VOICE
 
中田 千恵子(一級建築士事務所ハウジング工房、東京都建築士事務所協会編集専門委員)
このところ、昔の話題が多くなってきたのは歳のせいでしょうか? その中で、拾ったいい話をひとつ。
2歳のおてんば娘に辟易している長女と話していた時のことです。「実は私も子供時代は相当なやんちゃだったわよ」から始まった話です。
彼女が小学校低学年のころですから約30年前になります。私の仕事の影響かどうか定かではありませんが、子分のようにしていた近所の1歳下の子と秘密基地の設計図をつくったそうです。ここまでは、よく聞くことですが、ふたりで、その設計図らしきものを近くの材木屋さんへ持って行って、材料確保のため社長に雑材があったら欲しいと談判に及びました。
「どこにつくるの?」、「秘密基地だからナイショ」、「その設計図、見せてごらん」というやりとりがあり、見せたところ、「ここはこうしたらどうだい。ここを支えておかないとすぐ壊れるよ」。
なんと、相談に乗ってくれたそうです。計画変更を余儀なくされた彼女たちは、それから3、4回、打ち合わせに通ったとか。結果的には建設場所(?)が見つからず、断念したようですが、仕事の手を休めてまで相手をしてくれたそうで、気持ちの大きな人がいたことに驚きました。たぶん、秘密基地よりは、大人と対等に話せることが魅力だったのかもしれませんが、子供心にいい思い出を残してくれた社長さんに感謝します。
この材木屋さんは、今、ありません。土地が3つに分割されておしゃれな3階建ての戸建て住宅が並んでいます。時代の流れを感じますが、世の中、まだまだ捨てもんじゃありません。
中田 千恵子(なかた・ちえこ)
一級建築士事務所ハウジング工房代表、東京都建築士事務所協会北部支部支部長、編集専門委員
1953年東京生まれ/インテリア設計事務所スペース201、日研学院講師を経て現在、一級建築士事務所ハウジング工房代表/東京都建築士事務所協会編集専門委員
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