社労士豆知識 第80回
ストレスチェック、義務化へ──50人未満の会社が今知っておくべきこと
和久 明(わく社会保険労務士事務所)

 精神障害による休業や退職、労災認定が増加し続ける中、2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、労働者数50人未満の事業場もストレスチェックの実施が義務となることが決まりました。再来年2028年4月1日から運用が始まります。
 2026年現在は努力義務ですが、東京労働局の調査では、2025年にストレスチェックを実施した50人未満の事業場の割合は50.3%と、過半数がすでに対応している状況です。現在未対応の場合は、早めに準備に着手したいところです。

そもそもストレスチェック制度とは
 ストレスチェックとは、労働者がストレスに関する質問票(選択式)に答えることで、自分自身では気づきにくいストレス状態を把握するための検査です。目的は精神疾患の発見ではなく、メンタルヘルス不調の未然防止です。対象となるのは、一般定期健康診断の対象者と同じ社員で、パート社員も外国籍社員も同様に対象となります。事業者はこのチェックを年1回実施し、①労働者のストレスへの気付きとセルフケアを促す、②高ストレスの労働者には医師の面接指導の機会を提供する、③検査結果の集団分析で職場のストレス要因を把握し職場環境の改善につなげる、という3つを一体的に進める仕組みです。③については努力義務とされていますが、10人を下回る事業場は、個人が特定される恐れがあることから、集団分析は原則実施してはいけないこととなっているため、注意が必要です。
 勘違いされやすいのは、個人の検査結果を事業者が確認するわけではないこと。プライバシーが重視されており、事業者が本人の同意なく個人の検査結果を知ることはありません。
小規模事業場こそ取り組むべき理由
 義務化は確かに面倒で、マイナスのイメージがありますが、実は小さな会社こそ取り組むべき理由があります。メンタルヘルス不調になると、休職期間は平均約3か月、復職後に再発する割合も約半数に上ります。少人数で業務を回している会社では、ひとりが長期離脱するダメージは非常に大きく、経営上のリスクに直結します。逆に、ストレスチェック制度を通じてメンタルヘルス対策に取り組むことで、生産性の向上や人材の確保・定着、企業イメージの向上といったメリットが期待できます。厚生労働省の調査でもストレスチェックを受けた労働者の約7割が「自分のストレスが分かり有効だった」と回答しています。ストレスチェックで現状を可視化することで、早期対策が可能になるわけです。
実施のポイント:外部委託で負担を最小化
 ストレスチェックは自社で行うことも可能ですが、50人未満の事業場ではプライバシーの保護の観点もあり、外部機関への委託が推奨されています。費用はかかりますが、委託すれば、調査票の配布・回収・結果通知・データ保管まで外部で完結します。自社で必要な対応は主に以下の3点となります。①実務担当者(衛生推進者等)を1名指名、②外部委託先と契約、③簡単な社内ルール(実施方針・情報管理の取り決め等)を作成して従業員に周知。もし定期健康診断を委託している健診機関があれば、ストレスチェックをセットで提供している機関も多いため、相談しやすく、委託のハードルが下げられます。
高ストレス者への面接指導は地産保を活用
 高ストレスとされた労働者が申し出た場合、事業者には医師の面接指導を実施する義務があります。費用が心配な場合は、全国約350カ所にある「地域産業保健センター(地産保)」を活用しましょう。50人未満の事業場は医師による面接指導を無料で受けることができます。
まとめ
 厚生労働省からは50人未満の事業場向けのリーフレットやモデル規程、委託先を確認するためのチェックリストが提供されています。まずはそれらに目を通し、自社で実施するのか委託するのかを決め、委託する場合は、委託先への問い合わせから始めましょう。
厚生労働省ホームページ:
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html
和久 明(わく・めい)
社会保険労務士、両立支援コーディネーター、AFP、わく社会保険労務士事務所代表
台東区の生まれ育ち。18年間、社員15万人以上の企業の人事業務を担当。制度を知らず利用できない人をなくしたいと2024年9月に社労士として開業。給与計算、手続き、介護事業の処遇改善加算が主な業務。趣味は読書、文章を書くこと、サウナ
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士