」現場見学会同行記
栗田幸一(東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長、株式会社栗田建築事務所)
北東コーナーより見る。
南東より見る。
「ゆいの森ホール」の側壁。
スキップボイドを見下ろす。
「ゆいの森ホール」にて。以上の写真:研修委員会提供
 平成29(2017)年3月25日、千代田線の町屋駅で久しぶりに降りた。階段を上って地上に出ると都電が走っている。千代田線、京成線、都電とバスのハブになっている駅だ。
京成本線の町屋駅改札通路を抜け、エレベータの遠隔監視の三菱電機ビルテクノサービス(株)の前を抜けて、都営荒川七丁目仲道アパートを横に見ながら前方に東京都三河島水再生センターの丁字路を右に曲がると目的の建物「ゆいの森あらかわ」が見えてきた。
 この地域は東京都が都内全域を対象に平成23(2011)年度から進めてきた不燃化特区の只中にある荒川区荒川2丁目の東端に当たる場所で、敷地の東に位置する荒川自然公園に道路を隔てて接している。地域の建物不燃化率が70%を超えると「燃えないまち」になるそうで、東京都も建物の沿道耐震化と共に推進してきたプロジェクトだ。
左:都営荒川七丁目仲道アパート。右:ゆいの森あらかわ東側の木造2階家。空が広い。
 「ゆいの森あらかわ」は日常は、小さい子どもから高齢者を対象とした図書館機能、作家吉村昭記念文学館、子育て世帯を支援する機能、この3点を目標として計画されたものである。地震時、水害時等の被災時にも地域の拠点としての機能も併せ持ち、免震構造を採用している。水害対策もなされて、メインの機械室は5階に設置されている。
 当日の説明は設計監理(株)梓設計の押田拓也さんが対応してくれた。
免震装置。奥にダンパーを見る。
説明と会のまとめをして下さった、左から、土井英尚(研修委員)、押田拓也(梓設計)、三代川俊雄(研修委員長)の3氏。
 施設の考え方は、解放された広場と閉鎖された室構成、施設全体が感じられる「スキップボイド」、書棚で区切られる空間の年齢による対応。なかなか面白そうだ。
1階「ゆいの森ホール」。本に囲まれた解放的な空間が備えられていた。イベントのないときは閲覧スペースに利用される。
左:書棚の間の先にテラスがある。右:サインのデザイン。
左:五線譜をイメージ。右:林をイメージ。
 日影他の規制の関係で施設がセットバックしているが、それをうまく使って木密地域にない広場(ポケットパーク)をつくり出している。それぞれ名前を付けて馴染みやすいように考えられている。各広場は避難時の溜まり場所も兼ねている。
栗田 幸一(くりた・こういち)
1949年 東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在、代表取締役/東京都建築士事務所協会理事、台東支部