
槍ヶ岳頂上から見下ろした槍ヶ岳山荘。

岳沢小屋。

北岳山荘の屋根越しに富士山を望む。

穂高岳山荘。
(撮影:筆者)
(撮影:筆者)
★
暑い日が続いていた7月の終わりの週末、都会の喧噪から離れてリフレッシュするために山へ向かいました。上高地から入山し山小屋に泊まる1泊2日の行程です。高度を上げるにつれて涼しい風がそよぎ、山小屋に着く頃には真夏の暑さをすっかり忘れていました。本格的に登山を始めたのは最近ですが、長野県出身の私にとって山は幼少期から身近な存在でした。学校行事での登山の経験はありますが、大人になり故郷から望める槍ヶ岳の頂からの景色を「人生で一度は見たい」と思ったことが、山へ通う大きなきっかけでした。
山の魅力は登頂の達成感や雄大な景色だけではありません。個性的で温かい山小屋での滞在や、同じ山を目指す仲間との交流も楽しみの一つです。
★
そして仕事柄、どうしても自然と山小屋の「建物そのもの」へ興味が向いてしまいます。奥深い立地の山小屋は木造が多いものの、近年はヘリコプターによる資材運搬によって鉄骨造の建物も存在します。都市インフラがない過酷な環境下、電気は自家発電機、水は雨水や湧水を遠くから引水して確保している実情を知ると、その維持の苦労が窺えます。日本で2番目に高い北岳の「北岳山荘」に宿泊した際、その厳しい環境下で水洗トイレが備わっていることに驚きました。1977年に建てられたこの鉄骨造の山小屋は、建築家の黒川紀章氏が手掛けたものだと知り、さらに感銘を受けました。★
山小屋に泊まるたび、「この立地で建築や増改築を行う際、どのような行政手続きが必要なのだろうか」と疑問が湧き調べてみました。山小屋は国立・国定公園内に位置し、都市計画区域外に立地していることが多いです。そのため、建築基準法の集団規定は適用外になることがほとんどです。一方で、自然環境保護や景観保護のため厳しい審査があり、自然公園法に基づく許可申請や届出が必要になります。また、宿泊営業のための旅館業法の手続き、浄化槽設置届や消防関連の届出など、多岐にわたる複雑なハードルをクリアする必要があります。★
厳しい自然環境と厳格な法令上の制約を乗り越えて建つ山小屋。そんな背景に思いを馳せながら眺めてみると、雄大な自然の中にぽつんとたたずむ赤い屋根の山小屋が、より一層味わい深く感じられました。

小山 充男(こやま・みつお)
東京都建築士事務所協会北部支部、建築工房 上二 一級建築士事務所
1967年長野県松本市生まれ/武蔵野美術大学建築学科卒業
1967年長野県松本市生まれ/武蔵野美術大学建築学科卒業















