昨年に引き続き審査委員長をお引き受けして、審査を無事に終えることができました。今年も戸建て、共同が統合された住宅部門と、一般の2部門と合わせて計3部門で審査しました。リノベーション賞は3部門の賞とも重賞可能としています。3部門に総数82点の応募があり、うち24作品について現地審査を行い、最終審査会において東京都建築士事務所協会会長賞1点、東京都知事賞1点、各部門の最優秀賞、優勝賞、奨励賞のほか、リノベーション賞4点、新人賞1点を選定しました。応募してくださったすべての設計者やクライアントの方々、また審査の準備等に尽力していただいた協会の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げます。
東京建築賞は、関東甲信越一円の作品を対象としますが、今年は比較的遠隔地の作品が少なかったですが、いずれも多くのエネルギーをかけ熱心に審査に当たられた審査員の皆さま方にも、心から感謝申し上げます。
最終審査会においては、現地に赴いた選考員ひとりひとりからすべての作品についての講評を聞き、A+からB-までの6段階の評価を得て、その結果に基づいて総合的に評価の高かった作品から、全員で議論の上、各賞の選出を行いました。
その結果、全部門を通して最優秀作品であるとの評価を得た「川崎朝鮮初等学校」が、東京都建築士事務所協会会長賞となりました。一般の学校と異なり、十分な公的補助金が得られない中で、校地の一部を宅地として売却して、その資金で新校舎を建設し、減じた屋外空間を、階段上の校舎断面を用いて、各階屋上を屋外テラスとしてグラウンドに有機的に繋げたスキームは卓抜した発想であり、そのアイディアに敬服しました。さらに徹底的なコスト縮減が図られて、建設費の高騰する今日にあって驚異的なローコストを実現している点も、大いに驚かされました。児童や保護者はもとより、近隣の在日朝鮮人コミュニティの開かれた広場となる建築として高く評価されました。
都内に立地するものの中から、これに次ぐものとして評価されたのが、「ヤマト本社ビルA棟・B棟」で、道路を挟んでふたつの区画を合わせた土地の大きな間口を活かして、ファサード全体に各階の断面構成を表出した外観が、ひときわ目を惹くものとなっています。執務スペースに高低差を導入して、ワークプレイスの多様性をもたらし、そのペリメータ・ゾーンを中心に内外ともに徹底的に木質化した点も好印象でした。
住宅部門の最優秀賞は「自由な家」が選ばれました。都市の狭隘な立地環境にあって、三叉路によるわずかな視界の見通しや、隣家との関係を緻密に検討した上で、小さいながら周辺を含む豊かな環境を享受できる住まいとなっています。各階に配された半屋外空間が、大きな割合を占めており、開放感のある空間性に大いに寄与しています。
一般部門一類の最優秀賞とリノベーション賞に輝いたのが「深川えんみち」で、元々は保育園であり、その後葬祭場となった建物が、再び複合福祉施設として蘇っており、長く近所に暮らす人びとにとって老若男女の交流の拠点となっている点が素晴らしかったです。放課後の子どもたちが元気よく「ただいま」と言って帰って来るのを、高齢者が「おかえり」と笑顔で迎える光景が、本当に微笑ましく、また羨ましくも感じられました。
一般部門二類で最優秀となったのが「ニコン 本社/イノベーションセンター」で、周辺の日照や風環境に配慮し、帯状の平面をずらしながら積層させて、豊かな外部空間を生み出しています。庇内ダクトやライトシェルフにより、室内への直達日射を制御し、PC床版を活用したダクトレス空調も併せて快適な執務空間を実現しており、機能とデザインが見事に融合しています。
その他の優秀賞作品、奨励賞作品もレベルが高く、東京建築賞の目指す作品性と公共性を併せ持つ優れた建築を大いに示唆するものでした。今後さらに素晴らしい建築が生まれることを祈念します。

1955年 東京都生まれ/1978年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1980年 早稲田大学大学院博士前期課程修了/1990年 近畿大学工学部助教授/1994年 早稲田大学理工学部助教授/1994年 NASCA設立/1997年 早稲田大学理工学部(現・創造理工学部)教授/2017年 日本建築学会会長/2021年 東京建築士会会長/2024年 日本建築士会連合会会長/2025年 早稲田大学栄誉フェロー
















































