小田原・静岡研修旅行
台東支部|令和8年7月3〜4日@小田原、静岡
小出 啓太(台東支部、アーキテクチャー・ラボ)

 7月初旬の2日間、小田原、静岡を巡る台東支部研修旅行を行った。会員のご家族や台東法曹会の弁護士さんも一緒に、参加者16名で1泊2日、7カ所の史跡や建築名所を巡った。

江の浦測候所。南側アプローチ。右の門は根津美術館から移築された室町時代のもの。
江の浦測候所。春日杉という御神木。
江の浦測候所。ギャラリー棟。夏至の日の出の方向(東北東)に延びる。
江の浦測候所。ギャラリー棟内部。
江の浦測候所。冬至の日の出の方向(東南東)に飛び出す隧道。ギャリー棟の下部にクロスして延びる。
江の浦測候所。隧道の途中にある光井戸。
江の浦測候所
 最初に訪れた小田原の「江の浦測候所」(設計:杉本博司/新素材研究所)は、海を見渡せる丘の上から地形に沿って散策するランドスケープとなっている。
 展望台に始まる小道の道中には、説明がなければ気付かないほどに作品やお稲荷様、名石や御神木が周囲の風景に溶け込んでいる。小道の先には、進入禁止を示す直径15cmほどの留め石が転がっている。気づけば、鑑賞者のわれわれが見つめ返されているような錯覚さえ覚える。
 限られた見学時間では足りないと思うほど、後ろ髪を引かれる場所だった。
富士ハーネス。エントランス広場。
富士ハーネス。プロムナードと回廊。
富士ハーネス(日本盲導犬総合センター)
 「鈴廣かまぼこの里」で昼食をいただき、静岡へ。「富士ハーネス(日本盲導犬総合センター)」(設計:千葉学建築計画事務所)を見学させていただいた。それぞれの機能を果たす部屋とそれらを繋ぐガラス張りの廊下を歩いていると、自分が建物のどこにいるのか自然と分かる。盲導犬の育成から引退犬のケアまで、その一生に付き添う活動をフォローするように、犬も人も安心して過ごせるようなスケールで建物や中庭が計画されていた。
静岡県富士山世界遺産センター。
静岡県富士山世界遺産センター。富士山を望む(はずの)5階展望スペース。
静岡県富士山世界遺産センター
 「静岡県富士山世界遺産センター」(設計:坂茂建築設計)では、県産ヒノキ材でできた木格子の逆さ富士が強烈なインパクトで出迎える。この逆さ富士は、内部で螺旋状のスロープと展示空間として機能している。スロープの終着点の展望スペースから富士山を望めるようになっているが、残念ながらこの日は雲がかかって拝むことはできなかった。富士山の信仰や地学、文化など、多面的な存在として捉えた展示と、ミュージアムショップに並ぶ可愛いキャラクターに変身した富士山のギャップが妙に面白い。
日本基督教団駿府教会。外観。
日本基督教団駿府教会。内部。
日本基督教団駿府教会での集合写真。
日本基督教団駿府教会
 2日目は、まず「日本基督教団駿府教会」(設計:西沢大良建築設計事務所)を訪問した。中村恵太牧師にはさまざまな質問に答えていただいただけでなく、礼拝堂のほかに集会の場や住居についても丁寧にご案内いただいた。空に向けて溶けていくように間隔が調整されたルーバーやトップライトからの柔らかな日光が、シンプルな空間に刻々と変化する表情を与えている。少しだけパイプオルガンを弾いていただくと、この高い天井が心地よい音の響きと説教を支えているように感じられた。また、この礼拝堂はイベントや人数に合わせてレイアウトを変えて使用している。長椅子ではなく、1人掛けの椅子を会衆席に採用したことがそれを可能にしており、礼拝の際の向きを90度変更したこともあった。建築の工夫が環境や使い方と絡み合うようになっていることは、教会の理念や生活、運営としてのお話を伺うことでより一層理解を深めることができた。
静岡市歴史博物館。3階部分に駿府城跡を望む展望ラウンジ。
静岡市歴史博物館。発掘された戦国時代末期の遺構。
静岡市歴史博物館
 その後、駿府城跡と「静岡市歴史博物館」(設計:SANAA)を訪れた。徳川家康が大御所となってこの駿府を本拠としたその歴史を詳しく知ることができた。現在では、お堀の内側は公園や公共施設として活用されている。
静岡市立芹沢銈介美術館。前庭。
静岡市立芹沢銈介美術館
 昼食をすませ、登呂遺跡、「静岡市立芹沢銈介美術館」に向かう。白井晟一が晩年に設計したこの美術館は、民藝運動に積極的に参加した芹沢銈介の作品が展示されている。絞られた開口部、高低のある天井と少しのレベル差のある床、石の仕上げの空間は、まるで洞窟内を探検しているような体験で、グッズを買い込んで外に出る瞬間は、洞窟探検を終えたような気持ちになった。
日本平夢テラス。八角形平面の内部。
日本平夢テラス
 徳川家康の遺命により、遺骸が最初に埋葬された最初の東照宮である「久能山東照宮」を見学したのち、最後に訪れた「日本平夢テラス」(設計:隈研吾建築都市設計事務所)で、今回の旅行で初めて富士山を拝むことができた。自然と皆がカメラを向けていた。空中に浮かぶ八角形の回廊を歩きながら眺める景色は、立ち止まって見る展望とはまた違った楽しさがある。
久能山東照宮での集合写真。
(撮影:大平 孝至)
日本平夢テラス
 帰路、車窓から海上に停泊する地球深部探査船「ちきゅう」を目にした。夕暮れの中、地上3,776mの富士山と、海中7,000mまで探査する船の間を縫うようにバスは東京へ向かっていた。
 今回の研修旅行では、多くの施設の皆様に温かく迎えていただき、貴重なお話を伺うことができた。
 企画・運営してくださった皆様をはじめ、ご案内いただいた皆様、ご一緒した参加者の皆様に心より感謝申し上げたい。
小出 啓太(こいで・けいた)
東京都建築士事務所協会台東支部、アーキテクチャー・ラボ
1984年 愛知県名古屋市生まれ/2006年 東京理科大学卒業/2008年 同大学院修了/2020年 アーキテクチャー・ラボ代表取締役
カテゴリー:支部 / ブロック情報
タグ:研修旅行