
秋野不矩美術館。

資生堂アートハウス。

掛川市役所。
(撮影:藤本 祥)
(撮影:藤本 祥)
前回同様、東京駅に集合して新幹線で目的地に向かう。
地下鉄の遅延で新幹線の出発時刻ギリギリに乗り込むこととなったものの、予定通り1時間半ほどで無事に掛川に到着することができた。
東海道新幹線の掛川駅より程なく歩いたところに天竜浜名湖鉄道の掛川駅があり、ローカル線で最初の目的地の「秋野不矩美術館」の最寄駅である天竜二俣駅へ向かう。都会では見ることのできない趣のある1両列車で、山あいののどかな風景を眺めながら列車に揺られて30分、天竜二俣駅に到着する。天竜二俣駅は1935年に開業した木造駅舎となっており、昭和の面影が残る温かみのある佇まいが魅力的であった。
春先の温かい気候の中、徒歩で15分ほど移動し、建築家・藤森照信氏設計の「秋野不矩美術館」に到着した。土や杉板張りの壁、天然スレートの屋根で構成されており、自然素材を生かした独特な外観を持つ。1階の展示室は靴を脱いで入るスタイルとなっていて、籐のゴザや大理石の床の素材感を感じながら鑑賞できるようになっていた。内外装とも素材感を生かした、藤森氏らしさが全面に出た建築となっていた。
一通り鑑賞したあとは再び天竜二俣駅に戻り、列車に乗って次の目的地である「掛川市役所」へ向かう。駅で名物の「鰻どんこ弁当」を買い、車内でいただいた。列車の中で頂く駅弁は、雰囲気も相まってより一層おいしく感じられた。
日建設計の林昌二氏が設計した「掛川市役所」は、先ほどの美術館とは対照的にガラスとコンクリートを組み合わせた現代的な外観を持つ建築となっていた。エントランスを入ると、庁舎の最上階まで吹き抜けた空間が広がる。すべての階がひな壇状になっており、それぞれの階を幅広の階段で一直線につなぐ明快な空間構成となっている。最上階の円形平面の議会議事堂は壁や天井の木製ルーバーによって遮音性の高い空間となっており、議事堂として静粛で厳かな雰囲気のあるものとなっていた。1996年竣工とは思えないほどきれいに使われており、市役所としては大変贅沢な建築だと思うが、個人的にはとても感銘を受けた建築であった。
その後、徒歩で15分ほど移動し、最後の目的地である建築家・谷口吉生氏設計の「資生堂アートハウス」に向かう。外観は反射性のあるタイルと、外側がミラーになっている曲面のガラスによって風景が映り込み、周囲の環境に溶け込んでいた。内部の動線はスロープや階段で高低差を生み出しつつ、一筆描きで順路を巡る構成となっていて、水平に続く窓から周囲の景色を取り込むことで、展示空間として変化に富んだものとなっていた。
その後、タクシーで掛川駅に戻り、駅の飲み屋で本日の振り返りと歓談を楽しんだのち、東京へと向かった。今回は徒歩での移動もあり疲労感も多少残ったが、とても有意義な時間となったと思う。
ご参加された皆様、大変お疲れさまでした。

井口 直紀(いぐち・なおき)
東京都建築士事務所協会文京支部、アルテ建築計画
1984年 東京都生まれ/2010年 武蔵野美術大学建築学科卒業後、2012年アルテ建築計画入社、現在に至る
1984年 東京都生まれ/2010年 武蔵野美術大学建築学科卒業後、2012年アルテ建築計画入社、現在に至る
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