台東区災害ネットワーク専門職会議の活動
杉本 由美子(東京都建築士事務所協会台東支部、株式会社杉本由美子建築設計事務所)
「台東区災害ネットワーク専門職会議」定例会議。(撮影:桝本 行男)
 平成28年7月15日、「台東区災害ネットワーク専門職会議」定例会議が、「台東区民会館」8階第5会議室で行われました。
「士業」のネットワーク
 「台東区災害ネットワーク専門職会議」は、専門職である各士業がネットワークを形成し、専門知識を結集して震災問題に取り組むことを目的とする台東区に活動拠点を有する専門職の組織です。平成24(2012)年に、台東区と「災害時における特別法律相談に関する協定」を締結しました。協定締結後は、専門職共同相談会「下町よろず相談会」を開催し、今では、台東区をはじめ、社会福祉法人台東区社会福祉協議会、東京商工会議所台東支部、株式会社日本政策金融公庫上野支店と、多くの皆様の後援を受けています。
 現在、在籍している士業は、弁護士、司法書士、行政書士、社労士、建築士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、中小企業診断士の9士業で、今後、宅地建物取引士が参加する予定です。
 今回の定例会議には、内野大三郎中野区議会議員と、沼田勇仁墨田区議会議員が視察のために出席されました。中野区、墨田区でも、「災害時は複数の専門分野にまたがる問題が多々あり、チームの知識を結集することで、問題解決の大きな力になる」と考え、同様の組織づくりを進めているということです。
 私も、各所で相談員となり、先日の熊本地震の時も、熊本で弁護士の方と一緒に相談業務を行いましたが、業種ごとの専門知識を持った相談は、問題解決の大きな力になると感じています。今後、このような輪が、他の地域にも広がっていくことが必要だと思います。
下町よろず相談会
 今回の会議では、まず最初に、6月2日に台東区役所ロビーで開催された「第8回下町よろず相談会」の報告がありました。多くの相談案件に異種専門家が同席するかたちで、各専門家からの目線でアドバイスが提供され、相談者から好評を得ました。多種多様な悩みを持つ相談者にとって、複数の専門家によるそれぞれの目線からのアドバイスは心強かったのではないかと思います。
 平成24(2012)年から、年に2回のペースで開催してきた相談会の相談者数、相談件数は以下のようになります。
 第1回 35人/37件、第2回 29人/30件、第3回 45人/47件、第4回 25人/36件、第5回 47人/55件、第6回 47人/64件、第7回 45人/48件、第8回 64人/52件。
 認知度も広がってきたおかげで、少しずつ相談件数は上がっています。相談会のお知らせは、区報以外に、区内の各町会掲示板に貼っていただいています。認知経路でも、町会掲示板を見てという方が増え、各町会の町会長さんの御協力に感謝しています。
平常時からの連携体制を
 今回の定例会議では、まちづくり支援機構前事務局長の中野明安弁護士により、「東日本大地震から5年〜弁護士の目から見た具体的総括〜」の講演がありました。「被災者が有する悩みや相談事というものは多種多様であり、問題解決には、各種専門家職能団体が密接な連携を取る必要がある。しかも、そのような連携体制は災害が発生してからでなく、平常時から整備しておくべきである」という言葉に、深く感銘を受けました。
 次回は10月9日、「台東区生涯学習センター」1階アトリウムで、「第9回下町よろず相談会」を開催する予定です。
杉本 由美子(すぎもと・ゆみこ)
建築家、株式会社杉本由美子建築設計事務所代表取締役、東京都建築士事務所協会台東支部
1966年 千葉県生まれ/ 東京理科大学大学院卒業、設計事務所勤務を経て2000年独立、現在に至る