設計業務委託の契約締結方式の変更について
加藤 峯男(東京三会建築会議委員)
 平成28(2016)年6月28日、本会会議室で行われた東京三会建築会議に、東京都財務局経理部契約担当者に特別にご列席いただき、東京都が現在行っている「設計業務における品質の確保・向上にむけて」の取り組みと、その取り組みの一環として行う、7月1日以降に東京都財務局が契約手続きを開始する設計業務委託案件の契約方式の変更についてご説明いただきました。その内容は下記の通りです。
1. 建築設計・設備設計の内訳書の提出について(試行)
(平成28年3月31日 財務局)
 平成26年に改正された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律127号:以降「入札契約適正化法」という)により、平成27(2015)年4月1日以降、公共工事の入札に参加する建設業者は、入札金額の内訳書の提出が義務付けられました。
 東京都財務局契約第一課が発注する設計業務についても、適正金額での契約締結とそれによる品質の確保を図るため、本年1月から、土木設計について事業者から積算内訳書の提出を受け、確認することとしています。また、建築設計及び設備設計についても4月からそれを試行し、見積の提出の際に、東京都電子調達システムの添付機能を利用して積算内訳書(平成21年国土交通省第15号に準拠したもの)を提出するよう求めています。内訳書が提出されなかった場合は採用者としないこととしています。
 この契約手続きの変更は、「入札契約適正化法」の改正に基づき行うものですが、これまでの都の工事系委託については、調査基準価格や最低制限価格を設けていないため、プロポーザル方式や総合評価方式を除く価格競争による案件では低価格による応札が見られ、委託した案件の品質確保が危ぶまれることも考えられ、今回の試行は、これを防止する目的で行うものです。
 また、この内訳書の提出を通じて事業者の担い手の確保・育成につながる適正な価格での応札を促すとともに、将来的な最低基準価格や調査基準価格の設定に向けた検討の材料としていくことを目的としています。
2. 企画提案方式の活用ガイドライン
(平成28年4月13日 財務局)
 企画提案は、発注者である都が、契約により事業効果を最大限発揮させるため、基本の仕様書に基づき、あらかじめ契約目途となる額を示した上で、民間事業者から契約履行の具体的手段などの提案を募り、都にとって最良の提案を選定することで仕様書を完成させ、契約するものです。そのため、地方自治法上は、その性質が競争入札に適しないものとされ、随意契約として契約するものです。
 この方式で、東京都においては、これまで主にPR事業、イベント、DVD等のメディア作成、海外展開に係る案件、就業支援・創業支援、施策の方向性を提示する業務や、施策の具体策や仕組みづくりまでの提案を求める業務等について、民間事業者に広く提案を募ってきました。
 今後は、設計業務においても品質の確保・向上を図る観点から、施設整備の基本や行政運営の指針となる「基本計画」、「マスタープラン」などについても企画提案の活用を図っていくことを考えています。
3. 平成29・30年度物品買入れ等競争入札参加資格申請の見直し
(平成28年5月31日 財務局)
 入札参加資格の登録時からの企画提案方式の活用による品質確保と政策目的支援を図るため、本年10月より受付を予定している平成29・30年度の物品買入れ等の競争参加資格申請より下記の見直しをします。
 ① 政策貢献項目(障害者雇用加点)の創設
 ②「企画立案支援」の新設
 ③ 営業種目・取扱品目の全般的見直し
 これまで「設計」として取り扱ってきた基本計画・マスタープランの策定等の業務については、「設計」の営業種目で競争参加資格登録をしていれば入札参加が可能でした。しかし、こういった業務については、上記で述べたように競争入札になじまず「設計」と異なる性格をもっていることから、今回見直しで新設する「企画立案支援」の営業種目に組み込むことになりました。そういった業務の受託を希望する建築士事務所は、「設計」とは別に「企画立案支援」に登録することを忘れずに行ってください。
4. 設計業務委託の契約締結方式の変更について
(平成28年6月28日 財務局)
 東京都が発注する設計業務委託(建築設計、土木設計及び設備設計の委託契約)の契約締結方式について、下記のとおり取り扱うこととしました。
 ① 変更内容
 設計業務委託の契約締結方式を、随意契約から一般競争入札および指名競争入札へ変更する。
 ② 対象案件
 本取り扱いは、業種が、11建築設計、12土木設計及び13設備設計のすべての案件を対象とする。
 ただし、東京都設計業務委託契約に係るプロポーザル方式を適用する案件を除く。
 ③ 実施時期
 平成28年7月1日以降に公表される案件に対して実施する。
5.設計業務における品質の確保・向上にむけて
下の模式図が、上記の1〜4の説明の要旨を分かりやすくまとめているものです。
6.おわりに
この記事は、東京都財務局の説明の要旨を、配布資料と説明会で聞いたことをもとにまとめたものです。更なる詳細については、「コア東京Web」に配布資料の全データを載せましたのでご覧になってください。
■東京都財務局からの配布資料一覧
① 建築設計・設備設計の内訳書の提出について(試行)
 (平成28年3月31日 財務局)
 〈別紙〉建築設計・建築設備設計に係る積算内訳書の用語の定義
 ② 企画提案方式の活用ガイドライン(資料2)
 (平成28年4月13日 財務局)
 ③ 平成29・30年度物品買入れ等競争入札参加資格申請の見直し
 (平成28年5月31日 財務局)
 ④ 設計業務委託の契約締結方式の変更について
 (平成28年6月28日 財務局)
 ⑤ 設計業務における品質の確保・向上にむけて
 (平成28年6月28日 財務局)
① 建築設計・設備設計の内訳書の提出について(試行)
 (平成28年3月31日 財務局)
 〈別紙〉建築設計・建築設備設計に係る積算内訳書の用語の定義
② 企画提案方式の活用ガイドライン(資料2)
 (平成28年4月13日 財務局)
③ 平成29・30年度物品買入れ等競争入札参加資格申請の見直し
 (平成28年5月31日 財務局)
④ 設計業務委託の契約締結方式の変更について
 (平成28年6月28日 財務局)
加藤 峯男(かとう・みねお)
東京三会建築会議委員、東京都建築士事務所協会理事、株式会社エンドウ・アソシエイツ代表取締役
 1946年 愛知県豊田市生まれ/ 1969年 名古屋大学工学部建築学科卒業、同年圓堂建築設計事務所入所/1991年 同所パートナーに就任/2002年 株式会社エンドウ・アソシエイツ取締役に就任/2003年 株式会社エンドウ・アソシエイツ代表取締役に就任/2011年 一般社団法人東京都建築士事務所協会理事に就任
記事カテゴリー:建築法規 / 行政
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