茅ヶ崎の歴史と文化を巡る
中央支部|令和8(2026)3月28日(土)@神奈川県茅ケ崎市香川
文・写真:寺澤 久美(東京都建築士事務所協会中央支部、坪井工業(株)一級建築士事務所)
熊澤酒造。敷地中央のベンチスペース。背後は土蔵を改装したベーカリー。
熊澤酒造。移築した古民家のレストラン。
熊澤酒造。テラス席にて。
茅ヶ崎市博物館。景観に配慮した外観。
茅ヶ崎市博物館。自然素材を多く取り入れた内部空間。
茅ヶ崎市博物館。外周のテラス。
旧和田家住宅。サクラと茅葺き屋根。
旧三橋家住宅。
自然環境を活かした伝統的な伽藍配置の浄見寺。

 中央支部、清水建設(株)田村隆氏の企画による中央支部主催の歴史と文化を巡る見学会。茅ケ崎市香川のまちなみを形成する建築5カ所を巡った。

熊澤酒造

 はじめに湘南に残された唯一の酒造である「熊澤酒造」へ。明治5(1872)年の創業で、米農家であったことから日本酒づくりを始め、世相の移り変わりにより多角的なアプローチを行い、企業の「再生」を遂げた。
 敷地内にはいくつもの建物が中庭を囲むように配置され、酒造りの建屋はもちろん、食事処やカフェ、ベーカリーも立ち並び、地元の作家や農家が販売できるマーケットエリアも併設している。一般の人が訪れやすい仕掛け、地域の人が参入しやすい環境を提供し、自然と人の賑わいが生まれる。
 敷地中央のシンボルツリーの周りには自由に使えるベンチスペースがあり、公園のような開かれた空間だ。築100年の土蔵を改装したベーカリーと、築200年の古民家を改装したカフェは内部でつながる。鎌倉にあった築450年の古民家を移築したダイニングレストランは、伝統的な木組みの梁がかかった大空間がそのまま活かされ、吹き抜けから上部空間へつながり、開放感あふれるつくりとなっている。

茅ヶ崎市博物館

 2022年7月に開館した博物館で、設計は松田平田設計。敷地周辺には歴史的建造物の古民家や寺院があり、建物高さを抑え、周りとの景観の連続性に配慮されている。(2023年神奈川建築コンクールにて「アピール賞(景観)」を受賞)里山との調和を図るため、落ち着いた色調、素材感で構成されている。
 景観に配慮された外観デザインと、自然素材を多く取り入れた温かみのある明るい内装が印象的。

旧和田家住宅

 博物館から川を挟んですぐのところ。
 安政2(1855)年に萩園村(現茅ヶ崎市西部)の村役人を務めていた第11代和田清右衛門により建てられた、江戸時代末期の大型民家の特徴を色濃く残した市の重要文化財。
 現在の場所へ移築復元をされ、昭和60(1985)年に開館した。四間取が通常のところ、六間取で構成され、村役人の格式の高さが伺える。

旧三橋家住宅

 旧和田家の隣にある浄見寺境内を通り抜け、旧三橋家へ。
 文政11(1828)年に香川村の名主を務めた三橋家によって建てられた、江戸時代末期の大型農家の建築様式を伝える、こちらも市の重要文化財。
 当時の標準的な四間取の造りで、より素朴なままの暮らしぶりが見てとれる。
 現在の場所へ移築復元をされ、昭和48(1973)年に開館した。

浄見寺

 旧和田家と旧三橋家のふたつの古民家の間に鎮座する。
 慶⾧16(1611)年、大岡家二代当主・忠政が父忠勝の追善供養のために建設し、その後13代までの墓碑58基が整然と並ぶ、大岡家の菩提寺。市指定史跡となっている。周囲の自然環境を活かした伝統的な伽藍配置。

 見学後は、「熊澤酒造」に戻り、懇親会を開催した。その日に見た建築を想い返したり、それぞれの仕事や日常について会話しながら、同じ分野に携わる人だからこその一体感でとても楽しい時間となった。
 建築はその時代の歴史と文化を後世に伝える役割を持ち、その場所の地域の特性を引き継いで次の建築物を形成していくことが、調和のとれた景観を維持することにつながるのだなと改めて感じた。また、保存していくべき建物を改築、再利用して、現代の人が利用しやすい形態へ変化させていくということも、その存在を残す中で合わせて必要なことと思った。
 1日のうちで多数の建築に触れる貴重な時間を過ごさせていただきました。中央支部⾧ならびに、企画・当日進行をいただきました皆様、深く御礼を申し上げます。

寺澤 久美(てらさわ・くみ)
東京都建築士事務所協会中央支部、坪井工業(株)一級建築士事務所
1986年 神奈川県生まれ/2009年 工学院大学卒業/2009年~ 坪井工業(株)一級建築士事務所勤務、現在に至る
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